心臓血管外科

関西電力病院心臓血管外科の診療について

当科は2016年4月に開設し、成人心臓大血管疾患に対する外科治療を担当しています。

一般的にはこれらの手術は命に関わる人生の中の一大イベントです。わたしたちは、患者さまを中心とした安全で最高水準の治療を提供し、元気で長生きして頂ける為のお手伝いを致します。

当院では通常の心臓手術の他に、高難度手術(複合手術、弁形成術、大道脈基部再建)、低侵襲(小胸開)心臓手術にも取り組んでおり、あらゆる疾患と治療方法をご提供いたします。

また、心臓血管外科医のみではなく、循環器内科医、心臓麻酔医、臨床工学技士、集中治療医、薬剤師、看護師、理学療法士、管理栄養士など、診療科や職種を越えたハートチームを形成して、多角的な視点をもち、患者さまが元気に社会復帰されるのを応援いたします。

当科の特徴

低侵襲心臓手術(MICS)

MICSとはMinimum invasive cardiac surgeryの略で、小さな切開で行う心臓手術のことを指します。通常、心臓の手術は胸骨正中切開を行うことが多く、胸部の正中に20-30㎝程度の創ができることが一般的です。MICSは8㎝程度の皮膚切開で心臓手術を行います。当科では胸骨部分切開や右開胸によるMICSを積極的に行っています。現在ではMICSを導入している施設も増えてきていますが、当科部長の末永悦郎は1998年から25年以上にもわたりMICSを行っており、いわばMICSのパイオニア的存在です。通常では難しいような様々な疾患に対してMICSでの手術が可能であり、長年の経験に基づき、無理なく安心なMICSを行います。

僧帽弁疾患

様々なタイプの僧帽弁閉鎖不全症・狭窄症に対して高難度とされる形成術を基本として、手術を行います。一般にご本人の弁を温存することで、長期の耐久能が期待できます。弁置換術も含めてMICSでの手術が可能です。

大動脈弁疾患

大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症に対する弁置換術(一部形成術)を、正中小開胸もしくは右肋間小開胸のMICSで行うことが可能です。

狭心症

狭心症に対する冠動脈バイパス術を、複数の血管を繋ぐことができる多肢病変も含めて左肋間小開胸のMICSで行うことが可能です。

先天性疾患

また、成人の方においても稀に心室中隔欠損症や不完全型房室中隔欠損症などの先天性疾患が見つかることがあります。当科では、そのような成人先天性疾患に対しても積極的にMICSでの低侵襲アプローチ手術を行なっています。

このように、もちろん通常通りの胸部正中を大きく開いての手術も可能ですが、当院では低侵襲心臓手術をあらゆるご病気に対してもご提供いたします。そのため小さな傷で の手術が可能となります。

また、通常冠動脈バイパス術の際には下肢から静脈を採取しますが、当院ではこちらも内視鏡を用いて採取することで小切開・低侵襲な治療をご提供いたします。

内視鏡による大伏在静脈採取の写真

高難易度手術

大動脈弁形成術、大道脈基部再建術

通常、大動脈弁閉鎖不全症に対しては弁置換術を行われることが通常ですが、当院では可能であればご自身の弁を温存した大動脈弁形成手術を行います。また、形成術に際しては大道脈基部も合わせて置換した方が良いとされており、高難度の自己弁温存基部置換を含めた大動脈弁形成を行います。

図:大道脈基部を人工血管に取り替え、冠動脈を再建しています。
大動脈弁は形成を行い、術前と比べて弁の開放が改善しています。
冠動脈バイパス術(オンレイバイパス術)

現在、カテーテルでの治療が普及したことにより、冠動脈内にステントが留置されていたり、透析・糖尿病による高度の広範囲の病変に対しては、通常の冠動脈バイパス術が困難となります。その際にも、当院では、オンレイバイパス(Onlay patch repair)という高難易度の治療をご提供することで、治療が可能です。も必要に応じて行います。オンレイバイパスを行うことで、より広範囲な冠動脈の血流を改善させ、患者さまの長期予後を改善させる(長生きできる)効果が期待されます。

