糖尿病

主な症状

無症状のことが多いですが、のどの渇き、尿量の増加、飲水量の増加、体重の減少などを認めることも一部であります。無症状だからと言って長期間治療を受けずに放置していると徐々に合併症が出現し、様々な症状が現れます。

解説

インスリンの働きが足りず、体内のエネルギー源であるブドウ糖がうまく利用できず血糖が高くなってしまった状態です。慢性的にこのような状態が続くと、神経、目、腎臓、血管、骨、歯などに合併症が起きる可能性があり、これを予防することが治療の目的となります。

  • インスリン
    膵臓から分泌されるホルモンです。食事を食べて、血液中のブドウ糖が増加すると、膵臓から分泌されます。血液中のブドウ糖濃度を低下させる働きがあり、インスリンの働きが充分な人ではインスリンの働きにより食事を食べても血糖値は上昇しにくくなっています。
  • 血糖値
    血液中のブドウ糖の濃度です。食事を食べることで上昇し、インスリンの働きで低下します。糖尿病の人ではインスリンの働きが弱いために、食後に血糖値が上昇しやすく、慢性的に血糖値が高い状態が続くと合併症が生じるとされています。
  • HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
    1~2ヶ月程度の血糖値の状態を示す値です。高い血糖値が続いていればこの値は高い値を示します。
  • 1型糖尿病
    膵臓の一部が壊れていくことでインスリンがほとんど分泌されなくなった状態です。比較的頻度は少ないのですが子供から大人まで幅広い年齢で起こる可能性があり、若いスポーツマンでも発病することはあります。
  • 2型糖尿病
    日本人を含めアジア人は、生まれつきインスリンを分泌する力が弱いとされ、食べすぎや運動不足など悪い生活習慣が重なるとたやすく糖尿病になってしまうと言われています。日本における糖尿病の大多数は2型糖尿病とされています。

治療方法

運動と食事が全ての糖尿病治療の基本です。病状によって薬剤を追加することがあるとお考えください。どの薬剤を使用するかは膵臓の働きがどの程度残っているか、インスリンの働きがどの程度悪くなっているかで決定されます。

  • インスリン自己注射
    インスリンを皮下に注射して補充する方法です。患者様ご自身でお腹や足などに専用の注射針を用いて打ちます。糖尿病の病状によって1日に1~数回注射します。

高血圧症

主な症状

特にありません。ただし急激に進行し、かつ高度な場合には脳、腎臓、眼底などに障害がでることがあります。

解説

血圧値には二種類あり、高い方が収縮期血圧、低い方が拡張期血圧と呼ばれ、血圧値は『(収縮期血圧)/(拡張期血圧)mmHg』で表記されます。高血圧の基準は測定法により定義が異なっており(高血圧治療ガイドライン2009)、外来診察室で140/90mmHg、家庭で135/85mmHg以上を示す場合に高血圧と判定されます。ただし、白衣高血圧と呼ばれる、診察室で診察室外と比較して血圧が異常に高値を示す現象があります。高血圧症には本態性と二次性がありますが、大部分は本態性高血圧症とされています。本態性高血圧症は明らかな原因が不明の高血圧症で二次性高血圧が否定された際に診断されます。二次性高血圧は他に高血圧となる疾患がある場合で、最近では従来考えられていたよりも高頻度に存在していることがわかってきています。また、最近では夜間や早朝に血圧が高くなる病態と脳・心血管疾患との関連性が強調されるようになり、血圧値の日内変動も重要視されています。

治療方法

二次性高血圧症の場合、その原因疾患の治療が必要となり、場合によっては手術的治療となることがあります。本態性高血圧症の場合、まずは生活習慣の見直しを行います。食事においては減塩を心掛けていただき、体重の減量、節酒、禁煙や運動を積極的に行っていただき、数か月間経過をみてそれでも改善が乏しい状況であれば薬物療法を検討します。

脂質異常症

主な症状

特にありませんが、目の周囲、手のひら、アキレス腱などの黄色腫と呼ばれる皮膚所見が出現することがあります。高度の場合、急性膵炎をきたすことがあります。

解説

脂質には、LDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪の3つがあり、LDL-Cは悪玉コレステロール、HDL-Cは善玉コレステロールと呼ばれています。以前は『高脂血症』とよんでいましたが、HDL-Cの低下が動脈硬化症の危険因子になることが示されるようになり現在は脂質異常症とよんでいます。これら血清脂質3項目のうちいずれかが異常の時、脂質異常症と診断します。大きく分けて原発性(明らかな原因が不明)と続発性の二種類があります。原発性の主なものは家族性(体質・遺伝性異常など)のものでLDL-Cの上昇が問題で、冠動脈硬化を著しく進行させることが示されている。続発性の脂質異常症では、他の原因となる疾患(病気)が存在する場合に診断されます。続発性の原因として代表的なものでは糖尿病、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、ネフローゼ症候群などの腎疾患、肝疾患や薬物(ステロイドや経口避妊薬など)があります。血清脂質の基準値としては、LDL-Cが140mg/dl未満、HDL-Cは40~70mg/dl、中性脂肪は50~150mg/dlが正常値とされ、いずれかが基準値から逸脱する場合に脂質異常症と診断されます。ただし、中性脂肪については、食後に上昇してしまうことから、空腹時に施行した血液検査結果で判定することになります。

