血管造影(AG)部門
当院の血管造影(AG)部門について
血管造影室では医師、看護師、コメディカルスタッフ(放射線技師、臨床工学技士など)が患者様にとって安全で、苦痛が少なく、予後も良好な検査・治療が行われる様に放射線機器の安全管理と放射線防護の最適化に努めて、日々努力いたしております。装置はバイプレーンタイプの血管造影撮影装置が2台あり、主に頭頚部・腹部血管用1台と心臓・四肢血管用1台で運用しています。
放射線科施行による血管造影検査・治療の中で代表される、TAE(肝動脈塞栓術)やUAE(子宮動脈塞栓術)はもちろん、PSE(部分的脾動脈塞栓術)や仮性動脈瘤塞栓術、骨盤骨折その他出血時の血管塞栓術、胸部(喀血)の血管塞栓術などのIVR全般と神経内分泌腫瘍(NET)の局所診断のSASI test等をおこなっております。
脳神経外科施行による頭・頸部血管造影撮影などの検査(脳血管撮影)や、頸動脈ステント留置術や脳動脈瘤塞栓術(未破裂・破裂)、急性期脳梗塞再開通療法、脳血管内治療(腫瘍栄養血管塞栓術)等の治療をおこなっております。
循環器内科施行による心臓カテーテル検査・治療(CAG・PCI、EPS、冠攣縮薬物誘発試験、心筋生検など)、四肢(腸骨領域~膝下末梢血管PTA)や腎動脈の治療(経皮的腎動脈形成術 PTRA)、下大静脈フィルター留置術、ペースメーカー挿入術、アブレーション、ロータブレーター、経皮的大動脈弁形成術(BAV)、経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)等をおこなっております。
腎臓内科施行による血液透析のバスキュラーアクセス(シャント)トラブルに対するインターベンション治療(VAIVT)をおこなっております。
おもな検査・治療
腹部血管造影検査
ヨード系造影剤を注入して肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、腸などの腹部臓器の血管を描出し、連続X線撮影して血管の形の変化や異常を検査します。血管そのものを調べる検査なので、他の画像診断法で診断が不十分な場合におこなわれます。特に、消化管出血部位の診断・治療や各臓器の腫瘍の良性・悪性の区別に力を発揮します。悪性の場合は病気の範囲がわかり、手術が適合するかどうかも決定できます。
TAE(肝動脈塞栓術)
=TACE(肝動脈化学塞栓療法)
TAEとは、おもに肝臓がんに対する治療法の一種で、最近ではTACE(Trancecatheter Arterial Chemo Embolization)と言い、肝細胞がんに対して血管内にカテーテルという細い管を挿入し、腫瘍を栄養している血管を塞栓して血流を遮断してがん組織を壊死させ、さらに塞栓した血管の末梢には抗がん剤を注入し、同時にがん組織に作用させるものです。このため、がんを兵糧攻めにする治療とたとえられます。回転撮影画像を元にした3D-DSA(3Dの血管像)やCTライクイメージ(血管造影撮影装置でCTの様な画像を)を使用し、栄養血管等を特定して塞栓するいわゆる超選択的動注化学治療を行っております。
頭頸部血管造影撮影
2008年度より新設された脳神経外科医施行による頭部・頚部の血管造影撮影です。足の付け根や手首や肘の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を入れ頚部へ進めていき、まず頚動脈を撮影し、頸動脈狭窄症などの診断、そして脳の動脈、静脈、毛細血管の状態、血管の走行から脳内の病変の診断をする検査です。くも膜下出血の原因となる動脈のこぶ(動脈瘤)や、くも膜下出血や脳出血による出血部位の確認、脳腫瘍の存在、動脈と静脈が毛細血管を経由しないで直接繋がっている脳動静脈奇形なども診断し、治療方法の判定をします。また、脳動静脈奇形や脳腫瘍の手術前に、その走行・形態を観察したり腫瘍に血管が関与していないかなども調べます。新たな新装置で、回転撮影画像を元にした3D-DSA(3Dの血管像)を使用しながら検査を行っております。
CAS
(頸動脈ステント留置術)
頸動脈狭窄症は、首の部分で大動脈からの血液を脳に流す頸動脈に、動脈硬化が発生し頸動脈が細くなる病気です。これが原因で、脳への血流が低下したり、また狭くなった部分から血の塊が脳の血管に飛んで脳梗塞を引き起こしたりします。当院では頸動脈内膜剥離術(CEA)が困難な症候性50%以上、あるいは無症候性80%以上の頸動脈狭窄症に対して血管内治療を施行しています。
太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを頸動脈の狭窄した場所に誘導します。ここでバルーンと呼ばれる風船をふくらまし、網目状に血管の中で拡張し頸動脈の内側を適切な太さに保つステントとよばれる機器を、狭くなった頸動脈に挿入します。
