片頭痛

主な症状

拍動性の頭痛

解説

頭の片側または両側におこる拍動性の頭痛で、若い女性に多くみられます。頭痛のおこる前に、きらきらした光る点や線が見えたり、しびれなどの異常感覚が前兆として出現することがあります。

治療方法

軽度~中等度の頭痛には非ステロイド系消炎鎮痛薬を、中等度~重度の頭痛にはトリプタン系薬剤を使用します。発作予防にはカルシウム拮抗薬、バルプロ酸などを使用します。

脳梗塞

主な症状

片側の手足の脱力・しびれ、めまい、ろれつが回らない、言葉が出にくい、ものが二重に見えるなど

解説

脳を栄養する血管が詰まり、脳の細胞が障害される病気です。障害される部位・大きさにより、症状やその程度が異なります。治療を可能な限り早く開始する必要があるため、脳梗塞が疑われる場合にはすぐに医療機関を受診してください。脳梗塞は以下の3つのタイプに分けられます。

ラクナ梗塞

心臓から出た血管は脳にはいると太い血管から細い血管へと枝分かれしていきます。この細い血管が狭くなって詰まるのがラクナ梗塞です。最も多いタイプで、高血圧のある人におこります。

アテローム血栓性脳梗塞

動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症、進展させる高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病が主な原因です。

心原性脳塞栓

心臓にできた血栓が血流にのって、脳まで運ばれて、脳の太い血管に詰まることによっておこります。多くは不整脈(特に心房細動)が原因です。

治療方法

超急性期(発症4.5時間以内)にはtPAの点滴による血栓溶解療法が可能です。それ以降は抗血小板薬や抗凝固薬、脳保護薬の点滴を行います。また、リハビリテーションも早期から開始します。慢性期には、再発予防のための抗血小板薬や抗凝固薬などの内服治療とあわせて、食事・禁煙・運動などの日常生活管理も重要です。

アルツハイマー病

主な症状

年齢不相応の物忘れ(人や物の名前が出てこない、何度も同じことを聞く、大切なものをよくなくす、約束を忘れる、新しいことが覚えられない)や、思考力・判断力の低下など

解説

認知症の原因で一番多い病気です。物忘れに加えて徘徊や暴言・暴力、幻覚・妄想などがあらわれ日常生活に支障を来たします。

治療方法

アルツハイマー病そのものを治す薬はまだありませんが、症状の進行を一定期間遅らせることのできる薬があります。

パーキンソン病

主な症状

動作が遅い、手足のふるえ、歩きにくいなど

解説

ドパミンという神経伝達物質を作る脳の黒質が変性し、ドーパミンが少なくなることで症状が出現します。初期は片側だけに症状がみられることが多いですが、次第に両側にみられるようになります。睡眠障害(不眠、眠気)、精神症状(抑うつ、せん妄)、自律神経症状(便秘、起立性低血圧)が出現することもあります。

治療方法

ドパミンの働きを補う薬物を投与することで症状の改善を図ります。現在多数の薬剤が使用でき、それらをうまく組み合わせて症状をコントロールします。リハビリテーションも並行して行います。

てんかん

主な症状

けいれん、意識消失など

解説

脳の神経細胞が異常興奮することで症状が出現します。興奮する部位や程度により、多彩な症状が出現します。

治療方法

発作の型に応じて最も適した抗てんかん薬で治療を行います。睡眠不足やホルモンバランスにも影響されるため生活指導もあわせて行います。

重症筋無力症

主な症状

筋肉を繰り返して収縮させるとだんだんと力が入りにくくなります(易疲労性)。安静にしていると筋力が回復します。初期には眼の筋肉に症状が出やすく、まぶたが下がったり、ものが二重に見えたりします。症状がひどくなると、手足の筋力が低下したり、顔や舌、咽頭(のど)の筋力も低下することがあります。

