形成再建外科

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精密な手術で機能と外見を再建します

形成再建外科部長
松末 武雄
Takeo Matsusue

形成再建外科では、どのような機能再生医療を行っているのでしょうか。

けがや病気で失われた指、喉、乳房などの再建を行っています。
再建と聞くと一般の方が思い浮かべるのは乳がんの手術で失われた乳房の再建ですが、ほかにもさまざまなものがあります。当科では特に指の再建に力を入れています。指の機能を再建するためには、神経をつないで知覚を再建し、きちんと動くようにしなければなりません。物をつかんだり、なめらかに動いたりするだけでなく、触ったときの感覚を取り戻すことを目指します。
また、手は顔と同じで常に見える部分なので、外見の再建は社会的にも重要な意味を持ちます。当科では、元の長さ・太さ・爪の大きさに近い指を再建することを目指しており、元の指がなくても、足の指の一部を移植して手の指を作ることが可能です。この再建手術は、指を失って何年か経過してからでも行えます。他院であきらめていた人も、ぜひ一度当院に相談してみてください。

関西電力病院の形成再建外科の治療の特長を教えてください。

マイクロサージャリーを用いた手術に力を入れています。
当科ではマイクロサージャリー※1を用いた、自家組織移植※2による手術を得意としています。特に切断された指の手術は微細な血管や神経をつなぐ必要があり、マイクロサージャリーでなければ行うことができません。お子さまの指の場合、時には0.2mmほどの血管を縫う必要があります。この技術を応用して、失われた指を作ったり、耳鼻咽喉科の協力のもと咽頭がんの手術で失われた喉の再建をしたりと、さまざまな治療をしています。
2009年に開設したマイクロサージャリー外傷センターでは、整形外科と連携して科の垣根を越えたチームを作り、手や足の外傷救急治療に取り組んでいます。重症の場合、単なる骨折とは異なり、神経や血管の損傷はもちろん、皮膚や骨などの組織が欠損していることもあります。そこで整形外科が得意とする骨折や関節損傷を再建・修復する手術と、当科の得意なマイクロサージャリーを組み合わせれば、あらゆる四肢のけがに対応できます。

形成再建外科が目指す治療を教えてください。

患者さまの“生活の質の向上”を目指し最善の治療を行います。
私たちが大切にしていることは、「生活するうえで、ないと困るものを再建する」ことです。特に親指がなければ、物をつまめません。咽頭がんで失われた喉は、再建しなければご飯を食べることができません。糖尿病で足を切断しなければならない症例でも、血管のバイパス手術や組織移植手術によって歩行機能を温存することができる場合があります。さらに、機能を再建させるだけでなく、外見もできるだけ元の形状に近いものに再建し、患者さまに今までの生活と近い状態で暮らしていただけることを目指します。
形成再建外科の治療に、これで終わりというところはありません。扱う対象は全身ですので、他科との連携も非常に重要です。治療方法も創意工夫の積み重ねで日々進歩しています。これからも患者さまにとって最善の治療を行っていきます。

※1 マイクロサージャリー
細い血管や神経を剥離したり縫合したりする手術手技。手術用双眼顕微鏡で患部を拡大し立体的に観察しながら、特殊な器械や器具で非常に精密な手術を行う。

※2 自家組織移植
自分の体の一部を移植すること。多くの場合、外から目立ちにくい場所の皮膚や組織を、必要な箇所に移植する。他人からの組織移植に伴う拒絶反応や人工物の移植で生じる異物反応がない。