核医学(RI)部門

放射性医薬品の特徴と副作用

病院で使われる放射性同位元素(ラジオアイソトープ)は数時間から数日で弱まり、体外に早く排泄されます。身体に投与する量はごく微量であり、副作用も最近の調査では10万人あたりで、軽いもので2.0~2.5人と非常に少なく心配はいりません。軽い症状として、気分不良、顔面紅潮、悪心、めまい、吐気、皮膚発赤、脱力感、発疹、発汗、動悸などが挙げられます。

主に検査で使用する核種の物理的半減期

物理的半減期とは、最初の放射能を100とすると半分の50になる時間のことです。体内に投与された放射性医薬品は、生体の排泄機能(利尿作用など)により排泄され、物理的半減期より早く体内から減衰していきます。

99mTc 201Tl 123 131
6.01時間 72.91時間 13.27時間 8.021日

おもな検査

心筋シンチ検査

心臓は血液を全身に送るポンプの役目をしている臓器です。その心臓の筋肉(心筋)の血液の流れを調べる検査です。検査は心筋に特異的に集まる薬を腕から注射して、薬の分布を体外から測定し画像として表示します。放射性医薬品を変えることにより、心筋の血流、脂肪酸代謝(エネルギー代謝)、交感神経の働きを調べることができます。そのため狭心症や心筋梗塞、心筋症などの病気の有無やその程度を診断できます。

骨シンチ検査

骨の代謝や反応が盛んなところに集まる性質がある放射性医薬品(リン酸化合物)を使用して骨腫瘍や骨の炎症、骨折の診断などの骨の疾患を見る検査です。乳癌や肺癌、前立腺癌など治療前・治療後の経過確認にも利用されます。

脳血流シンチ検査

脳の血流状態や働きを見る検査です。脳血管のわずかな変化を見つけることができ、早期の脳血管障害や神経症状の病巣などの検出、脳の機能評価に利用されます。この検査で脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、痴呆などの精神疾患の病気の診断、評価、治療効果判定に役立ちます。

甲状腺シンチ検査

甲状腺に特異的に集まる薬を使い、甲状腺の機能が正常かどうか、形や大きさはどうか、また甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症、甲状腺癌の鑑別や評価も可能です。

プランマー病

オクトレオスキャンシンチ検査

この検査は神経内分泌腫瘍(NET)に対する核医学検査です。日本では神経内分泌腫瘍の年間受療患者数は1万1000人と推定され、消化管ホルモンであるソマトスタチンに感受性があります。オクトレオスキャンはそのソマトスタチンに集積されるので病巣診断、転移・再発診断を行うことができます。オクトレオスキャンは病巣検出率の高い薬剤で、世界30数ヶ国で保険承認を取得しています。日本では2016年1月に販売開始され、当院では販売とほぼ同時に使用を開始しています。

Ga(ガリウム)シンチ検査

腫瘍や炎症に集まる性質がある放射性医薬品を使用して身体の炎症や腫瘍がどの部位にあり、どの程度の進行具合かを調べる検査です。

RI治療

当院では検査だけでなく、甲状腺癌に対する外来アブレーション治療、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)に対する放射線ヨード治療、骨転移した去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対するRI治療(ゾーフィゴ)や、神経内分泌腫瘍(NEN)に対するRI治療(ペプチド受容体放射性核種療法 PRRT)も行っています。

詳しくは下記項目をクリックしてご覧下さい。

甲状腺癌に対する外来アブレーション治療について

放射性ヨード(131I)カプセルによる甲状腺癌の治療

はじめに

甲状腺悪性腫瘍の組織型内訳で分化癌の占める割合が多いとされています。この分化型甲状腺癌は放射性ヨード(131I)を選択的に取り込む性質があり、カプセルとして経口投与された131Iは病巣部分に取り込まれ、β線によって癌細胞破壊を起こすことで治療が可能となります。甲状腺分化癌での放射性ヨード治療は2つに分けられ、少量の投与量によるアブレーション治療と、大量の投与による進行例の治療です。