治療方法

続発性の脂質異常症の場合、その原因となる疾患の治療が必要です。脂質異常症治療の基本は生活習慣の改善、すなわち食事療法(適正なエネルギー摂取や脂肪摂取など食事内容の見直し)と運動療法(有酸素運動を習慣的に行うことが望ましい)です。薬物療法に関しては、患者さんごとに動脈硬化リスク因子を含めた評価のもと、管理目標を設定したうえで導入を検討します。血清脂質のうちどの項目の異常が強いかにより薬剤が選択されます。頻用される薬剤の副作用として有名なものに横紋筋融解症(薬剤により筋肉が崩壊する状態)があり、出現すれば薬剤変更を検討します。

肥満症

主な症状

重さによる足や腰の痛みのほかに、様々な別の病気の引きがねとなります。

解説

体重が重たいことそのものが引き起こす足や腰の痛みのほかに糖尿病、脂質異常症、高血圧などの原因となり、心臓や脳血管障害の原因となるとされています。また発癌との関連も指摘されています。肥満の原因は、大部分が悪い生活習慣、つまり食べすぎや運動不足が原因です。

  • BMI
    body mass indexのことで、身長と体重のバランスをあらわしたものです。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算され、日本では18.5~25(kg/m2)がよいバランスとされ、この値が22(kg/m2)の時を標準体重、25(kg/m2)以上で肥満となります。
  • 内臓脂肪
    内臓の周りにある脂肪です。皮膚のすぐ下にある脂肪に比べ、同じ量であっても健康に悪影響をおよぼすとされています。

治療方法

食事と運動療法が基本です。まず、栄養状態と普段の食事量を評価し、食事療法を開始し、有酸素運動を実施していただきます。他の病気(糖尿病、高脂血症、高尿酸血症など)をお持ちの方が多く、それらの改善も目的とします。大事なことは極端な行動にはしることなく、継続して自己管理する意思を持っていただくことです。

高尿酸血症(痛風)

主な症状

急性期の痛風発作のほかに、様々な病気の引きがねとなります。

解説

高尿酸血症とは血液中の尿酸値が高い状態です。ある程度は体質の問題ですが、肥満、運動不足、偏食、飲みすぎなどでも悪化します。高尿酸血症が続くと、脳や心臓の血管が傷つき、腎臓の働きも低下させるとされています。

  • 痛風発作
    慢性的な高尿酸血症により、血液中の尿酸が関節に溜まってしまったものです。足の親指の付け根に多く見られ、強い痛みと熱さを感じます。何もしなくても1週間程度で収まることが多いですが、高尿酸血症の改善を進めなければ徐々に頻繁に、広い範囲で起こるようになります。

治療方法

肥満、脱水、飲酒を避けること、有酸素運動の習慣を身につけることです。それにより尿酸を体の外に出し、体の中で生産される量を抑えていきます。食事バランスに気をつけていただくことも大事です。偏りのない食事を心がけましょう。薬剤としては尿酸が産生される量を抑える薬と、より多く尿中に排出させる薬があります。病状に応じて選択します。痛風発作が起きている時は炎症を抑える薬剤の投与を行います。

副腎疾患

主な症状

病状によって多種多様。

解説

副腎とは左右の腎臓の上に1個ずつ存在する小さな臓器ですが、体の状態を厳密にコントロールするため様々なホルモンを分泌している重要な臓器です。ここに障害が発生すると、ホルモン分泌が異常になり全身に様々な影響を及ぼすことがあります。一例ではアルドステロン分泌性の腫瘤ができる原発性アルドステロン症という病気があります。この病気ではアルドステロンが異常に、不必要に多く分泌されてしまうことで、高血圧、不整脈、筋力の低下、脱力、麻痺、多尿などの異常が全身に現れます。

治療方法

ホルモン異常は発見と診断が極めて困難です。一度の採血で異常や原因を把握するのは難しく、繰り返し採血を行うことや、CT、MRIなどの画像撮影、薬物を投与して全身の反応を調べる複雑な検査を実施して診断がつき、治療方針を決定することができます。それぞれの状態によって手術や薬物の内服をおこないます。

甲状腺機能低下症
(特に慢性甲状腺炎(橋本病))

主な症状

全身倦怠感(体がだるい、しんどい)、易疲労感(疲れやすい)、体重増加、むくみ(特に目の周囲や下肢など)、便秘、脱毛など。慢性甲状腺炎では自覚症状がないことも多く、甲状腺腫大(甲状腺が大きくはれる)のみの場合もあれば、肩こり、頭痛、めまい、ほてりなどの不定愁訴がでることもあります。

