放射性ヨード(131I)カプセルによる甲状腺癌の治療

はじめに

甲状腺悪性腫瘍の組織型内訳で分化癌の占める割合が多いとされています。この分化型甲状腺癌は放射性ヨード(131I)を選択的に取り込む性質があり、カプセルとして経口投与された131Iは病巣部分に取り込まれ、β線によって癌細胞破壊を起こすことで治療が可能となります。甲状腺分化癌での放射性ヨード治療は2つに分けられ、少量の投与量によるアブレーション治療と、大量の投与による進行例の治療です。

当院では現在、少量の投与量によるアブレーション治療のみ実施しています。この治療方法は甲状腺全摘術後の残存甲状腺組織の破壊目的で、不可視病変に対する予防として期待される治療方法です。進行例などの大量投与と違い、専用の治療病室に入院していただく必要もなく、外来で実施できます。

 なお、適応に関しては当院の糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき判断させていただきます。

治療の実際

今法を行うためには、2週間の無機ヨード摂取制限が必要となります。癌組織へのヨード集積量は、正常な甲状腺組織に比べて極めて少なく、より厳密なヨード制限が要求されます。このヨード制限の可否こそが治療効果を左右するといっても過言ではありません。

一方、血中TSH値を上昇させることで放射性ヨードを効率的に病巣部分に取り込みを促します。従来はホルモン剤休薬によって内因性のTSH上昇を達成していましたが、近年国内でrhTSH製剤が販売されるようになり、当院では積極的にrhTSH製剤を使用することで外因性によるTSH上昇を達成しています。これによりホルモン休薬によるQOL低下が少ないなど利点が期待できます。

治療後には全身シンチグラフィを行い確認を行います。また、一定期間のヨード制限を続けていただきます。この後、糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき治療判定していただきます。


治療前

治療後
残存甲状腺組織がアブレーション治療によって破壊でき、シンチ上で集積が消失した一例

治療のお問い合わせ

関西電力病院 糖尿病・栄養・内分泌内科
放射線科 RI室