当院では現在、少量の投与量によるアブレーション治療のみ実施しています。この治療方法は甲状腺全摘術後の残存甲状腺組織の破壊目的で、不可視病変に対する予防として期待される治療方法です。進行例などの大量投与と違い、専用の治療病室に入院していただく必要もなく、外来で実施できます。

なお、適応に関しては当院の糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき判断させていただきます。

治療の実際

今法を行うためには、2週間の無機ヨード摂取制限が必要となります。癌組織へのヨード集積量は、正常な甲状腺組織に比べて極めて少なく、より厳密なヨード制限が要求されます。このヨード制限の可否こそが治療効果を左右するといっても過言ではありません。

一方、血中TSH値を上昇させることで放射性ヨードを効率的に病巣部分に取り込みを促します。従来はホルモン剤休薬によって内因性のTSH上昇を達成していましたが、近年国内でrhTSH製剤が販売されるようになり、当院では積極的にrhTSH製剤を使用することで外因性によるTSH上昇を達成しています。これによりホルモン休薬によるQOL低下が少ないなど利点が期待できます。

治療後には全身シンチグラフィを行い確認を行います。また、一定期間のヨード制限を続けていただきます。この後、糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき治療判定していただきます。

治療前画像
治療前
治療後画像
治療後

残存甲状腺組織がアブレーション治療によって破壊でき、シンチ上で集積が消失した一例

治療のお問い合わせ

関西電力病院 糖尿病・栄養・内分泌内科
放射線科 RI室

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)に対する放射線ヨード治療について

放射性ヨード(131I)カプセルによる甲状腺機能亢進症の治療

はじめに

甲状腺機能亢進症状で特に多いとさせるバセドウ病に対する治療法として抗甲状腺剤療法や外科的手術と共に放射性ヨード治療は広く行われています。簡便、安全、経済的かつ効果的な治療方法です。その他甲状腺機能性結節に対する治療としても行われています。

なお、適応に関しては当院の糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき判断させていただきます。

治療の実際

前処置として抗甲状腺剤治療中の方は事前に投薬中止していただきます。またヨード制限も1週間前から始めていただきます。通常、医療被ばくの少ない123Iカプセルを使用した甲状腺ヨード摂取率検査と甲状腺シンチグラフィを実施し、適正投与量を決定した後に放射性ヨード(131I)カプセルを投与させていただきます。

治療後の抗甲状腺剤の再開、ヨード制限の解除は当院の糖尿病・栄養・内分泌内科で診察を受けていただき説明させていただきます。

放射性ヨードカプセル画像
放射性ヨードカプセル
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関西電力病院 糖尿病・栄養・内分泌内科
放射線科 RI室

骨転移した去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する治療(ゾーフィゴ)について

ゾーフィゴ:骨転移した去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する治療用放射性薬品

はじめに

ゾーフィゴ®静注(塩化ラジウム(223Ra))は世界初のα線放出性放射性医薬品で、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対する治療を目的としています。
ヨーロッパでは「骨転移した去勢抵抗性前立腺癌に対する第一選択薬」と位置付けられています。2016年3月に日本での製造販売承認を得ており当院では2016年7月よりゾーフィゴによる治療を開始しています。

効能と効果

本剤に含まれるラジウム-223(223Ra)はカルシウムと類似の挙動をとり、骨転移したところなど骨代謝の亢進した部位に集積します。またα線というエネルギーが高く、がん細胞を破壊する力が強い放射線を放出します。α線の届く距離は0.1mm未満(体内)と非常に短いので正常細胞への影響は少ないとされています。
上記の作用により、骨転移した去勢抵抗性前立腺癌に対して治療効果が期待できます。

治療の流れ

現在掛かられている泌尿器科主治医とご相談の上、当院泌尿器科にご紹介いただきます。 当院受診後ゾーフィゴ治療について具体的に決定します。通常、治療は4週間に1度の静脈注射を6回受けていただきます。