解説

まず甲状腺とは、首の前方下部の皮下に気管を全面から囲むように存在し、人体に必須のホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌している臓器です。甲状腺機能低下症には原発性と中枢性(脳の一部に原因がある場合)がありますが、ほとんどは原発性(明らかな原因が不明)で、その中でも慢性甲状腺炎(橋本病)が大部分を占めています。女性に圧倒的に多く、40-50歳代に多い傾向がみられます。触診で甲状腺腫の有無を、血液検査で甲状腺機能の状態や抗体の有無を確認し、超音波やCTなどの画像検査などを行い診断されます。場合によって、直接針を刺すなどして、甲状腺組織を採取する細胞診や生検を行うことがあります。原発性と中枢性で診断し難い場合には負荷試験を行うこともあります。

治療方法

慢性甲状腺炎の治療は、甲状腺機能の状態により変わります。機能が正常の場合、治療は必要ありません。機能低下がある場合には原則として、甲状腺ホルモン薬を服用してもらいます。内服を全ての方が永続的に続けることはなく、治療経過によっては不必要となることもあります。

甲状腺機能亢進症
(特にバセドウ病)

主な症状

頻脈、発汗過多(異常に汗が多い)、暑がり、体重減少、手の振るえ、排便回数の増加、甲状腺腫大(甲状腺が大きくはれる)。眼球突出や眼裂の開大(通常より目玉が飛び出しそうに大きく見える)、複視、視力低下、眼球運動障害などがでることもあります。甲状腺機能が極端に増悪した(ひどくなる)場合、高熱、頻脈、発汗過多、下痢、精神不安などが出現し、生命に関わることもあります。

解説

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の機能が必要以上に増強している病態です。なかでもその大部分を占めるのがバセドウ病です。甲状腺のある一部に対する抗体(自己抗体)が刺激作用を示し発病しますが、その発症機序は不明です。女性に多く、20-40歳代に多い傾向がみられます。触診により甲状腺腫の有無を確認し、血液検査で甲状腺機能の上昇や抗体の有無を確認し診断します。バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症は比較的稀ですが、一過性(短期間のうちに症状が軽快する)のものや腫瘍性病変の場合もあり注意が必要です。

治療方法

抗甲状腺薬の内服、放射線治療、手術から選択することとなりますが、一般的には抗甲状腺薬の内服となることが多いです。ただし、これら3つ全てに言えることですが、それぞれに長所・短所があります。抗甲状腺薬については、他2つと比較してすぐに開始できますが重篤な副作用が出現することがあり、出現した際には内服の中止や内服薬の変更が必要となります。重篤な副作用の代表として、無顆粒球症(白血球の著明な減少)、重度の肝障害、MPO-ANCA関連血管炎(全身性の血管の炎症性疾患)などがあります。放射線治療は、甲状腺腫が縮小したり、比較的副作用が少ない傾向がありますが、将来的に甲状腺機能低下症をきたすことがあります。また、施行できる施設がかげられています(当院では施行可能です)。手術治療に関しては、短期間で改善しうるわけですが、術後の再発や甲状腺機能低下症をきたすこともあります。

骨粗鬆症

主な症状

腰背部痛や、身長の低下がみられることがありますが、自覚症状はほとんどありません。転倒した際に骨折しやすくなります(腰背部痛、身長の低下は骨折の結果であることが多い)。

解説

骨密度が低下し、骨が脆く(もろく)なり、骨折しやすくなっている状態です。原発性(明らかな原因が不明)と続発性(他に原因があり起こる場合)があり、圧倒的に原発性が多く、その大半が閉経後の女性です。続発性の原因として代表的なものに甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患や糖尿病などがあります。大半が閉経後の女性であることに女性ホルモンの関与がいわれており、50歳頃から急激に骨量が減少してくることがわかっています。さらに、高齢になると骨の代謝として形成より吸収の勢いが強くなるために骨量はより減少することがいわれています。腰椎におけるレントゲンでの吸収度により骨密度の低下があれば診断されます。補助診断として、血液検査で骨代謝のマーカーを確認します。

治療方法

続発性の場合、原因となる疾患の治療が必要です。原発性の場合、食事療法、運動療法、薬物療法の3つが重要です。食事療法では、カルシウムを多く含む食品として乳製品や豆類、緑黄色野菜、小魚・海藻などの摂取を促し、ビタミンDやビタミンK、マグネシウムを多く含む食品の摂取や日光浴をすすめます。逆に、リンを多く含むインスタント食品や清涼飲料水の摂取や塩分の過剰摂取は控えるようにしてもらいます。運動療法は骨量や筋肉の維持に有用といわれています。予防には、比較的負荷のかかる運動がよいとされています。すでに骨粗鬆症と診断されている場合には歩行やストレッチなどがすすめられます。ただし、運動療法を行う際において転倒しないよう注意する必要があります。薬物療法として、薬剤は数種類ありますが、個々の患者さんに応じて適した薬剤が選択されます。