切断指(肢)

解説

指が切断された場合、切断された指(肢)の血行を再開させる再接着手術を早急に行わないと、壊死してしまいます。切断指は、まず湿ったガーゼで包んでからビニール袋に入れます。さらに、ビニール袋を外側から氷水で冷やした状態で保存することが重要です。適切な処置を行った後、できるだけ早急に病院に連絡をしてください。また皮膚などでつながっているものの、血行が途絶えている場合を不全切断といい、この場合も血行を再開させる再接着手術を行わないと壊死してしまいます。

治療方法

切断部の損傷の強い部分を切除し、骨の固定および腱(指を動かすすじ)の縫合を行い指の全体的な形態を治します。次に、血管(動脈と静脈)と神経を縫合しますが、直径0.5mmから1mmと極めて細いため、手術用顕微鏡を使い、特殊なピンセットと糸を用いて縫合します。最後に皮膚を縫合します。切断指の状態が悪く(例えば、損傷の程度が強い場合や、切断された指が見つからない場合など)再接着ができない場合や再接着が不成功となった場合では、皮膚をずらしてきずを閉じたり、骨を短くしてきずを閉じる処置をします。このような場合、後日、足指を移植して、指を作ることも可能です。

欠損指の再建

解説

過去に外傷などで指を失った場合などでも、足指を移植して指を作ることが可能です。

治療方法

足の第1趾の一部を用いて指を作るWrap-around flap法では、必要な爪の幅や指の長さなどを細かく計測して移植することにより、非常に健側と近い形態を再現することが可能です。他に第2趾や第3趾をそのまま移植する方法もあります。また指の基部から欠損している場合、当院独自の方法としてWrap-around flap法に第2趾の関節を組み合わせて移植再建する方法を行っており、関節可動性のある健側と近い形態をもつ指を作ることができます。これらの手術では神経を縫合することにより、指の知覚も再建できます。いずれの場合も歩行等の足の機能的損失はほとんどありません。多くの場合は術後の手の専門的なリハビリテーションが必要で、必要があれば機能や形態の改善・修正のため追加手術を後日行います。

顔面骨骨折

解説

顔面骨とは顔面の骨格を形成する骨のことです。非常に複雑な形をしており「顔」の形態と機能に重要な役割を果たしています。顔面骨骨折が生じやすい部分として、前頭骨(額の骨)、眼窩(眼球を納めている箱型の骨)、鼻骨・篩骨(しこつ)(鼻とその奥にある骨)、頬骨(ほほ(頬)の骨)、頬骨弓部(頬骨から耳の前に続く部分の骨)、上顎骨(上の歯茎と鼻の付け根とその周囲の骨)、下顎骨(下の歯茎と下あごの骨)があります。

治療方法

治療は、骨折でずれた骨を元の位置に戻し固定するために手術が行われますが、部位によって方針が若干異なります。鼻骨のみの骨折の場合は、皮膚を切開しない手術で治療することが可能です。頬骨骨折などのそれ以外の骨折の治療には、手術に際し切開が必要となることが多くなります。切開は、創が目立たない部位に行います。よく用いられる切開部位としては、頭髪内頭部、下まぶたのまつ毛の下、口腔内、耳の前などで、骨折の部位によって切開をする部位が変わります。

また、骨の固定はチタンという金属でできた小さなネジとプレート(板)を用います。手術に適切な時期と手術の方法は、骨折の部位や骨折の状態によって異なります。

合指症

解説

隣り合った指の一部または全部が癒合(くっついている)指の形の異常です。皮膚と軟部組織だけが癒合している皮膚性合指と、骨まで癒合している骨性合指に分けられます。また、癒合の高さにより部分合指と完全合指に分けられます。発生頻度は多指症についで多く、手では第3-4指(中指―環指)間、足では第2-3趾間に多く発生します。

治療方法

一般的には生後1歳前後にくっついている指の分離手術を行います。軽度の症例では、周囲の皮膚を用いて分離を行います。しかし、多くの場合、皮膚が足りなくなりますので、足のくるぶし付近や足の付け根などから皮膚移植をします。

多指症

解説

正常より指数が多い状態をいいます。過剰指が完全な指の形をしているものから、小さなイボのようにわずかに突出しているものなど様々なタイプがあります。手足の生まれつきの異常のなかでもっとも頻度が多く、手では母指に多く、足では小指に多く見られます。

治療方法

一般的には1歳前後に手術が行われます。余剰指が指先から指の付け根のどの場所からわかれるかで手術方法は異なりますが、多指症の手術では、単に余剰指を切除すればよいのではなく、2本の指から動きも見た目も健常の指に近い1本の指を作ることが重要です。母指を外側に開く筋肉を付け替えたり、骨を切って角度の調整をすることがあります。足の場合では小指に多いこともあり、動きの機能を直すというよりも見た目の形態を整えることを目的として手術が行われます。

乳がん術後の乳房再建

解説

乳房再建とは、乳がんの治療によって失われた乳房の形態を手術によりできるだけ元の形に復元することを言います。乳房再建の希望がある、または考えてみたいと思われる患者さんは乳がん手術前に乳腺外科の担当医に相談されるのがよいでしょう。

また、乳がん手術が終わった後に、乳房再建の話を聞いてみたい場合にもぜひ相談してください。形成外科医に直接相談されても良いです。形成外科医から乳腺外科の先生に連絡をとることもできます。

治療方法

乳房再建の方法には大きく分けて、人工乳房による再建と自家組織による再建があり、どちらも当院で対応しております。当院独自の方法としては、腹直筋を犠牲にすることなく下腹部の皮膚と皮下脂肪を顕微鏡下に移植し乳房を再建する方法を従来より行っております。

下腿慢性骨髄炎

解説

骨の組織に、細菌などの微生物が感染して化膿した状態が慢性化したもので、難治性の疾患です。

骨の外傷(開放性骨折、複雑骨折、粉砕骨折、外科手術等)などによって、細菌が骨髄に入って増殖して炎症を起こす場合が多いです。

治療方法

ほとんどの場合、治療は抗生物質の長期投与と、外科的処置(感染部の異物や壊死した皮膚・腐骨組織を掻破、除去することで、デブリドマンといいます)が行われます。これらの結果骨欠損を生じる場合があります。骨欠損部が広範囲に渡るような場合には、肩甲骨や健側の下腿の腓骨を血管を付けた状態で採取し移植する、血管柄付き遊離骨移植を行ったり、変形や短縮が起こった場合にはイリザロフ創外固定術等により骨延長を行うことがあります。