地域の医療機関の先生方へ
保険調剤薬局からの疑義照会による投与計画書の共有化
現在、厚生労働省の報告では、副作用報告の中で死亡転帰での医薬品に内服抗がん剤が上位を占めている。内服抗がん剤は、休薬期間が必要な薬品もあり、患者さまのコンプライアンスや医師のさじ加減により予期しない副作用が起こる場合も多い。保険調剤薬局では、内服抗がん剤の処方に対して「告知されている?」「何のがん?」「服薬・休薬期間は?」「この用量で大丈夫?」「副作用の対処法は?」などの疑問が多く、適切な服薬指導を患者さまへ提供するには、まず薬局が情報を把握しておく必要がある。現在の薬局で得られる情報は、『処方せん』と『患者さまとの会話』から得られる情報という限られたものであり、患者さまに「正しい情報」を伴った「薬」をお渡しすることが難しい。そこで、関西電力病院では、休薬が必要な内服抗がん剤において、化学療法委員会にて承認された投与計画書(以下、レジメン)のみ使用でき、抗がん剤の投与量のみを医師が調節できるシステム(投与法は不可)を作成した。レジメンの内容は、患者さま情報(ID・氏名・身長・体重・体表面積)とともにレジメン名、薬剤名、用法用量、投与期間、服用状況の把握、告知の確認などを追加した。このレジメンを薬薬連携において共有化し、保険調剤薬局での服薬指導の充実による安全性を高めるためのツールとして『処方せん疑義照会』システムにて完結させた。
院外処方せん中の内服抗がん剤の『用量・用法・投与日数』記載の下にあるコメントにおいて『調剤薬局様へ 投与計画書有り 疑義照会して下さい』とある場合は、処方せん疑義照会連絡FAX先(06-7501-1404)に連絡下さい。
外来化学療法室患者の薬局連携充実情報
レジメン内容の掲示(抗がん薬レジメン)
外来化学療法室での在宅患者が投与している抗がん薬の治療内容を、注射用抗がん薬、内服抗がん薬および内服抗がん薬+注射用抗がん薬について、薬局薬剤師が調剤する際に必要な治療内容を共有するためのレジメン内容
患者にあわせたレジメン(治療内容)を確認することが出来ます。患者に同意の下、主治医の指示で下記の内容を連携しています。
- 注射用抗がん薬のレジメンは、お薬手帳に貼っていますので、ご確認ください。
- 注射用抗がん薬、内服抗がん薬以外の、支持療法薬の服薬指導とフォローアップを期待しています。
- 院外処方せんでの内服抗がん薬がある場合は、日々投与計画書をFAXにて情報共有しています。
- 抗がん薬治療内容を確認し、院外処方せんの用量などを確認するとともに、内服薬の副作用だけでなく、注射薬での遅延性の副作用なども考慮して、患者の状態を踏まえた必要な指導およびフォローアップを期待しています(後もページで系統別主な副作用記載)。
- 必要な情報は、どのような形式のトレーシングレポートでも結構です。薬剤部へFAXにて情報共有をお待ちしています。
- 薬局からの情報提供は、緊急性のある情報は主治医に報告が必要なものは院内電話連絡で対応し、緊急性の少ない情報も含めて、薬剤師による電子カルテへの記載を実施しています。
- 当院は、外来化学療法加算1のAを算定しており、患者の連携充実加算を算定しています。
ジェネリック薬品の対応
後発医薬品の促進採用
- 後発医薬品への切り替えは、外来患者さまの待ち時間の影響がないように先発医薬品が同じ(do)処方オーダできるように、院外専用医薬品として先発医薬品のマスター登録を残すこととしています。
- 院外処方せんオーダに関しては、「一般名処方」のデフォルト設定の対応で後発医薬品の推進を目指しています。
- 他の医療従事者の取り扱う際の安全を重視するために、DI情報にて情報共有を行っています。
- 後発医薬品の選定には下記の内容(優先順位として)を考慮する。
- オースロライズドジェネリック(AG)を第一優先として採用する
- 患者説明の簡便性と服用安心感、医師の使用安心感などを考慮
- 利便性を重視(口腔内崩壊錠、半錠に分割する割線ある錠剤、ゼリー剤形、フィルム剤形など)
- 同一成分で2品目以上の場合は同製薬メーカーで揃える
- 安定供給の確認
- 成分表示
- 最終的には薬価の低価格も考慮する
当院薬剤師のタスクシフト業務
プロトコル・ 対象薬剤名 |
説明 | 業務負担軽減職種 |
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入院患者持参薬鑑別後の医薬品安全使用に関わる薬剤師業務 | 入院患者持参薬の鑑別後の14日間の薬剤の数管理・薬袋の作成や持参薬オーダなどの取り組み | 医師、 看護師 |
保険薬局からの疑義照会対応 するための簡素化プロトコール |
保険薬局からの院外処方せんに対する疑義照会をすべて薬剤部門で受けており、疑義照会の内容により簡素化して薬剤師が回答するプロトコールを作成し活動している | 医師 |
内服抗がん薬の「日々投与計画書(レジメン)」作成 | 外来化学療法実施患者のうち、内服抗がん薬単独の場合でも医師に変わり「日々投与計画書:レジメン」作成した上で、病薬連携にてがん患者の薬剤の適正使用と安全管理を目的に実施(連携実施加算算定不可であるが安全確認のため実施) | 医師 |
外来化学療法患者の薬剤師 による診察前問診 |