オンレイバイパス後の冠動脈CT

ステントグラフト内挿術

胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤などの大動脈瘤は通常症状はありませんが、破裂してしまうと命を失ってしまう可能性が高い為、破裂を未然に防ぐことが治療の基本方針です。

破裂を未然に防ぐための治療として、大きくわけて、人工血管置換術とステントグラフト内挿術の二つの方法がありますが、当院ではいずれの治療にも対応しており、患者さまの動脈瘤の形態、患者さまのご意向により柔軟に対応することができます。

ハートチーム全体の総合力

平日は毎朝、心臓血管外科医、循環器内科医、薬剤師、理学療法士、管理栄養士が集まり心臓血管センターカンファレンスを行っています。ハートチームで情報を共有することで、それぞれの患者さまに最適な治療方針について検討いたします。さらに、より良い医療を提供できるよう、最新の知見をアップデートするために勉強会も開催しています。ハートチーム全体の高い総合力をもって患者さまの診療にあたります。

また手術の前には、心臓血管外科医、循環器内科医、心臓麻酔医、集中治療医、臨床工学技士、看護師が集まり術前カンファレンスを行い、具体的な手術内容に関して詳細な検討を行い、安心で安全な手術をご提供します。

心臓血管センターカンファレンス
術前カンファレンス

心臓リハビリの積極的な介入

当院では術前から心臓リハビリを開始することで、術後のリハビリをスムーズに導入することができています。当院では土曜日も理学療法士によるリハビリをすることができますし、手術直後の患者様に対しては、必要に応じて日曜日にリハビリを行うこともできます。一般的にリハビリが手薄となる週末でも当院では手を抜くことなく、患者さまの回復に全力を尽くします。

また外来での心臓リハビリも可能ですので、退院後にリハビリを継続して頂くことも可能です。

短期入院パス

MICSでは小さな切開で、体への負担を軽減して手術を行うことができます。その結果、早期の自宅退院が可能です。当科では、術前を含め8~9日の短期間の入院でご退院いただけるしくみ(短期入院パス)を導入しており、早期の回復、社会復帰をサポート致します。

当科で扱う主な疾患は、

心臓弁膜症

大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全(逆流)症、僧帽弁閉鎖不全・逸脱(逆流)症、僧帽弁狭窄症 先天性二尖弁、三尖弁閉鎖不全症

→ 適応に応じて低侵襲心臓外科手術(M I C S)で手術可能です。

虚血性心疾患

狭心症、心筋梗塞、心室中隔穿孔、左心室瘤、虚血性心筋症

→ 適応に応じて低侵襲心臓外科手術(M I C S)で手術可能です。

大動脈疾患

腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、急性大動脈解離、胸腹部大動脈瘤、マルファン症候群、肺血栓塞栓症

→ 適応に応じて腹部大動脈瘤・胸部大動脈瘤ともにステントグラフト内挿術で対応可能です。

その他心臓疾患

肥大型心筋症、拡張型心筋症、心房細動、心臓腫瘍、心膜疾患(収縮性心膜炎など)

末梢血管疾患

閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞症

などであり、これら成人心臓大血管疾患に対する外科治療を担当しております。

外来診療体制について

当科外来は毎週 火曜日 及び 木曜日に行っております。
当日診療ご希望の際は、午前中に来院頂くようご協力お願いいたします。尚、お急ぎの場合は予定診療のみならず緊急診療に対しても対応させて頂きますのでお問い合わせ下さい。

※ただし、他患者さんとの兼ね合いでお待ち頂くことがありますので予めご了承下さい。 木曜日の末永の外来では弁膜症、大動脈疾患、冠動脈疾患、心臓腫瘍、心筋症など心臓疾患全般と低侵襲心臓外科手術(MICS)にも対応しておりますのでお問い合わせください。

診療実績

主な診療実績 (2022年)

手術症例数  113例
  • 開胸術  90例
  • 大動脈  16例
  • 冠動脈  40例
  • 弁膜症  54例
  • その他  27例
  • 非開胸術 23例

診療科紹介・部門