前立腺癌
主な症状
PSA異常値、排尿障害、頻尿
解説
前立腺癌はわが国でも罹患率が年々上昇しており、日本人男性の癌死の最上位を占めています。一方、前立腺特異抗原(PSA)という腫瘍マーカーの出現で、早期発見が可能であり、治療の多様化が進んでいます。
治療方法
早期癌の場合、患者さんの状況に応じて、手術療法、前立腺癌小線源治療(ブラキセラピー)、放射線療法、ホルモン療法など複数の選択肢があります。
手術療法に関しまして当院では、手術創が比較的小さく術後回復の早い、ロボット支援下前立腺全摘除術を施行しております。術後、最も問題となるのは尿失禁ですが、手術法の改善で改良されています。また、神経温存手術により、術後の勃起機能の温存も可能となっています。(詳しくはロボット支援下前立腺全摘除術についてを参照してください)。
前立腺癌小線源治療は体の負担が少なく、入院期間も5日間程度で施行します。(詳しくはブラキセラピーについてを参照してください)。
一方進行癌の場合でも前立腺癌はホルモン治療がかなり有効で、長期間癌をおさえることができるとされています。前立腺癌の悪性度が高く、転移箇所が多いなどの状態があれば、化学療法に内服ホルモン治療を加えたtriplet治療を行うことがあります。前立腺癌にはそのほかにも年々新しい治療法が導入されています。常に最良の方法を相談の上、提供します。
膀胱癌
主な症状
肉眼的血尿、尿潜血
解説
痛みなどを伴わない、肉眼的血尿がある場合に、超音波や膀胱内視鏡で膀胱内側に発生した腫瘍として診断されます。喫煙と強い因果関係があり、受動喫煙も含めて、タバコに長期間暴露されていると発生リスクは高くなります。
膀胱内にとどまっているものを表在性膀胱腫瘍(いわゆる"初期癌")といい、膀胱壁に浸潤し膀胱外に達しようとする段階であれば浸潤性膀胱腫瘍といい、治療法が異なってきます。さらに進行しますと肺や肝臓に転移を起こすことがあります。膀胱癌は転移を起こすとなかなか根治は難しくなります。ほかの症状の乏しい肉眼的血尿がでれば早めの泌尿器科受診をお勧めします。
治療方法
表在性膀胱腫瘍は内視鏡手術を行っています。再発してくる場合、抗がん剤やBCGの膀胱注入療法等も含め、丁寧なフォローアップをおこなっています。
浸潤性膀胱腫瘍では、膀胱全摘術と尿路変向術が必要ですが、ケースによっては尿道から排尿できる自然排尿型尿路変向術を行っています。当科では1991年よりハウトマン氏法による手術、2024年からはロボット支援膀胱全摘除術を行っており、良好な成績を得ています。
腎細胞癌
主な症状
無症状のことがおおい、肉眼的血尿
解説
前立腺癌と同様に腎細胞癌の罹患率も年々上昇しており、なかでも無症状で人間ドックなどの健診で発見される早期癌が急速に増加してきています。強いストレスが原因のひとつとされていますが、わかっていないことも多くあります。
治療方法
当科では1991年よりハウトマン氏法による手術、2024年からはロボット支援膀胱全摘除術を行っており、良好な成績を得ています。進行性腎癌に対しては手術に加え、ニボルマブ・アベルマブ・ペンブロリズマブといった免疫check point阻害薬、アキシチニブ・カボザンチニブといった内服のチロシンキナーゼ阻害薬の単独または組み合わせ治療をおこないます。年々治療法は多様化しています。常に最新のエビデンス(根拠)に基づいた選択肢を提供します。
前立腺肥大症
主な症状
排尿障害、頻尿
解説
前立腺は男性の膀胱の出口にあるくるみ大の組織で、尿は膀胱から出た後前立腺を通ってでます。前立腺が年齢とともに腫大し、尿が出にくい・頻尿になるといった症状をおこすことを総称して前立腺肥大症といいます。前立腺肥大症は前立腺の大きさも重要な要素ですが、大きい人が必ず出にくくなるわけではなく、膀胱機能など複数の要因が関与しています。
治療方法
薬物療法、経尿道的内視鏡手術(電気切除術)、経尿道的レーザー核出術、開腹手術の中から希望を考慮したうえで、最適な方法を選択して治療を行っています。経尿道的内視鏡手術では生理食塩水で還流しつつ手術する方法を採用しており、従来法で危惧されていた手術の合併症である「水中毒」のリスクを大幅に改善しました。
尿路結石症
主な症状
背部痛、血尿
解説
