乳腺外科の主な疾患と治療方法

乳がん

主な症状

乳房のしこり、乳頭からの分泌物(とくに血液)

解説

日本人女性が一番かかりやすい癌で16人にひとりが乳がんにかかるとされています。40歳後半から50歳前半の働き盛りの女性に患者が多いのが日本の特徴です。乳がん自体比較的おとなしい癌ですのできちんと治療すれば治る確率の高い癌と言えます。乳がん検診が広まるにつれ、早期に乳がんがみつかるようになり今後乳がんの死亡率が減少していくことが期待されます。

治療方法

乳がんの治療には、手術、化学療法、ホルモン療法、放射線療法の4本の柱があります

  • 手術:腫瘍の大きさがおおむね3cm以下あれば乳房温存手術(乳房を残す手術)が可能です。3cmより大きい場合は手術前に化学療法(抗がん剤)あるいはホルモン療法をおこなって腫瘍を小さくすることによって温存手術が可能になる場合があります。乳癌が広範囲に広がっている場合残念ながら乳房を残すことはできません。ご希望があれば乳房を新たに作る手術(乳房再建術)も可能ですのでご相談ください。手術まえに脇のリンパ節に転移があることが分かっている場合はリンパ節を切除します。そうでない場合は手術中にセンチネルリンパ節生検(注)をおこない、センチネルリンパ節に転移が無い場合は脇のリンパ節は切除しません。

    注:乳癌が最初に転移をおこすとされるリンパ節をセンチネルリンパ節と呼びます。センチネルリンパ節の転移の有無を調べるのがセンチネルリンパ節生検です。センチネルリンパ節に転移がなければ、脇の他のリンパ節には転移がないと考えられます。センチネルリンパ節に転移があれば原則として他の脇のリンパ節は切除しますが、最近ではたとえセンチネルリンパ節に転移があってもそれが少数であれば脇のリンパ節を取らないこともあります。

  • 化学療法:いわゆる抗がん剤の治療です。乳がんは抗がん剤がとてもよく効く癌ですので積極的に使用します。術後の再発予防に使うほか、乳がんを小さくする目的で手術前に使うことがあります。乳がんの性質を詳しく調べることでくすりの効果をある程度予測できますので患者さまごとに最適の抗がん剤を選んで使います。
  • ホルモン療法:乳がんのおよそ8割は女性ホルモンに反応する癌なので女性ホルモンをブロックすることで癌の増殖をおさえることができます。主に手術後の再発予防に使いますが化学療法と同じように腫瘍を小さくする目的で術前に行なうこともあります。
  • 放射線療法:乳癌には放射線療法が良く効きます。乳房温存手術の術後には残った乳腺に癌が再発しないように手術した乳房に放射線をあてます。

線維腺腫

主な症状

乳房のしこり

解説

代表的な乳腺の良性腫瘍で30代までの若年者に多く、クリッとしたよく動くししこりとして触れます。これが乳がんに変わることはないとされています。

治療方法

基本的に治療は不要です。急に大きくなる場合などは摘出手術をすることもあります。

乳腺症

主な症状

乳腺が硬く触れる、痛みがある、乳頭分泌がある

解説

乳腺疾患のなかでもっとも頻度が高いのですが、大部分は病気としてあつかわれません。30~40才台に好発し、月経前に乳房の痛みが増強し月経終了後に軽減することがよくみられます。

治療方法

とくに治療は必要なく経過観察をします。乳腺症の方は乳腺が硬くしこりができても自分ではわかりにくく、さらにマンモグラフィの感度も落ちるので超音波検査を含めた乳癌検診を定期的に受けることをお勧めします。