解説

末梢神経と筋肉のつなぎめ(神経筋接合部)では、脳の命令によって神経側からアセチルコリンという物質が放出されます。アセチルコリンの筋肉側の受け皿(アセチルコリン受容体)が免疫の異常によってつくられた自己抗体で障害され症状があらわれます。眼の症状だけの場合は眼筋型、眼以外にも症状があるものを全身型とよんでいます。

治療方法

  1. 抗コリンエステラーゼ剤
    アセチルコリンの分解を抑え、神経筋接合部でのアセチルコリンを増やすことにより症状が改善されます。
  2. 胸腺摘出術
    免疫異常の場が胸腺に存在すると推定されており、胸腺を外科的に摘出することにより、症状の改善が期待できます。
  3. 副腎皮質ホルモン療法
    免疫異常を伴う各種の病気に対して広く使われる薬です。初期に大量投与を行うと一過性に症状が悪化することがあるため、徐々に増量する必要があります。
  4. 血漿交換療法
    重症筋無力症の原因である自己抗体を除去する目的で行います。
  5. 免疫グロブリン大量療法
    免疫グロブリンというヒトの血液由来の蛋白を5日間連続して静脈内に点滴する方法です。血漿交換療法と同等の効果があるとされてます。

ギラン・バレー症候群

主な症状

手足の筋力低下や感覚障害(しびれ、感覚鈍麻)が数日から数週間のうちに急速に進行します。重症化すれば呼吸筋麻痺にいたります。

解説

末梢神経系に炎症が生じ、髄鞘とよばれる神経線維を取り囲む組織が破壊されることによっておこる病気です。髄鞘が破壊されることを脱髄と呼びます。ギランバレー症候群は末梢神経の代表的脱髄疾患です。症状が出現する数日~数週間前に呼吸器系や消化器系の感染症が多くの例でみられます。

治療方法

  1. 免疫グロブリン大量療法
    病気の原因として免疫異常が想定される病気に行われる治療法です。免疫グロブリンというヒトの血液由来の蛋白を5日間連日で点滴で投与します。
  2. 血漿交換療法
    血液中に含まれる病気の原因物質を除去し、血液を健常状態に保つ治療法です。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

主な症状

手足の筋力低下、感覚障害(しびれ、痛み、鈍麻など)が進行性に、または繰り返し出現します。

解説

ギラン・バレー症候群と同様に末梢神経の脱髄によりおこる病気です。CIDPは急性に発症するときもありますが、2ヶ月以上にわたり緩徐に進行する型(慢性進行型)、再発を繰り返す型(再発寛解型)があります。

治療方法

  1. 副腎皮質ホルモン療法
    免疫異常を伴う各種の病気に対して広く行われている治療です。一般に経口で投与しますが、症状が重いとき、急激な発症時には大量に点滴(ステロイドパルス療法)を行います。
  2. 免疫グロブリン大量療法
    病気の原因として免疫異常が想定される場合に行われる治療法です。免疫グロブリンというヒトの血液由来の蛋白を5日間連日して点滴で投与します。
  3. 血漿交換療法
    血液中に含まれる病気の原因物質を除去し、血液を健常状態に保つ治療法です。
  4. 免疫抑制剤
    病気の原因である自己抗体の産生を抑えるための治療法です。他の治療法では効果がない場合に行われます。

多発性硬化症

主な症状

視力の低下、物が二重にみえる、手足の筋力低下・しびれ、ろれつが回らないなど、病変の部位によって症状は多彩です。

解説

中枢神経系の脱髄疾患の一つです。神経線維は絶縁体の働きをする髄鞘で覆われています。髄鞘が破壊されること(脱髄と言います)で症状が出現します。多発性硬化症では、脱髄が繰り返しいろいろな場所でおこることによって多彩な症状が出現し、また、再発を繰り返すのが特徴です。

治療方法

急性期には副腎皮質ホルモンの大量を点滴します(ステロイドパルス療法)。再発予防として、インターフェロンの自己注射が有効です。

脳炎・髄膜炎

主な症状

発熱、頭痛、意識障害、けいれん

解説

通常はウイルスや細菌の感染によっておこります、脳に炎症がおこれば脳炎、脳を取り囲む髄膜に炎症がおこれば髄膜炎といいます。脳脊髄液検査を行い迅速に診断し治療することが重要です。

