子宮筋腫

主な症状

過多月経、月経痛、腹痛、腹部膨満感、貧血、不妊

解説

子宮筋腫は子宮に生じる良性腫瘍です。筋腫のできる位置や大きさによって症状が異なります。女性ホルモン(エストロゲン)が、筋腫の発生や、腫瘍増大に関与しています。月経がある間は、筋腫は増大しますが閉経後は、症状は軽快し、筋腫の大きさも小さくなることが多いです。

治療方法

急激に大きくなり、悪性化が疑われるとき(子宮肉腫)、強い痛みがあるとき、治療を要する程度の貧血症状、増大した子宮が膀胱を圧迫することによる頻尿、大腸を圧迫して生じる便秘や下痢など、これらを自覚するときは治療が必要です。治療には、ホルモン療法と手術療法とがあります。

ホルモン療法は、卵巣からのエストロゲンをとめて(治療中は月経もなくなる)、腫瘍の発育を妨げます。また、治療中は月経もなくなるので貧血が改善します。しかしながら、治療後に月経が再開し、女性ホルモンが出てくると、また腫瘍が増大し過多月経も以前のように復活します。

ホルモン療法は出産のために子宮を温存したいときや、手術までにまず貧血を治療したいとき、手術までに数ヶ月単位の期間があり、腫瘍の縮小を期待するとき、もうすぐ閉経になりそうで閉経まで逃げ込みたいときなどに行います。

手術療法には、開腹手術と、腹腔鏡手術があります。また筋腫だけを取る筋腫核出術と子宮そのものをとる子宮全摘術があります。どの治療法にも長所、短所がありますので、状況に応じてどの治療法にするかを話し合って選択します。

子宮内膜症

主な症状

腹痛、月経痛、排便痛、性交痛、不妊

解説

子宮内膜症とは、子宮内膜に類似する組織が子宮内腔以外の部位で発生、発育する病態です。特に卵巣に発生した場合には卵巣チョコレート嚢腫と呼ばれます。好発年齢は20代から40代の女性で、月経のある女性の7~10%に見られます。月経困難症や不妊を主訴に来院し発見されることが多いです。また、年齢が高い場合や、大きなチョコレートのう胞がある場合には卵巣がんになる確率が高くなるため注意が必要です。

治療方法

薬物療法と手術療法の二つに分けられます。

薬物療法は薬で疼痛の緩和や病状の進行を抑えます。手術療法は患部を切除し疼痛の緩和や妊娠の可能性の向上を期待します。

薬物療法、手術療法のいずれを用いても再発の率は高く、多くの場合、閉経期までの長期の管理が必要となります。

治療法の選択は、疼痛の性質や程度、病巣の大きさ、年齢、挙児希望の有無、就労状況など個々の状況を詳細に考慮して選択することになります。

性器脱(子宮脱、膣脱)

主な症状

子宮下垂感、排尿困難、排便困難、歩行困難

解説

加齢の変化で骨盤底の筋肉が弱くなるため、子宮や膣壁が下垂し、進行すると膣外に子宮、膣、膀胱、腸管などの骨盤内にある臓器が排出される状態になります。寝ている時や、起きてすぐの時には症状は軽いのですが、立っていたり、歩いている時間が長くなるほど症状が強くなります。

治療方法

体操(骨盤底筋訓練)、ペッサリー(膣内に器具を入れて下垂を抑える)療法、手術療法

日常生活にさほど支障を感じていない症例では、骨盤底筋訓練法を伝えて経過観察または、ペッサリーで子宮を支え1~2ヶ月ごとに経過観察をしています。

子宮脱出症状や膣の脱出状態が強くペッサリーでは効果が得られないときは手術療法の適応となります。症状や年齢によってどんな手術をするかを相談します。

子宮頸がん

主な症状

不正性器出血、帯下(おりもの)増量

解説

子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんであり、一般的な"子宮がん検診"はこの頸がん検診にあたります。HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染が原因とされており、若年での子宮頚がん罹患率が上昇しています。好発年齢は30歳代と70歳以上の2つのピークがあります。症状としては不正出血や帯下の増量ですが、初期では無症状のことが多く、がん検診で発見されることが多いです。スクリーニング検査は子宮頸部を綿棒やブラシで擦って採取する細胞診です。異常があればHPV検査やコルポスコピーという拡大鏡下で組織の一部を採取します。進行度の診断と治療を兼ねて円錐切除術という子宮頸部の一部を切り取る手術をおこなうこともあります。