脳動脈瘤コイル塞栓術
くも膜下出血の原因となる脳血管の動脈瘤(未破裂、破裂)に対して、血管内治療(コイルによる塞栓術)を施行しています。脳動脈瘤の血管内治療は血管の内腔から治療部位に到着するため、体にとって侵襲の少ない治療方法です。外科手術とは異なり、コイル塞栓術は開頭術を必要としません。直接に脳血管・脳動脈瘤を見て治療をする代わりに、リアルタイムのX線透視画像下に血管を視覚化し、血管の内腔から脳動脈瘤を治療します。カテーテルを足の付け根の大腿動脈から挿入し、大動脈を通り頭部の脳動脈瘤まで誘導します。このカテーテルを通して塞栓物質(極めて細いプラチナ製コイル)を脳動脈瘤の中に詰め、脳動脈瘤内に血液が流れ込むのを遮断することで破裂を予防します。血管内治療に使用されるプラチナ製コイルはX線透視下で視認が可能で、脳動脈瘤の形状に一致するように柔軟な構造になっています。この血管内治療(コイル塞栓術)は、全身麻酔のもとに行われます。
心臓カテーテル検査・治療
心臓カテーテル検査というのは、循環器内科施行による検査で、手首や肘や足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を入れ、心臓の冠動脈を造影して血管が狭窄や閉塞を起こしていないかを調べる検査のほか、左心室造影検査や、右心カテーテル検査などをあわせて心臓カテーテル検査といいます。心臓カテーテル検査は直接冠動脈を造影して狭窄血管部位を特定し、この部位の数や場所によって治療方法が決定されます。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、身体に大きな傷をつけることなく狭くなった冠動脈を拡げるために行う治療法です。手術は腕の橈骨動脈や上腕動脈または足の付け根の大腿動脈からカテーテルという細い管を入れ、冠動脈の狭くなったところまで進めて治療を行います。先端に風船のようなものがついた管(バルーンカテーテル)を冠動脈の狭くなった部分に挿入し、そこで風船を膨らませることにより血管を押し拡げ、ステントという小さな網目状の金属の筒を血管に置くことにより、狭くなった部分を筒が支えて血管の中が拡がった状態を保持します。「バルーン血管形成術」と「冠動脈ステント留置術」が同時に行われる場合もあります。
経皮的血管形成術(PTA)
動脈硬化等が原因で下肢に血液を供給している動脈が細くなる病気を下肢閉塞性動脈硬化症(PADまたはASO)といいます。症状は病気の進行具合によって運動・歩行などの負荷による一時的な下肢の疼痛(間歇性跛行)や安静時の疼痛、さらに進行すると足に潰瘍や壊死を生じます。これらの症状は動脈の狭窄・閉塞に伴う血流不足によるものです。PADは下肢動脈に多くみられますが、ほかにも脳に血液を供給している頚動脈や腎臓に繋がる腎動脈などでもおこります。経皮的血管形成術(PTA)は先端に小さく折りたたまれたバルーンを装着したカテーテルを用いて、狭窄または閉塞してしまった血管を拡張することにより血液の流れを確保、再開させる手技です。
機器の紹介
心臓や四肢血管用として島津メディカルシステムズ社製のFPD搭載の血管造影撮影装置カーディアックシステムがあります。心臓のように絶えず動いている臓器の血管を高画質かつ高速でデジタル画像化できる小視野8インチ間接変換方式FPDを搭載しています。
特長といたしましては、超高画質間接変換方式平面検出器:FPD(フラットパネルディテクター)2つを搭載し、これまで描出が困難であった微細血管やPCIデバイス(ステント、ガイドワイヤ)などの視認性が飛躍的に向上します。更に、最新鋭の高速リアルタイム画像処理機構が、血管だけでなく進歩の著しいインターベンションデバイスの視認性を高めるとともに、リアルタイムでステント強調が可能なDynamicStentViewにより、PCIを強力に支援します。今までのシングルプレーンタイプよりバイプレーンタイプの方が少ない造影剤で検査ができ、手技時間も短縮出来ます。
頭頚部や腹部血管用としてシーメンスヘルスケア社製のフルフィールドFPD搭載IVR対応バイプレーンシステムがあります。独自の長方形大視野FPDを正面・側面に配し、頭頸部や腹部領域をカバーするフルフィールド性能、磨き抜かれた高画質性能などの他に次の特長を有します。
- 広い領域の血管も一度に撮影可能な大型検出器を搭載
- 複雑な血管走行も一目でわかる3D画像を簡単に作成
- 正面・側面の2方向からの同時撮影が可能で手技時間の短縮を実現
- 先端医療をサポートするガイディング機能を搭載
- 従来装置に比して患者様の被ばく量低減を達成