循環器内科の主な疾患と
治療方法
狭心症
主な症状
胸の締め付け感、圧迫感などが労作により一時的に悪化します。
解説
心筋に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が狭くなり、心筋が血流不足になることにより、胸の症状が出現します。多くは動脈硬化が原因ですが、血管の痙攣が原因の場合もあります。症状が不安定な場合は、心筋梗塞に移行することもあり、早急な診断、治療開始が必要です。
治療方法
動脈硬化が原因の場合、まず薬物療法を開始し、改善なければカテーテル治療やバイパス術を考慮します。痙攣が原因の場合は血管拡張薬を中心とした薬物療法が第一選択となります。
急性心筋梗塞
主な症状
胸の締め付け感、圧迫感などが労作に関わらず、15分以上持続します。
解説
心筋に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が閉塞し、心筋が血流不足になることにより、心筋が壊死します。多くは血管の動脈硬化が原因ですが、血管の解離が原因の場合もあります。命にかかわる病気であり、一刻も早い診断、治療開始が必要です。
治療方法
薬剤療法に加え、カテーテル治療が中心となります。当院では24時間対応しております。
下肢閉塞性動脈硬化症
主な症状
冷感・しびれ感、間欠性跛行(歩行でふくらはぎが痛くなり休むと治まる)、進行すると安静時疼痛、潰瘍・壊死
解説
足の血管の動脈硬化により血管が狭くなったり、詰まったりする病気です。足への血流が悪くなることで酸素や栄養が十分送られなくなり、足の様々な症状、障害を引き起こします。進行すると足を切断しなければならない場合もあります。足関節上腕血圧比(ABI)、下肢動脈エコー検査、下肢動脈造影CT検査、下肢MRI検査、カテーテル検査等で診断します。
治療方法
まずは歩くこと、運動療法が重要です。薬物治療も併用します。それらでも症状が改善しない場合や重症の下肢血流障害に対しては血行再建を行います。狭窄や閉塞した部位をバルーンで拡張する治療や血管の拡張を維持するステントを留置するカテーテル治療を行っています。カテーテル治療とバイパス手術などの外科手術を組み合わせたハイブリッド治療も行っています。潰瘍や壊死がある場合は、皮膚科や形成外科で創部の処置が必要になります。
僧帽弁閉鎖不全症
主な症状
労作時息切れ、動悸、咳など
解説
左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉じなくなり、左心房から左心室に血液が逆流する病気です。さまざまな原因があります。弁の変性や、弁を支える糸のような構造物が切れて完全に閉じなくなったりします。中には心臓が拡大するのに伴い弁の可動性が低下して、しまりが悪くなることがあります。重症になると左心房にも左心室にも負担がかかり、心不全をおこします。心臓の負担から不整脈を生じることがあります。症状がなくても心臓の機能低下が進行することがあり、中等度以上では定期的な検査が必要です。主に心エコー検査で診断します。
治療方法
逆流が中等度以下で症状がない場合は定期的に経過をみますが、重症になると逆流を止める手術を考慮します。 手術法としては、自分の弁を修理する弁形成術と、人工弁を使う弁置換術があります。どちらの術式が良いかは、心臓を詳細に確認できる経食道心エコー検査をして判断します。
大動脈弁閉鎖不全症
主な症状
労作時息切れ、易疲労感、動悸など
解説
大動脈弁が正常に閉じないために、心臓から大動脈へ駆出される血液が、左心室へ逆流している状態です。さまざまな原因がありますが、血液の逆流によって心臓に負担がかかります。 持続期間と重症度によりますが、心臓の拡大が進行し、心機能の低下をきたすことがあります。 症状が出ない場合もあり、心拡大などをきっかけとして、診断されることがあります。 心エコー図検査等で診断します。
治療方法
軽度から中等度の大動脈弁閉鎖不全症では、血圧が高い場合は降圧剤、むくみやうっ血などがあれば利尿剤などで、心臓の負担を軽減する内科的治療を行います。しかし、弁の閉鎖不全を治す薬物治療はなく、加齢とともに進行してしまう場合もあります。定期的に心エコー図検査を行い、進行がないか確認します。高度の大動脈弁閉鎖不全症では症状がある場合、無症状であっても心臓の拡大や収縮力低下の程度により外科治療(大動脈弁置換術・形成術)がすすめられます。また中等度の大動脈弁閉鎖不全症でもほかの弁膜症や上行大動脈疾患の手術を行う場合は、同時に大動脈弁の手術をすすめられることがあります。
心筋症
主な症状
労作時息切れ、胸痛、動悸など
解説
