耳鼻咽喉科

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難聴の治療はコミュニケーションを改善します

耳鼻咽喉科部長
藤田 明彦
Akihiko Fujita
耳鼻咽喉科医長
和田 忠彦
Tadahiko Wada

耳鼻咽喉科では、どのような機能再生医療を行っているのでしょうか。

代表的なものは難聴の治療です。
難聴には伝音性難聴と感音性難聴※1があります。音の伝わりが悪くなった伝音性難聴の場合には、補聴器で音を増幅することで、聞こえの改善が得られます。しかし、鼓膜に穴があいたり、中耳に炎症が起きると、耳だれが続いて補聴器をうまく使うことができません。そのようなときは、あごを動かす側頭筋の膜を自己移植して鼓膜再生の足場をつくったり、中耳を清掃する手術を顕微鏡を用いて行います。このような手術を鼓室形成術 ( こしつけいせいじゅつ ) と呼び、当院では年間240件以上行っています。これは関西でもトップクラスの件数です。
一方、感音性難聴は音を電気信号に変えて脳に伝える「蝸牛( かぎゅう ) 」という器官の不調で起こるため、耳に入る音を増幅しても改善されません。そこで人工内耳手術を行います。これは音を電気信号に変える装置を耳の中に入れて、蝸牛の神経に直接電気信号を与えて聞こえるようにする手術です。耳の外に付ける体外装置が音を拾い、耳の中に埋め込んだ体内装置がその音を電気信号に変えて、蝸牛の神経に伝達します。多くの場合、手術時間は2時間ほどです。入院期間も2週間ほどで、退院後は週に1度のリハビリに来ていただいています。この手術を施すと、まったく聞こえなかった人が、会話ができるようになります。老人性難聴の多くはこの感音性難聴に分類されますが、お孫さんと会話がしたいという動機で人工内耳手術を受けられる患者さまもおられます。

関西電力病院の耳鼻咽喉科の特長を教えてください。

手術の実績が豊富です。特に耳の治療では、手術後の負担の少ない手術を行っています。
当科では、“外耳道や中耳の形をできるだけ保つ手術”を基本としています。鼓室形成術の際、耳の奥に大きな空洞ができてしまうと、症状は治ったけれども、耳だれが出たり、取れない場所に大量の耳垢がたまることがあります。当科で行う鼓室形成術は、顕微鏡と内視鏡の両方を駆使して、なるべく小さな傷跡で行い、自然な耳にできるだけ近い形を維持して行っています。そうすることで、手術後に水泳ができたり、耳かきで耳掃除ができたりと、生活の質を変えずに治療することができます。

※1 伝音性難聴と感音性難聴
耳で音が聞こえる仕組みは、空気の振動が鼓膜に伝わっていく過程と、鼓膜の振動を蝸牛という場所で電気信号に変えて脳に伝える過程の2つに分けられる。振動を伝える機能が損なわれて聞こえにくくなる症状を「伝音性難聴」と呼び、電気信号にうまく変えられなくなる症状を「感音性難聴」と呼ぶ。