経会陰エコー下前立腺生検について
はじめに 経会陰エコー下前立腺生検を受けられる患者さんへ
前立腺生検はPSA高値(主に4ng/ml以上)、直腸診で硬結を触れる、MRI・PET他画像所見などで前立腺癌を疑う方が対象になります。前立腺癌の有無を確定するために、前立腺の一部(組織)を針で採取して調べます。もし癌が存在し、それを放置していた場合、数年後に癌が大きくなることが考えられます。さらに排尿困難、骨転移による痛みなどの症状が出現し、最終的に命にかかわることがあります。
当院の前立腺生検の特長
前立腺生検は泌尿器科の勤務する多くの病院で行われていますが、方法は各施設で様々です。当院の特長として
- 患者さんができるだけ痛くないように配慮し、腰からの麻酔(下半身麻酔)を行う
- できるだけ癌の検出率を上げるために股の間(会陰部)からテンプレート(針の位置目安となる碁盤の目のような固定器具)を用いて多部位生検(だいたい20箇所以上)を行う
などがあります。
当院での前立腺癌検出率
当院では2007年3月より前述のテンプレートを用いた前立腺生検を開始しました。過去のやり方と比較すると、癌の検出率は31.2%から46.2%に上昇しました。
PSA値ごとの詳しい検出率はPSA4~10ng/mlで32.6%、10~20ng/mlで68.2%でした。また最近では以前より生検時の針の回数を増やしているため、さらに癌検出率が向上していると思われます。
生検の実際の手順
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多くの方は検査前日に入院し、検査手順の紹介、内服薬・体調の確認
主治医から個別の検査説明を行います。 - 検査日は点滴があります。検査は手術室で行います。
- 背中から細い針を刺して腰椎麻酔(下半身麻酔)を行います。
- 直径2cmのエコープローブを肛門から直腸に挿入し、前立腺を観察します。
- 会陰(陰嚢と肛門の間の部分)に針を挿入し、前立腺の組織を採取します。
- 膀胱癌のリスクが高い方などは膀胱鏡を行うことがあります。
- 検査時間は30〜60分程度です。
- 翌日まで尿道にカテーテル(管)が入る場合があります。
- 多くの方が検査の翌日に退院できます。(血尿が強い方は入院の延長をお勧めする場合があります)
退院後の注意
- 何かににまたがったり(自転車やバイクにのるなど)、長時間座り続けたり、お酒を飲んだりすることは2週間程度見合わせてください。
- 病理診断の結果は次回外来受診時(生検の1〜2週間後)に説明します。
生検の合併症
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血尿、血便
数日で自然に軽快します。まれに再出血したり、血腫(血の塊)で尿道がつまり、導尿や尿道カテーテル留置が必要となることがあります。
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感染症、特に前立腺炎
検査後に高熱や排尿困難が出現することがあります。入院又は外来通院にて数日間、抗生物質の点滴、導尿や尿道カテーテル留置が必要となります。
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尿閉(排尿障害)
生検の影響で前立腺が一過性に腫れるため、しばらくおしっこが出にくくなることがあります。
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その他
非常にまれですが、麻酔によるショック、頭痛、神経障害などが、また検査前には予想できないような重篤な合併症(脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症など)が起こることもあります。