白内障

主な症状

視力低下、霧視(かすんでみえること)

解説

白内障は、加齢や糖尿病などのために眼の中の水晶体(カメラで例えるとレンズ)が濁り、そのために光が眼の中に入りにくく、視力の低下や霧視が起こります。放置すると症状が進み、日常生活に支障をきたします。

治療方法

手術により濁った水晶体を取り除き、眼内レンズに置き換えます。当院では2.4mm以下の小さな切開で、超音波を使用した侵襲の少ない手術を行っています。また、当院では入院手術の他に、日帰り手術にも対応しています。

後発白内障

主な症状

視力低下、霧視(かすんでみえること)

解説

後発白内障とは、白内障の手術後に、眼内レンズを入れている袋(水晶体嚢)が濁ってくる病気です。これにより、かすんで見えたり、視力が低下することがあります。

治療方法

YAGレーザーを用いて、濁った水晶体嚢を切除、切開します。

緑内障

主な症状

初期のうちはほとんど自覚症状がありません。病気がかなり進行してから、見える範囲が狭くなり(視野障害)、視力が低下します。一方で、急性緑内障発作といわれる状態では急激に眼圧が上昇し、視力低下・充血・眼痛・頭痛・吐き気などの激しい症状と、急速な視野障害の進行や失明の可能性があります。

解説

緑内障とは視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなってしまう病気です。一度障害されてしまった視野は基本的には再生することはないので、視野が障害される前に早期の治療介入が必要です。そこで緑内障の早期発見のために、定期的な検診が必要となります。 視神経の障害の原因の一例としては眼圧(眼のかたさ)の上昇があげられます。眼の中を満たしている水(房水)の産生と排出のバランスで眼圧が左右されるので、点眼や手術などで眼内の房水の量を減らして眼圧を下げ、現状以上に視神経の障害と、それによる視野障害が進行するのを予防します。

緑内障は、原因別に大きく3つに分けられます。

  • 原発緑内障 

    緑内障のうち、特に原因疾患のないものです。閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障の2つに分けられます。

         
  • 続発緑内障 

    外傷、角膜の病気、網膜剥離、眼の炎症など、他の眼の疾患による眼圧上昇や、ステロイド剤などの薬剤による眼圧上昇によっておこる緑内障です。

         
  • 発達緑内障 

    うまれつき隅角(虹彩の付け根の構造)の発育異常により生じる緑内障です。

病型ごとの治療

緑内障の種類によって治療が異なります。

 開放隅角緑内障

まず点眼薬にて眼圧を下げる治療をします。点眼や内服でも眼圧がコントロールできない場合には、レーザーや手術が必要になります。

 閉塞隅角緑内障

まず原因である隅角の閉塞を取り除くためのレーザーや手術を行います。急性緑内障発作の場合には、点滴などで眼圧を下げてから、レーザーや手術を行います。

 続発緑内障

原因疾患の治療と、点眼、内服にて眼圧を下げる治療をします。眼圧コントロールができない場合には、手術が必要になる場合があります。

上記とは別に、急性緑内障発作は症状が急速に進行するため、緊急な処置を要する場合があります。症状がある場合は、速やかに眼科や救急科へとご相談ください。

治療方法

 レーザー加療
  • レーザー虹彩切開術(LI)

    レーザーで虹彩に穴をあけることによって、ふさがれた房水の流れ道を開通させ、眼圧を下げる効果があります。

  • 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT、MLT)

    特殊なレーザー(YAGレーザーやマイクロパルスレーザー)を線維柱帯(房水の排水にあたる部分)に照射し、房水の排出をスムーズにすることで、眼圧を下げる効果があります。

 手術加療
  • 線維柱帯切開術(トラベクロトミー)

    眼内に器具を差し入れて線維柱帯(房水の排水にあたる部分)を切開する手術です。房水の排出をスムーズにすることで、眼圧を下げる効果があります。血液の眼内への逆流により一時的に視力低下や眼圧上昇がみられますが、経時的に減少して改善する場合がほとんどです。白内障の手術と併せて行うこともあります。

  • 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)

    結膜下に濾過胞と呼ばれる房水たまりを作成し、眼内の房水を眼外(濾過胞)へ流すバイパスを作成する手術です。バイパスにより眼内の房水量が減少するため、眼圧を下げる効果があります。当院ではインプラント(エクスプレス、プリザーフロ マイクロシャント)を用いた低侵襲な手術にも対応しています。