治療のお問い合わせ

診察、治療について…関西電力病院 泌尿器科 薬品について…放射線科 RI室

ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)について

ルタテラ:ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法剤

はじめに

神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine Neoplasm : NEN)の細胞の表面には、ソマトスタチン受容体が多く発現しています。ルタテラ®静注(177Lu-DOTATATE)は、ソマトスタチンとよく似た物質に、放射線を出す物質(177Lu : ルテチウム)を結合させたお薬です。

ルタテラを用いた治療法は、ソマトスタチン受容体が細胞内に取り込まれる性質を利用しており、ペプチド受容体放射性核種療法(Peptide Receptor Radionuclide Therapy : PRRT)と呼ばれています。

2021年6月に国内での製造販売承認を得ており、当院では2021年10月よりルタテラによるPRRTを開始しています。

効能と効果

ルタテラによるPRRTは、事前の検査(オクトレオスキャン等)で腫瘍がソマトスタチン受容体陽性であることが確認されたNEN患者さまが適応です。ルタテラはソマトスタチン受容体に結合し、腫瘍細胞内に取り込まれ、177Luから放出されるベータ線と呼ばれる放射線により、腫瘍増殖抑制作用を発揮します。

治療の流れ

現在掛かられている診療科の主治医とご相談の上、当院外科もしくは腫瘍内科にご紹介いただきます。 当院受診後ルタテラ治療について具体的に決定します。通常、治療は8週間間隔で4回受けていただきます。1回の治療につき、1泊~2泊の入院をして頂きます。

治療のお問い合わせ

診察、治療について…関西電力病院 地域医療連携室
薬品について…放射線科 RI室

  • TEL:06-6458-5821(代表)
    06-7501-1406(地域医療連携室直通)
  • FAX:06-6458-6994

核医学検査の方法と手順、注意事項について

  1. 検査するための薬(放射性医薬品)を体内に投与(注射・飲用)します。
  2. 検査開始時間は、検査の種類によって違いますので注意してください。(薬によって目的の臓器に集まるまでの時間が異なるため)また、検査によっては時間を置いて数回撮影する場合もあります。
  3. 検査の画像に影響が出る場合がありますので、検査時は衣服、身体に付いている金属を外していただきます。場合によっては検査衣に着替えていただくこともあります。
  4. 装置の寝台に仰向けに寝ていただき、担当の放射線技師が位置を決めて検査開始です。
  5. 検査中は身体を動かさないでください。検査中は近くに技師がいますので何かあれば声をかけてください。検査の所要時間は10分~1時間程度です。
  6. 検査終了後は通常の生活をしていただいて結構です。検査後は普通の生活が出来ます。

機器の紹介

当院では、シーメンスヘルスケア社製 SPECT/CT装置とGEヘルスケア・ジャパン社製 SPECT装置の2台で検査に対応しております。SPECT(スペクト)とは、Single Photon Emission CTの略で体の周りをカメラがゆっくり回転しながらガンマ線を検出する撮影方法です。この方法で撮影した画像は任意の断面で再構成することができます。そのSPECT装置とCT装置が一体となったのがSPECT/CT装置です。特長としまして、次の点があげられます。

  1. SPECT画像とCT画像の位置ずれを生じさせない新設計寝台構造
  2. 撮影時間を2分の1に抑えるための高感度検出器およびコントラスト向上ソフトウェアの搭載
  3. 心臓検査に特化した鋭角76度設定、およびコリメータ
  4. 検査中の心電波形変化を操作室でも確認できるモニタリングシステム
シーメンスヘルスケア社製 SPECT/CT装置 SymbiaT6写真
シーメンスヘルスケア社製
SPECT/CT装置
SymbiaT6
GEヘルスケア・ジャパン社製 SPECT装置 NM830
GEヘルスケア・ジャパン社製
SPECT装置
NM830

診療科紹介・部門