治療方法

原因となる病原体に応じた抗生物質や、抗ウイルス薬を投与します。

睡眠時無呼吸症候群

主な症状

いびき、無呼吸、熟眠感がない、昼間の眠気

解説

中年の太っている男性に多い病気ですが、扁桃腺が大きい、あごが小さい方は、やせていても起こることがあります。眠りに入ると筋肉がゆるみ、舌がのどの奥に落ち込むことによって無呼吸が頻回に繰り返されることを特徴としています。こういった呼吸停止のイベントが一晩に何回起こるかによって、予備軍の方から重症の方までさまざまなレベルがあり、重症の場合は、心臓や血管に負担をかけ、高血圧や狭心症、心筋梗塞、脳卒中の危険因子になることがわかっています。

治療方法

ナルコレプシー

主な症状

耐え難い眠気、常識では考えられない状況での居眠り、情動脱力発作(カタプレキシー)

解説

常識では眠らないような状態(試験中、商談中、食事中、1対1での会話中)に眠ってしまうという強い眠気を特徴とします。また、笑ったり、うれしくなったり、怒ったり、得意になったり、皆で盛り上ったりして興奮するような状況で突然、身体のどこかの力が抜けてしまうという症状(情動脱力発作、カタプレキシーとも言う)を経験したことがあれば、症状からでも診断がつきます。しかし、情動脱力発作が明らかでない場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)睡眠潜時反復測定検査(MSLT)とを行って、客観的な眠気の程度と、眠りについてすぐにレム睡眠に入るかどうかを確認しなければ診断がつきません。

治療方法

  1. 生活習慣の改善
    睡眠時間を十分に取り、昼寝をうまく利用する。
  2. 薬物療法
    医師の指導のもと、安全な目覚まし薬を使います。

レム睡眠行動異常症

主な症状

睡眠中の夢内容と一致した動きや寝言。睡眠中に行動してしまい、けがをすることもある。

解説

睡眠中に寝ぼけたような行動が起こるのですが、そのときに夢を見ていることが多く、夢の内容と同じように動いたり、話したり、叫んだりします。行動や寝言は、夢の内容と一致していることが多く、動きが激しい場合には、ご本人や横で眠っている人がけがをする危険性があります。パーキンソン病や認知症といった他の脳神経内科の病気の前触れの症状であることが多いため、睡眠検査だけではなく、他の脳神経内科の検査も行うことが重要です。

治療方法

  1. 生活習慣の改善
    アルコールを控え、規則正しく睡眠を取る、夜に怖いテレビ番組を見ない、ストレスを避ける。
  2. 薬物療法
    行動や寝言はお薬でコントロールできますが、症状がなくなっても、他の病気の兆候が出てこないかどうか、定期的にチェックしていくことが重要です。

下肢静止不能症候群
(レストレスレッグズ症候群、むずむず脚症候群)

主な症状

夜間、じっとしたときに下肢に不快な感覚が生じ、動かさずにはいられない状態になる。就床時に起こると入眠が妨げられる。

解説

主に夕方から夜にかけて、じっとしているときに下肢に不快な感覚が起こり、強い不眠を引き起こします。加えて、下肢を動かしたり、マッサージしたり、叩いたりすると不快な感覚が軽くなるという特徴があります。お昼間に活動しているときにはほとんど起こりません。鉄欠乏の方に起こりやすい病気です。末梢神経の病気との鑑別が必要なため、睡眠検査だけではなく、他の脳神経内科の検査も行うことが必要です。

治療方法

  1. 生活習慣の改善
    カフェインの入った飲み物やアルコールを控える、適度に運動する、マッサージ就寝時にストレッチをする。
  2. 種々の物品の使用
    足枕を使う、マッサージ器の利用、冷やすための市販の貼付シートを貼る。
  3. 薬物療法
    鉄の補充。症状が頻回で不眠が強い場合は、ドパミンと同様の働きがあるお薬を使います。