抗がん薬使用する外来化学療法患者は医師がレジメン確定後に患者に薬剤師からオリエンテーションを実施している。抗がん薬投与継続中の外来化学療法患者にて受診前に薬剤師は患者の状態の把握を行いながら、看護師とともに副作用の出現に注意して観察を行うなど、積極的に関与している | 腫瘍内科医、 医師 |
内服抗がん薬の指導 (薬剤師外来) |
泌尿器科の外来患者において、内服抗がん薬に対してのアドヒアランスと副作用確認などの薬剤師外来として受診前問診を実施して、医師と情報を共有化している。 | 泌尿器科医 |
免疫抑制する医薬品の服用患者HBVスクリーニング | 抗がん薬使用する外来化学療法患者は医師がレジメン確定後に患者に薬剤師からオリエンテーションを実施している。抗がん薬投与継続中の外来化学療法患者にて受診前に薬剤師は患者の状態の把握を行いながら、看護師とともに副作用の出現に注意して観察を行うなど、積極的に関与している | 医師 |
放射線医薬品の混合調製 | 放射線医薬品ゼバリンとリツキシマブとの混合調製についてゼバリンの研修を受講して実施している。調製作業は安全キャビネット内において無菌操作で行う。 | 血液内科医 |
TDMのための採血オーダ | 医薬品適正使用モニタリングとして、抗菌薬、抗真菌薬、抗MRSA薬、ワルファリンなど薬物の血中濃度測定のための採血、検査オーダ等の実施。プロトコールによる投与設計およびモニタリング(薬剤師が処方設計) | 医師、 看護師、 臨床検査技師 |
処方後訂正の処方入力 (代行オーダ) |
処方後の修正処方入力、DOオーダ、処方内容の間違いの確認後の訂正処方オーダの処方入力(当日処方に対してのみ代行入力可能) | 医師 |
麻酔科との全身麻酔前の持参薬鑑別と手術に影響を及ぼす医薬品の情報提供 | 全身麻酔の患者に対して麻酔前診察での持参薬鑑別を麻酔科とコラボレーションして実施している。持参薬としては、NOAC含む抗凝固薬、抗血小板薬、ホルモン薬、OTC薬含むサプリメントなどの鑑別情報の内容を電子カルテにて情報をフィードバックし、手術前・時の出血管理に活かしている。 | 麻酔科医 |
がん性疼痛患者の麻薬量の設定 | 入院患者の麻薬のタイトレーション確認 | 緩和医療医 |
(新)周術期における薬学的管理 |
手術前における、患者の服用中の薬剤、アレルギー歴及び副作用歴等の確認、術前中止薬の患者への説明、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づく術中使用薬剤の処方オーダーの代行入力(※1)、医師による処方後の払出し 手術中における、麻酔薬等の投与量のダブルチェック、鎮痛薬等の調製 手術後における、患者の状態を踏まえた鎮痛薬等の投与量・投与期間の提案、術前中止薬の再開の確認等の周術期の薬学的管理 ※1手術中の追加の感染予防の抗生物質・抗菌薬(4時間以上、出血量1,200mL以上が目安)、手術中の追加麻酔薬および病棟連携での疼痛麻薬管理中の追加する場合 |
麻酔科医 手術に関わる医師 |
病薬(薬薬)連携勉強会および連携実施加算研修会について
薬薬連携勉強会は、薬剤師としてのスキルアップに繋がる勉強会を開催しています。近隣以外の保険調剤薬局においても参加を歓迎いたします。また、会の運営は、関西電力病院と近隣の保険調剤薬局での親睦を深めることを目的とし、院外処方せんでの問題点、疑問点などを検討する会議(意見交換会)も兼ねています。
コロナ感染拡大前の2019年度までは、4ヶ月に1回程度の福島区薬剤師会と関西電力病院薬剤部との福島区薬-薬連携勉強会を開催していましたが、①勉強会の回数にこだわらず、②基本集合型で実施したいが集合型にこだわらずZOOM、YouTubeなども考慮します。この勉強会の趣旨は、地域の薬剤師会と病院内薬剤師の親睦を深めるとともに、病薬(薬薬)連携でのチーム医療に生かすための薬物治療に関して研鑽が目的です。また、連携実施加算研修会では、かかりつけ薬局や地域の薬局との抗がん薬の連携に必要な勉強会を最低年1回実施しています。
当院の医師、薬剤師などから院外処方せんに良く使用される内服薬を中心に講演しています。近隣以外の保険調剤薬局においても参加を歓迎いたします。問合せ先は、関西電力病院薬剤部(濱口)までご連絡下さい。
糖尿病患者シックディの対応の薬薬連携説明書(病院薬剤師も使用可)
当院では、糖尿病患者に対して、糖尿病用薬のシックディ時の対策と説明を統一するために患者様説明書を作成しました。患者様説明書は、病院、診療所の医師と患者の間でシックディ時の糖尿病用薬の投薬方法を確認するための用紙です。これは、保険調剤薬局および他病院での薬剤師がシックディを説明した上で、患者様から直接主治医にシックディの場合にいま使用している糖尿病薬の投与量の調節方法を確認していただきます。シックディ対策説明シートは、後日薬剤師が確認しましょう。最後に、この説明用紙を使用してインフルエンザウイルスやノロウイルスの流行時期や脱水状態になりやすい時期など注意必要な時期に再確認するための用紙です。薬剤師が中心となり、1度だけの説明でなく、必要な時期に説明を行いシックディでの糖尿病用薬の危険性(副作用)を未然に防ぎましょう。