手根管症候群

主な症状

母指から環指のしびれ、つまむ力の低下

解説

手関節の手のひら側で、正中神経が圧迫されて生じます。母指~環指の半分にしびれが生じ、夜間痛が生じる場合もあります。重症化すると、母指球筋というつまみ動作に必要な母指の根元の筋肉が麻痺します。麻痺が進行すると、回復が非常に難しいため、それまでに手術を行うべきと考えます。母指と小指の指腹部(指紋のあるところ)の間で写真のようにくっつけることが出来なければ麻痺が進行している可能性があります。 小指の第2関節をまっすぐ伸ばした状態で、母指と小指の指腹部をくっつけることが出来れば良いのですが(図1)、指先しか届かない(図2)、あるいは全く届かない(図3)ようであれば正中神経の麻痺が既に生じている可能性があります。

手根管症候群
図1 母指と小指の指腹部をくっつけることができる正常例
図2 指先のみ接触している状態
図2 指先のみ接触している状態
図3 全く接触できない状態
図3 全く接触できない状態

治療方法

診察と神経伝導速度を測定し、治療方針を決めます。軽度であれば投薬、注射が著効しますが、中程度以上では手術をお勧めします。当科では、局所麻酔で、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術を行っています。

肘部管症候群

主な症状

薬指や小指のしびれ、握力やつまむ力の低下

解説

肘の内側で尺骨神経が圧迫されて発症し、薬指の一部と小指にしびれが出現します。病状が進行すると、指先でつまむことや、指の間を開くこと(パーの形)や閉じることが難しくなり、日常生活でかなり支障が生じます。

肘部管症候群

麻痺が進行した右手は、指の間を閉じることができません。

治療方法

診察と神経伝導速度を測定し、治療方針を決めます。軽度であれば経過観察となることも多いですが、日常生活に支障が出るようであれば手術をお勧めします。手術は、肘内側で、尺骨神経を内側上顆という骨隆起の後ろから前へと移動する神経移行術を行っています。

橈骨神経麻痺

主な症状

手指や手関節を自力で伸ばすことができません(下垂手と呼びます)。

橈骨神経麻痺

解説

上腕後方を走行する橈骨神経が、硬い物などで長時間圧迫されて損傷し、発症することが多いです。母指や示指、手背の親指側にしびれが生じることもあります。多くは、数ヶ月以内に自然回復します。

治療方法

半年以上自然回復が見られない場合、神経剥離術あるいは、腱移行術などの機能再建術を行います。

胸郭出口症候群

解説

上肢へと走行する血管や神経が、鎖骨と第1肋骨の間やその周囲で、骨や筋腱などにより圧迫されて起こります。重度になると、血流障害による脱力感や、神経障害による小指などのしびれ感、握力低下などが見られます。確定診断は、様々な検査の結果を組み合わせて慎重に行います。

治療方法

当科では、確定診断がついた重症例に対し、顕微鏡を用いた第1肋骨切除術を主に行っています。

重度の神経麻痺に対する機能再建

解説

神経障害は、早期にその原因を除去することで、麻痺した筋肉の回復が期待できます。しかし、何らかの理由により治療が遅れた場合、あるいは外傷などにより神経が断裂した場合には、回復が思わしくないことがあります。そのような状態に対し、残存する筋肉や腱を用いて、麻痺した機能を再建することができる場合があります。

舟状骨骨折、偽関節

解説

転倒して手をついた時などに生じる手首の小さな骨の骨折です。骨折とは気付かずに放置され、後に骨折だったと判明することもあります。

治療方法

当科では、骨折や偽関節の状態に応じて、保存的治療、特殊な螺子を用いた固定術、骨移植を併用した偽関節手術などを行っています。経皮的偽関節手術は当科オリジナルの方法で、対象は限定されますが機能的、整容的にもよい結果が得られています。偽関節の状態によっては、近傍から血管の付いた骨を移植する方法を選択することがあります。

舟状骨骨折、偽関節
経皮的偽関節手術の術前、術後

橈骨遠位端骨折、尺骨茎状突起骨折

解説

転倒して手をついた時に生じることの多い手首の骨折です。レントゲンやCTで確定診断し、治療方針を決定します。

治療方法

ズレが少ない場合にはギプス固定を行います。ズレが大きい場合、ズレが少なくても早期に動かす必要がある場合には手術を選択します。手術は骨折形状にもよりますが、橈骨遠位端骨折にはプレート固定を、尺骨茎状突起骨折は鋼線を用いた固定を行います。術後は、リハビリテーションを行います。

