白内障
主な症状
視力低下、霧視(かすんでみえること)
解説
白内障は、加齢や糖尿病などのために眼の中の水晶体(カメラで例えるとレンズ)が濁り、そのために光が眼の中に入りにくく、視力の低下や霧視が起こります。放置すると症状が進み、日常生活に支障をきたします。
治療方法
手術により濁った水晶体を取り除き、眼内レンズに置き換えます。当院では、3mm以下の小さな切開で、超音波を使用した侵襲の少ない手術を行っています。
後発白内障
主な症状
視力低下、霧視(かすんでみえること)
解説
後発白内障とは、白内障の手術後に、眼内レンズを入れている袋(水晶体嚢)が濁ってくる病気です。これにより、かすんでみえたり、視力が低下することがあります。
治療方法
レーザーを用いて、濁った水晶体嚢を切除、切開します。
緑内障
主な症状
初期では、ほとんど自覚症状はありません。
病気がかなり進行してから、見える範囲が狭くなり、視力が低下します。
ただし、急性の緑内障では急激に眼圧が上昇し、眼の痛み・頭痛・吐き気などの激しい症状をおこす場合があります。
解説
緑内障とは、何らかの原因で視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなってしまう病気です。眼圧の上昇がその原因の一つと言われています。しかし、一般的に緑内障では、自覚症状がほとんどなく、知らない間に病気が進行していることが多くあります。
緑内障は、原因別に3つに分けられます。
- 原発緑内障は、閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障に分けられます。
- 続発緑内障は、外傷、角膜の病気、網膜剥離、眼の炎症など、他の眼の疾患による眼圧上昇や、ステロイドホルモン剤などの薬剤による眼圧上昇によっておこる緑内障です。
- 発達緑内障は、うまれつき隅角(虹彩の付け根の構造)の発育異常により生じる緑内障です。
治療方法
緑内障の種類によって治療が異なります。
開放隅角緑内障
まず点眼薬にて眼圧を下げる治療をします。点眼や内服にても眼圧がコントロールできない場合には、レーザーや手術が必要になります。
閉塞隅角緑内障
まず原因を取り除くためのレーザーや手術が必要です。
急性緑内障発作の場合には、点滴などで眼圧を下げてから、レーザや手術を行います。
続発緑内障
原因疾患の治療と、点眼、内服にて眼圧を下げる治療をします。眼圧コントロールができない場合には、手術が必要になる場合があります。
網膜剥離
主な症状
飛蚊症(黒いごみのようなものが飛んで見える)、光視症(ピカピカした光が見える)、視野欠損、視力低下など。
解説
網膜剥離とは、網膜が網膜色素上皮(もうまくしきそじょうひ)から分離し、網膜の下に水がたまる病気です。眼球の中を充たす細い線維でできたゲル状の透明な組織(柔らかなゼラチン状の硝子体)は、眼球の形を保ち光を通す役目をもちます。硝子体は、老化や強度近視で液化したり縮んだりした結果、網膜から剥がれます(後部硝子体剥離)。その時に、飛蚊(ひぶん)症を自覚することが多いのですが、硝子体と網膜の癒着が強いと眼球の動きで網膜が引っぱられ、かぎ裂き状の孔(あな)があくことがあります。その裂孔から液化硝子体が網膜下に入りこんで、裂孔原性網膜剥離が起こり、障害を受けた神経網膜の範囲に応じて視野と視力が失われていきます。放置して全剥離になると失明につながります。ボールが目に当たるなどの外傷にも多くみられます。
裂孔を伴わない網膜剥離には、滲出性網膜剥離と牽引性網膜剥離があります。滲出性網膜剥離は、ぶどう膜炎や眼内腫瘍(しゅよう)、中心性漿液性脈絡網膜症などにみられる型で、網膜血管や脈絡膜血管から網膜色素 上皮細胞層のバリア機能が壊れたために、滲み出した液が神経網膜との間にたまって起きます。牽引性網膜剥離は、糖尿病性網膜症や網膜静脈閉塞症などでみられる型で、網膜上や硝子体中に出血を繰り返してできた新生血管の線維や膜が収縮して、網膜を引っぱるために起きます。
治療方法
手術
- 強膜内陥術
- 硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)
網膜円孔、網膜裂孔
主な症状
飛蚊症(黒いごみのようなものが飛んで見える)
解説
多くは、近視や加齢による変化が原因となって、網膜に円孔(穴)や裂孔(裂け目)が発生します。その際、飛蚊症を自覚することがあります。この状態を放置すると網膜剥離が生じ、視力低下をきたす可能性が高くなります。
治療方法
網膜剥離の予防のためにレーザー治療が必要になります。
網膜静脈閉塞症
主な症状
痛みを伴わない視力低下、変視症(ゆがんでみえる)
解説