網膜剥離

主な症状

飛蚊症(黒いごみのようなものが飛んで見える)、光視症(ピカピカした光が見える)、視野欠損、視力低下など

解説

網膜剥離とは、網膜が網膜色素上皮(もうまくしきそじょうひ)から分離し、網膜の下に水がたまる病気です。眼球の中を充たす硝子体(細い線維でできたゲル状の透明な柔らかなゼラチン状の組織)は、眼球の形を保ち光を通す役目をもちます。硝子体は、老化や強度近視で液化したり縮んだりした結果、網膜から剥がれます(後部硝子体剥離)。その時に、飛蚊(ひぶん)症を自覚することが多いのですが、硝子体と網膜の癒着が強いと眼球の動きで網膜が引っぱられて裂け、かぎ裂き状の孔(あな)があくことがあります。その裂孔から液化した硝子体が網膜下に入りこんで、裂孔原性網膜剥離が起こり、障害を受けた神経網膜の範囲に応じて視野と視力が失われていきます。放置して全剥離になると失明につながります。ボールが目に当たるなどの外傷にも多くみられます。

裂孔を伴わない網膜剥離には、漿液性網膜剥離と牽引性網膜剥離があります。漿液性網膜剥離は、ぶどう膜炎や眼内腫瘍(しゅよう)、加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症などにみられる型で、網膜血管や脈絡膜血管から網膜色素 上皮細胞層のバリア機能が壊れたために、滲み出した液が神経網膜との間にたまって起きます。牽引性網膜剥離は、糖尿病性網膜症や網膜静脈閉塞症などでみられる型で、網膜上や硝子体中に出血を繰り返してできた新生血管の線維や膜が収縮して、網膜を引っぱるために起きます。

治療方法

漿液性網膜剥離と裂孔原性網膜剥離・牽引性網膜剥離では加療方法が大きく異なります。 漿液性網膜剥離では抗VEGF薬などの硝子体注射やステロイドのテノン嚢下注射にて、裂孔原性網膜剥離・牽引性網膜剥離では手術にて治療を行います。

 手術加療
  • 硝子体手術(+白内障手術)

    眼内に器具を差し入れて行う手術です。当該術後に白内障が進行することに加え、術中の視認性を向上させ手術を安全に行うために、白内障の手術を同時に行うことが多いです。眼内の硝子体を吸引し眼内灌流液(BSS)に置き換えます。網膜下に貯留した液を吸引した後に、眼内の水を抜き気体(空気もしくはSF6ガス)もしくはシリコンオイルで満たします。これにより表面張力によって剥離した網膜が壁面に押し付けられ、網膜が復位します。その後再剥離を防ぐため、原因裂孔などにレーザーを照射することもあります。術後は数日~10日程度、うつむきでの生活になります。

  • 強膜内陥術(バックリング手術)

    眼外から網膜剥離を治療する手術です。白内障手術を行うには早い若年の患者様に対してこの術式を選択することが多いです。眼外から網膜剥離の裏に向けてメスで切開し、網膜下に貯留した液を排出していきます。その後、網膜剥離のある範囲にシリコン製のバンドを眼に巻き付けるように固定し、強膜(白眼の部分。眼の外壁をなす組織。)を内側へ凹ませることで、剥離した網膜と壁面を接着させます。

網膜円孔、網膜裂孔

主な症状

飛蚊症(黒いごみのようなものが飛んで見える)、光視症(ピカピカした光が見える)

解説

多くは、近視や加齢による変化が原因となって、網膜に円孔(穴)や裂孔(裂け目)が発生します。その際、飛蚊症を自覚することがあります。この状態を放置すると網膜剥離が生じ、視力低下をきたす可能性が高くなります。

治療方法

網膜剥離の予防のためにレーザー治療が必要になります。レーザーを照射した所は癒着を起こすので、網膜剥離を起こしにくくなります。

網膜静脈閉塞症

主な症状

痛みを伴わない視力低下、変視症(ゆがんでみえる)

解説

眼底出血を起こす疾患の1つで、網膜の動脈が閉塞する網膜動脈閉塞症に比して頻度がはるかに高いです。網膜の太い静脈が閉塞する網膜中心静脈閉塞症と、静脈の一部の枝が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症があります。血流の評価のために蛍光眼底造影検査が必要となります。網膜黄斑部の浮腫が持続して視力回復がない場合には積極的治療が必要となる場合があります。また静脈の閉塞に伴い、網膜に血流のない部分(無灌流領域)が広くみられる場合にはレーザー治療が必要となることもあります。

糖尿病網膜症

主な症状

初期には無症状、進行して黄斑浮腫が出現すれば視力低下や変視症(ゆがんでみえる)