治療方法

子宮頸がんの治療は0期では円錐切除術や単純子宮全摘術でよいのですが、ごく初期以外は子宮を支える靱帯も切除する広汎子宮全摘術・両側付属器切除術とリンパ節郭清を行います。子宮周囲の靱帯に深く浸潤がある場合には、手術療法の前に動注化学療法という、腫瘍に経動脈的に抗がん剤を投与する治療をする場合があります。縮小すれば手術の適応となります。子宮頸がんは放射線療法も有効であることが多く、手術が困難な場合や、進行がんの術後、再発の場合には放射線治療・抗がん剤治療も行います。

子宮体がん

主な症状

不正性器出血

解説

子宮体がんは近年増加傾向にありますが、高危険因子としては肥満・未産・月経異常などがあげられます。好発年齢は50~60歳代で、閉経後の不正性器出血が主な症状となります。スクリーニング検査は子宮内から細い器具で細胞を擦り取ってくる検査になりますが、超音波検査で内膜の状態を観察することも重要です。前癌状態が疑われる場合などは子宮内の内視鏡検査や内膜組織検査が必要となります。

治療方法

子宮体がんの治療は手術療法が基本となります。子宮全摘術または広汎子宮全摘術・両側付属器切除術とリンパ節郭清を行います。手術後に腫瘍の悪性度や浸潤の範囲によって追加治療が必要かを判断します。追加治療には抗がん剤治療と放射線治療があります。また、ごく初期で条件を満たせば黄体ホルモン治療のみでの経過観察が可能な場合もあります。

卵巣がん

主な症状

腹部膨満、腹痛

解説

卵巣は腹腔内に存在し、子宮がんのように直接細胞を採って調べることができないために、腫瘍が大きくなってから症状がでることが多いです。進行すると腹水が貯まり急にお腹が大きくなります。また、胸水(胸腔に水がたまる)のため咳が続き呼吸器的な症状が出ることもあります。超音波やCT・MRI検査などで見つかることが多く、CA-125やCA19-9、CEAといった腫瘍マーカーが高値となることが補助診断に用いられますが、卵巣がんは悪性度の低いものから高いものまで様々なものがあるため、最終診断は手術で卵巣腫瘍を摘出して病理検査が行われます。

治療方法

卵巣癌の治療は手術療法と化学療法が主体となります。ごく初期であれば片方の付属器の切除だけで済む場合がありますが、進行例では両側付属器切除・単純子宮全摘術・リンパ節郭清・大網(腹腔内の脂肪の膜)の切除術を行います。腹水にがん細胞が存在する場合や、他臓器に浸潤する場合には追加の化学療法が必要となります。

卵巣腫瘍(良性)

主な症状

無症状、腹痛

解説

卵巣腫瘍は腹腔内にあり、大きくならなければ症状に乏しいです。また腫瘍にも、卵巣のう腫といって内容に液体が貯留するものと、充実性腫瘍といって内容が硬い腫瘍があります。超音波・MRI・CTなどで診断します。卵巣は骨盤内で比較的ゆるく支えられている臓器で、、腸管のぜん動や排尿、腹圧、体の動きなどによって他動的に動かされています。