尺骨突き上げ症候群
橈骨遠位端骨折と尺骨茎状突起骨折の術前後レントゲン

手指の骨折、指関節内の骨折

解説

母指は3個の骨、示中環小指はそれぞれ4個の骨から構成され、指の繊細な動きに寄与しています。手指や指関節内の骨折は、骨折の部位や折れ方によって治療法が異なり、放置すると疼痛や変形が残存し、日常生活で支障が生じることがあります。

治療方法

骨折部を固定すると骨癒合は得られますが、長期間固定すると手指の関節が硬くなりすぎてしまい、リハビリをしても回復が難しくなります。そのため、手指の骨折では完全に骨癒合する前から指を動かす練習をしていきます。その練習に耐えられるような治療法として、テーピングやギプス固定による保存的治療、鋼線やプレート、あるいは創外固定といった器機を用いた手術を骨折型に応じて選択しています。

骨折変形治癒

解説

橈骨遠位端骨折後の変形治癒では、手関節の疼痛が継続し、動きが制限されることがあります。また、指骨骨折後の変形治癒では、隣の指と重なって指がうまく曲げられなくなることがあります。骨折の重症度や、骨折をしてからの期間にも左右されますが、骨変形を治すことにより動きや疼痛が改善することがあります。当科では、CT画像などから詳細な3次元シミュレーションを行い、骨切り矯正手術を行っています。

TFCC損傷

主な症状

手関節痛

解説

外傷や手関節の使いすぎ、年齢的な変化により、手関節の回旋(ねじる動作)で手関節の小指側の痛みが生じる状態です。自分で腕をねじる時に音を感じる人もいます。手関節の小指側にある三角線維軟骨複合体(TFCC)が損傷して起こります。

治療方法

受傷後間もない場合は、ギプス固定や装具による安静加療を行います。数ヶ月保存的治療を行っても疼痛が継続し、日常生活で支障のある場合には手術を検討します。当科では関節鏡視下にTFCCを縫合しています。術後は上腕から手までギプス固定を3週間行い、その後リハビリを開始します。

尺骨突き上げ症候群

主な症状

手関節痛(小指側)

解説

手をついたり、ドアノブを回す、タオル絞り等の動作で疼痛が生じます。骨折などの外傷を契機に発症する場合と、誘因なく徐々に疼痛を自覚する場合があります。2本ある前腕骨のうち、橈骨(母指側)より尺骨(小指側)の方が長いために、尺骨と月状骨が衝突することが原因です。

治療方法

保存的治療が無効な場合には、尺骨を数ミリ短縮する手術を行います。

橈骨遠位端骨折、尺骨茎状突起骨折
尺骨突き上げ症候群

MRIで、尺骨頭の衝突する月状骨の一部に輝度変化が見られます。

キーンベック病

主な症状

手関節痛

解説

未だ原因は明らかとはなっていませんが、手関節の中央に位置する月状骨が血流障害を生じて圧潰する疾患です。レントゲンやMRIで病気の段階を決定します。

治療方法

病気の段階により治療法が異なります。早期では、保存的治療で経過観察することもありますが、橈骨が尺骨に比べて長い場合は橈骨短縮骨切り術を行います。また、月状骨の血流が悪い場合には血管柄付き骨移植術を、月状骨の圧潰が進行した時期には月状骨の摘出術や手根骨間固定術などを組み合わせた手術を行います。

母指CM関節症

主な症状

母指の根元の手関節に近い部分の関節(CM関節)の疼痛です。

解説

CM関節が亜脱臼し、関節面の軟骨がすり減り、手の使用後に痛むようになります。負担を減らし、外用薬や装具装着などの保存的治療を行っても日常生活に支障がある場合は手術を行います。

治療方法

当科で施行している関節形成術は、まず、大菱形骨(CM関節の下側)の傷んだ関節面を直径2ミリの関節鏡下に一部切除します。その後、第1中手骨の亜脱臼を整復するため、第1中手骨と第2中手骨間を溶けない糸で締結しています。ただし、男性で力仕事を行うことが多い方には、関節固定術を勧めることがあります。

母指CM関節症
関節形成術の術前、術後

ヘバーデン結節、ブシャール結節

解説

ヘバーデン結節はいわゆる指の第1関節、ブシャール結節は第2関節に生じた変形性関節症です。現時点では、確実に効果が得られる薬物療法はありません。

治療方法

日常生活で支障のある方に対し当科では、ヘバーデン結節には状態に応じて骨棘切除術や関節固定術を、ブシャール結節には滑膜切除術や人工指関節置換術(シリコン製)を行っています。