眼底出血を起こす疾患の代表。網膜の動脈が閉塞する網膜動脈閉塞症に比して頻度がはるかに高い。網膜の太い静脈が閉塞する網膜中心静脈閉塞症と、静脈の一部の枝が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症がある。蛍光眼底造影検査(蛍光眼底造影検査を受けられる方へ)が必要。網膜黄斑部の浮腫が持続して視力回復がない場合には積極的治療が必要となる。また静脈の閉塞に伴い、網膜に血流のない部分(無還流領域)が広くみられる場合にはレーザー治療が必要となることもある。
治療方法
- 網膜の浮腫(黄斑浮腫)に対して、トリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射(黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射を受けられる方へ [PDF 177KB])、内服治療、抗VEGF療法、網膜光凝固術、硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)
- 網膜の血流がない部分(無灌流領域)に対して、網膜光凝固術。
- 硝子体出血に対して硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)。
糖尿病網膜症
主な症状
初期には無症状、進行して黄斑浮腫が出現すれば視力低下・変視症
解説
一定程度以上の糖尿病が長期間(概ね10年以上)存在した場合発症する可能性が高くなる疾患。網膜の毛細血管異常により微小血管瘤が生じる。また微小循環障害により小出血や無還流領域が出現する。進行すれば、硝子体出血が生じる。さらに進行すれば増殖糖尿網膜症となる。一旦発症すれば軽快・治癒は困難であるため、糖尿病の治療を行い、良い血糖コントロールを得ることが何より重要。
治療方法
- 黄斑浮腫(黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射を受けられる方へ)に対しては、グリッド光凝固術、トリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射(黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射を受けられる方へ)。
- 前増殖網膜症に対しては汎網膜光凝固術。
- 増殖網膜症に対しては汎網膜光凝固術および硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)。
加齢黄斑変性
主な症状
視力低下、初期には変視症・中心暗点
解説
50歳以上の人に生じる原因不明の黄斑部変性。新生血管を認めない萎縮型加齢黄斑変性と、新生血管を認める滲出型加齢黄斑変性とがある。日本人には後者が多い。新生血管は脈絡膜もしくは網膜の一部から生じるもので、治療により退縮させ得る場合もあるが、いかなる治療にも反応しない場合がある。
治療方法
滲出型加齢黄斑変性に対しては抗VEGF療法(ルセンティス硝子体注射)(加齢黄斑変性に対するルセンティス硝子体注射を受けられる方へ)あるいはPDT(光線力学的療法)(光線力学的療法(PDT)を受けられる方へ)を行う。抗VEGF療法はあくまで対症療法であり、繰り返しの反復投与が必要となる場合も多い。
黄斑円孔
主な症状
視力低下、変視症、中心暗点
解説
網膜の黄斑部に小さな円孔を生じる疾患。原因不明の特発性のものが多いが続発性のものもある。正視眼、やや遠視眼に多いが、強度の近視眼に発症することもある。強度の近視眼に発症した場合は網膜剥離の合併率が高く、治癒が難しい場合もある。硝子体の牽引が関与しており、症状が強い場合は手術適応となる。
治療方法
硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)。内境界膜剥離術とガスタンポナーデ。術後には腹臥位(うつぶせ安静)をとる。
黄斑硝子体牽引症候群
主な症状
視力低下、変視症
解説
前述の黄斑円孔と同様に黄斑部に前方への牽引がかかるが、円孔は生じることなく、黄斑浮腫や黄斑分離を生じる疾患。光干渉断層計(OCT)によって容易に診断可能となった。
治療方法
硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)
黄斑上膜
主な症状
変視症、視力低下
解説
種々の疾患に続発して、網膜と硝子体の境界部に膜状物が形成されたもの。
膜の収縮によって網膜のひだや牽引性網膜剥離が生じ、変視症や視力低下をきたす。症状が強ければ手術を行うが、それほど強くない場合は経過観察のみとすることもある。
治療方法
硝子体手術(硝子体手術を受けられる方へ)。