本来尿に溶けている成分が水分不足などで尿中に析出・結晶化したものが尿路結石です。尿路結石は、“痛み”のイメージが強く、強い痛みがない場合には、ついつい放置してしまうことがありますが注意が必要です。尿路結石の痛みは、結石が尿の流れがせき止める時に起きますが、これは腎盂内圧の急激な上昇によると考えられています。しかし、ある程度内圧が上昇すると、尿の産生が低下し、腎盂、尿管が拡張した状態で落ち着き、強い痛みはなくなります。
そのまま何カ月、何年か経つうちに、腎実質が薄くなり機能が低下することがあるからです。
何か月、何年と動かない尿路結石は“嵌頓結石”と呼ばれ、周囲の尿管がむくみ、結石と癒着している状態となり、結石を砕くことや、取り除くことが困難となります。
尿管結石は自排すれば、症状が霧消するという特徴があります。しかし結石サイズが自力排出困難と考えられれば、積極的治療を行います。
尿路結石は生活習慣病の予兆という意見もあり、食事の不摂生・運動不足など一般に生活習慣病の原因とされることも遠因となるようです。
治療方法
関西でもいち早く、1987年に経尿道的尿路結石砕石術(TUL)、体外衝撃波による結石破砕術(ESWL)を導入して以来、3000例以上の治療実績があります。症例によっては栄養士による食事指導等も行っております。
通常小さな結石は自然に排石することが多い一方、自然排石が難しい結石は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的尿路結石砕石術(TUL)などの手術が施行されます。
大きな腎結石であれば経皮的腎砕石術(PNL)が施行されます。
しかし嵌頓結石の場合、これらの治療では対処が難しい症例が存在します。
そのような症例ではTULとPNLを同時に行う手術を選択することがあります。
この手術を“経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS)”と言います。
間質性膀胱炎
主な症状
蓄尿時痛、頻尿
解説
なかなか治らない膀胱痛、特に尿が溜まった時に痛くなるのは「間質性膀胱炎」という病態かもしれません。アレルギーが関与していると考えられていますが、詳しい病態はいまだわかっていません。しかし、きちんと検査・評価することで、治療可能な場合も多い疾患です。
治療方法
間質性膀胱炎が疑われた場合、膀胱を生理食塩水で人工的に満たして、膀胱内の表面を観察し、点状出血や潰瘍形成など特徴的な所見の有無を確認します。そのとき膀胱内を一定水圧で膨らませることで同時に治療も行います。これを水圧拡張といいます。水圧拡張術で症状は緩解することが期待できますが、効果は一時的であることがおおく、複数回水圧拡張術を施行する場合もあります。また内服治療も同時に行います。
腹圧性尿失禁
主な症状
せきやくしゃみなど、お腹に力が入った時に尿が漏れる
解説
年齢とともに尿を我慢する筋肉がゆるみお腹に力が入った時に、意識せずにもれてしまう状態です。
治療方法
内服・体操指導を行ないます。
手術は、尿道をテープでつり上げるTVT(ティーヴィティー)手術を行なっています。
骨盤臓器脱
主な症状
膣からボール状のものが脱出してくる(下垂感)、会陰部が不快、尿や便がでにくい
解説
子宮を支えている筋や膜が年齢とともに弛緩し、子宮が膣から下りてくる状態につられて膀胱や直腸も膣から脱出する状態です。子宮をとる手術を過去に行った場合にも起こりえます。内服や体操では効果が期待できず、物理的に子宮・膀胱を戻す治療を行います。この疾患はまれなものではなくむしろ相当数の方がお悩みであることがわかってきました。症状の幅は、軽いものもありますが、下垂感などで日常生活に支障をきたす可能性がある場合は治療をお勧めします。
治療方法
婦人科でリングやペッサリーを留置していただく場合や、手術療法としてはロボット支援下仙骨膣固定術が主流です。症例によっては膣のほうからメッシュをいれてハンモックのように膀胱を吊り上げる手術を行います。仙骨膣固定術は当院では行っておりません。
男子性機能障害
主な症状
勃起不全(ED)
解説
生活習慣病や年齢に伴っておこります。
治療方法
バイアグラなどの内服による治療を行います。自費診療となります。
小児泌尿器科疾患
主な症状
包茎、亀頭包皮炎、停留精巣、尿道下裂
解説
当院の小児科廃止に伴って、当院では小児泌尿器科一般の診療をおこなっておりません。