ヘバーデン結節と関節固定術後のレントゲン

関節リウマチによる機能障害

解説

投薬治療の著しい進歩により、関節リウマチによる関節痛や機能障害は以前と比較して減少していますが、手術を必要とする状態は現在も存在します。

治療方法

関節の破壊が軽度の場合には、関節内の滑膜切除術を行いますが、関節破壊が重度の場合には人工関節置換術や関節固定術などを行っています。股関節や膝関節以外にも手指や手、肘、肩、足関節など様々な関節の人工関節があります。
また、手指を伸ばすことができない場合には、残存する筋腱を用いて再建する方法(腱移行術)などを行います。

関節リウマチによる機能障害
指の第2関節や手関節の人工関節置換術後レントゲン

伸筋腱皮下断裂

主な症状

手指を伸ばすことができない。

解説

最初は小指から始まります。多くは、痛みを伴いません。進行すると、小指だけでなく、環指や中指、示指まで伸ばせなくなることがあります。関節リウマチや変形性手関節症が原因で生じます。

治療方法

保存的治療は無効なため、再建手術が必要です。残存する隣の腱を用いた腱移行術や腱移植術を行います。再断裂を防ぐため、同時に手関節に対する手術も行います。

伸筋腱皮下断裂
指の第2関節や手関節の人工関節置換術後レントゲン

薬指、小指を伸ばすことができません。

腱鞘炎

主な症状

指の付け根の疼痛、指を曲げて伸ばそうとすると引っかかる。

解説

指の付け根には、指を曲げる屈筋腱が通過する腱鞘と呼ばれるトンネルがあります。長時間強く握る、指を酷使するなどで腱鞘に負担がかかりすぎると、炎症を生じて疼痛のため指の曲げ伸ばしがしづらくなります。この炎症が長引くと、腱鞘や屈筋腱が肥厚し、指を曲げると引っかかって自分で伸ばせない状態(ばね指現象)となることもあります。糖尿病などの基礎疾患やホルモンバランスの状態によっては、酷使しなくても発症することがあります。

治療方法

安静や注射などにより改善しない場合、手術を行います。指の付け根にある腱鞘を切開し、屈筋腱の通過障害を解消させます。通常、局所麻酔、日帰り手術で行います。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、内側上顆炎(ゴルフ肘)

主な症状

肘の外側痛、内側痛

解説

手を使った作業後に、肘外側の痛み(テニス肘)や肘内側の痛み(ゴルフ肘)が生じることがあります。必ずしもスポーツと関係するわけではなく、日常生活やパソコン作業でも生じることがあります。

治療方法

数ヶ月以上の投薬や安静で改善せず、MRI検査で異常所見がある場合には手術を勧めることがあります。手術は傷んだ組織の切除術を行いますが、必要に応じて肘関節内の内視鏡手術や、尺骨神経に対する手術を組み合わせることがあります。

デュプイトラン拘縮

主な症状

手掌から指にかけて、小さいこぶができ、徐々に範囲が拡大します。ひどくなると、皮膚の下に腱が浮き上がっているように見え、指を伸ばしにくくなってきます。

解説

詳細は不明ですが、皮膚の下にある手掌腱膜の異常が主な原因です。環指や小指に生じることが多く、高齢男性、糖尿病患者に多く見られます。

治療方法

指が伸ばせなくなり、日常生活に支障を来すようになると手術が必要です。当科では、異常な腱膜の全切除を行っています。術前の指の状態によっては、腱膜切除後に皮膚を閉じることができるように皮膚の移動(局所皮弁術)を必要とする場合があります。

デュプイトラン拘縮
デュプイトラン拘縮

左薬指のスジが浮き上がっているように見えます。

軟部腫瘍、骨腫瘍

解説

骨に発生する腫瘍を骨腫瘍、その他の脂肪や神経、筋肉などの骨以外の組織にできる腫瘍を軟部腫瘍と呼びます。そのほとんどは良性ですが、悪性腫瘍もあります。当科では、MRIなどの検査の上、良性腫瘍と診断した場合には切除術を施行していますが、悪性腫瘍を強く疑う場合は骨・軟部腫瘍医のいる専門病院へ紹介しています。

治療方法

神経系の軟部腫瘍では、神経鞘腫が最も多く、腫瘍周囲の被膜を通過する神経線維を傷つけないように顕微鏡下に腫瘍切除、あるいは腫瘍核出を行います。