解説

一定程度以上の糖尿病が長期間(概ね10年以上)存在した場合発症する可能性が高くなる疾患です。網膜の毛細血管異常により微小血管瘤が生じます。また微小循環障害により小出血や無灌流領域が出現し、進行すれば硝子体出血が生じます。さらに進行すれば増殖糖尿網膜症となり、牽引性網膜剥離を合併することもあります。一旦発症すれば完治は困難であるため、糖尿病の治療を行い、良い血糖コントロールを持続させることが重要です

加齢黄斑変性

主な症状

視力低下、初期には変視症(ゆがんでみえる)や中心暗点(視界の中心が暗く見える)

解説

主に50歳以上の人に生じる黄斑部(網膜の中心部分)の網膜細胞組織の変性(状態の変化)による疾患です。新生血管(新たに発生した細くてもろい血管)を認めない萎縮型加齢黄斑変性と、新生血管を認める滲出型加齢黄斑変性とがあり、日本人は後者のタイプが多く見られます。新生血管からの滲出(水分の漏れ)によって漿液性網膜剥離や黄斑浮腫が発生し、視力低下や変視症などの原因となります。新生血管は脈絡膜もしくは網膜の一部から生じるもので、治療により退縮させ得る場合もありますが、いかなる治療にも反応しない場合もあります。

治療方法

  • 滲出型加齢黄斑変性に対して、抗VEGF療法(硝子体注射)

    抗VEGF療法は対症療法であり、再燃の場合は繰り返しの投与が必要となる場合も多い

黄斑円孔

主な症状

視力低下、変視症(ゆがんでみえる)、中心暗点(視界の中心が暗く見える)

解説

網膜の黄斑部に小さな円孔を生じる疾患で、原因不明の特発性のものが多いが、特定の疾患によって引き起こされる続発性のものもあります。強度の近視眼に発症した場合は網膜剥離の合併率が高く、治癒が難しい場合もあります。硝子体が網膜を引っ張る力(牽引)が関与しており、症状が強い場合は手術適応となります。

治療方法

  • 硝子体手術(+白内障手術)

    眼内に器具を差し入れて行う手術です。当該術後に白内障が進行することに加え、術中の視認性を向上させ手術を安全に行うために、白内障の手術を同時に行うことが多いです。眼内の硝子体を吸引し眼内灌流液(BSS)に置き換えます。網膜に柔軟性を持たせて円孔が閉鎖しやすくするため、網膜の内境界膜(ILM)を色素で染色したのちに鑷子で剥離します。その後、眼内の水を抜き気体(空気もしくはSF6ガス)で満たします。これにより表面張力によって網膜が壁面に押し付けられ、円孔が閉鎖します。術後は数日~10日程度、うつむきでの生活になります。

黄斑硝子体牽引症候群

主な症状

視力低下、変視症(ゆがんでみえる)

解説

前述の黄斑円孔と同様、黄斑部網膜に前方へ引っ張る力(牽引)がかかって網膜が変形しているものの、黄斑円孔は生じることなく、網膜組織の変形や網膜浮腫、網膜分離を生じる疾患です。光干渉断層計(OCT)の発達によって容易に診断可能となりました。

治療方法

  • 硝子体手術(+白内障手術)

    眼内に器具を差し入れて行う手術です。当該術後に白内障が進行することに加え、術中の視認性を向上させ手術を安全に行うために、白内障の手術を同時に行うことが多いです。眼内の硝子体を吸引し眼内灌流液(BSS)に置き換えます。網膜に柔軟性を持たせて円孔が閉鎖しやすくするため、網膜の内境界膜(ILM)を色素で染色したのちに鑷子で剥離します。

黄斑上膜

主な症状

視力低下、変視症(ゆがんでみえる)、大視症(左右でものの大きさが違ってみえる)

解説

網膜の中央部(黄斑)は視界の中でも中心部分を担っているため、視機能において重要な働きを持っています。その上に薄い膜が張り、その膜の収縮によって網膜にひだ(皺襞)や牽引性網膜剥離が生じ、視力低下や変視症、大視症を来します。症状が強ければ手術を行いますが、症状が強くない場合は加療せず経過観察のみとすることもあります。原因なく発生する特発性のものの他に、特定の疾患によって引き起こされる続発性(二次性)のものもあります。

治療方法

  • 硝子体手術(+白内障手術)

    眼内に器具を差し入れて行う手術です。当該術後に白内障が進行することに加え、術中の視認性を向上させ手術を安全に行うために、白内障の手術を同時に行うことが多いです。眼内の硝子体を吸引し眼内灌流液(BSS)に置き換えます。網膜に柔軟性を持たせて変形した網膜が元の形に戻りやすくするため、発生した黄斑上膜とともに、網膜の内境界膜(ILM)を色素で染色したのちに鑷子で剥離します。