腫瘍として大きくなれば、茎捻転といって、捻れてしまって狭い骨盤腔内で戻らなくなります。この際には強い下腹部痛があり、血行障害のために卵巣が壊死します。

治療方法

腫瘍が5-6cmを超える場合や、茎捻転の場合、悪性を疑う場合には手術治療となります。条件を満たせば腹腔鏡下の手術が可能です。

月経前緊張症

主な症状

のぼせ、いらいら、下腹部膨満感、腰痛、頭痛、むくみ

解説

月経前の3-10日の黄体期のあいだに上記の精神的・身体的症状が出現し、月経とともに消失することで診断されます。

治療方法

月経前緊張症は排卵周期のみで起こるために、排卵を抑える治療が主流となります。

具体的には低用量ピルや偽閉経療法などのホルモン治療を行います。その他漢方治療、症状に応じて利尿剤の服用などもおこなわれます。

子宮外妊娠

主な症状

月経が来ない、不正出血、下腹部痛

解説

受精卵が子宮外(卵管や卵巣、腹膜)に着床しそこで発育する状態です。

子宮は胎児や胎盤の増大に応じて増大しますが、その他の部位では増大できないため組織が破壊され痛みを覚えるとともに腹腔内に出血します。初期には症状が無いことが多いため、妊娠に気づいたら早めに産婦人科を受診し、超音波エコー検査で子宮外妊娠でないことを確認することをお勧めします。

治療方法

子宮外妊娠の部分を摘除します。腹腔内出血がほとんど無く、全身状態がよければ、腹腔鏡手術が可能です。腹腔内に大量の出血があれば、輸血が必要になることがあります。

性器クラミジア感染症

主な症状

女性の8割、男性の5割に症状が無い。女性ではまれに帯下(おりもの)、不正性器出血、腹痛。男性では排尿時のペニスの痛みや分泌物の排出。

解説

クラミジア トラコマティスという病原体の性感染症で、最近若い性的活動が盛んな人に増えています。因みに20~24歳の女性では16人に1人が感染しているとのデータがあります。この病原体は膣、子宮頸管、卵管を通って腹腔に入り、肝臓にまで達し、その過程で腹膜炎を起こして右上腹部の激痛を訴えることがあります。また、卵管の通過障害を起こして子宮外妊娠や、不妊症、流産の原因にもなります。さらに、出産時に新生児に感染し、肺炎、結膜炎、中耳炎などの原因にもなる厄介な疾患です。しかし、子宮頸管にだけに感染している時期にはほとんど症状が無く、体調を崩して感染が広がって始めて受診するため、早期治療の機会を逸してしまうことが多いようです。

性的活動が盛んで、上記の症状がある場合には、症状が軽くても産婦人科で診察を受けることをお勧めします。

治療方法

パートナーにも検査を行い、陽性であれば同時に抗菌剤や抗生物質で治療します。

更年期障害

主な症状

ほてり、のぼせ、冷え、動悸、頭痛、めまい、うつ症状、全身倦怠感

解説

更年期は女性ホルモンの分泌が減少し始める45~55歳くらいまでの時期をいいます。月経が止まるのが平均して50歳くらいなので時期的にちょうど重なります。この時期に現れる症状を更年期症状といいます。すべての女性に更年期はやってきますが、症状が軽い、重いなど個人差があり無症状のまま過ぎることもあります。

日常生活に支障をきたすほど辛いときは治療を必要とします。

治療方法

ホルモン剤、漢方薬、自律神経調節薬

  • ホルモン剤
    女性ホルモンが含まれている錠剤の服用または、女性ホルモン成分のパッチ剤を貼ります。長期間の使用により乳がんのリスクが高くなることや、肝機能に影響する場合もあるため、定期検診を行いながら使用します。
  • 漢方薬
    数種類あり、症状に応じて使用します。効果が現れるまで少し時間がかかりますが、体質改善の作用があり副作用も少ないです。
  • 自律神経調整薬
    ホルモン剤よりも効果は弱いため、ほかの薬とあわせて使うことが多いいです。症状が軽い人、ホルモン剤が使えない人向けの薬です。