心臓の筋肉(心筋)が何らかの理由で分厚くなったり、薄くなって内腔が拡大したりする病気です。適切な治療をしないと心不全をおこしたり、致死性不整脈をおこして、突然死することがあります。さまざまな原因があり、原因に応じて適切な治療をする必要があります。心エコー図や心臓MRI検査等で診断します。
治療方法
薬物治療が中心になります。心筋が肥大する肥大型心筋症では、脈をゆっくりにするβ遮断薬を中心に治療します。心不全を合併した拡張型心筋症では心機能を改善する心保護薬を中心として治療します。特殊な原因でおきる心筋症を二次性心筋症といいますが、その中の心アミロイドーシスではアミロイド蛋白が心筋にたまるのを防ぐ特殊な治療薬で治療します。最新の治療薬によりこれらの疾患はよく治るようになってきました。
心房細動
主な症状
動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、胸部圧迫感
解説
心房細動は心房が細かく震え、規則的に動けなくなる不整脈です。そのため、心房内に血の固まり(血栓)が出来やすくなり、脳梗塞を発症することがあります。また、心房に負担がかかることで心不全を発症することもあります。
治療方法
脳梗塞の発症予防のために抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を内服し、心房内に血栓ができるのを防ぎます。薬物療法により心拍数を調整する方法があります。また、心房のリズムを正常に戻す方法としては電気的除細動やカテーテル治療(アブレーション)があります。
期外収縮
主な症状
動悸、脈の不整、胸部不快感
解説
期外収縮とは、心房性と心室性があり、どちらも正常な脈より早いタイミングで発生する脈のことです。健康な方でもよくみられ、ストレス、カフェイン、アルコールなどがきっかけになることがあります。症状が強い場合や頻度が多い場合には治療の対象となります。
治療方法
生活習慣の見直しで改善することもありますが、心疾患や甲状腺異常が背景にある場合、背景疾患に対して治療が必要です。薬物療法で期外収縮を抑える方法もあります。頻度が多い場合や症状が強い場合には、カテーテル治療(アブレーション)で治療することもできます。
心膜炎
主な症状
胸痛や発熱、呼吸困難など
解説
心膜炎は心臓を包む膜(心膜)に炎症が起こる病気です。ウイルス感染、自己免疫疾患、心筋梗塞後などが原因となります。胸の中央あたりの強い痛みが特徴で、呼吸や体の向きを変えると痛みが増すことがあります。放置すると心臓の動きに影響を与えることもあります。
治療方法
心膜炎の治療は原因や重症度に応じて行われます。ウイルス性の場合は安静や痛み止め、抗炎症薬などによる治療が基本です。細菌感染が原因なら抗生物質を使用します。再発を防ぐためステロイドを使用することもあり、重症例では入院での治療が必要です。また、炎症により心膜に液体(心膜液)が溜まることがあり、心膜液により心臓の働きが妨げられる場合には、針を刺して液を抜く処置(心膜穿刺)が必要となることがあります。
深部静脈血栓症・肺塞栓症
主な症状
下腿浮腫、労作時息切れや胸痛など
解説
深部静脈血栓症はおもに下肢の静脈に血の固まり(血栓)ができる病気で、ふくらはぎや太ももの痛み・腫れ・色の変化を引き起こします。できた血栓が血流にのって肺へ運ばれ、肺動脈を詰まらせると、息切れや胸の痛みを生じることがあり、これを肺塞栓症と呼びます。周術期、長期の安静・臥床、悪性腫瘍など、原因はさまざまです。「エコノミークラス症候群」としても知られています。診断には超音波検査(エコー)や造影CTを用います
治療方法
治療には、DOACと呼ばれる経口の抗凝固薬を使用することが多く、血栓が縮小する効果が期待できます。 血栓が消失した後も、再発予防のために一定期間の内服継続が必要です。また、血栓ができた原因がある場合は、その原因を取り除く・避けることも重要です。血栓の大きさや状態によっては、下大静脈フィルターの留置や血栓吸引デバイスによる治療が行われることもあります。
肺高血圧症
主な症状
労作時息切れ、足や全身のむくみ、動悸、失神、血痰など
解説
心臓から肺に血液を送る血管である肺動脈の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の血圧が高くなる病気です。早期発見が難しく、比較的若い人にも発症します。有効な治療法があまりなく治療が困難でしたが、近年はいくつかの治療薬の開発により、治療成績が大幅に向上しています。心エコー図や心臓カテーテル検査等で診断します。
治療方法
肺高血圧症の原因に応じて異なりますが、肺高血圧症を起こす疾患がない場合は肺動脈を広げる肺血管拡張薬を中心に使用します。肺血管拡張薬には、作用の仕方の違いから、①プロスタサイクリン製剤、②エンドセリン受容体拮抗薬、③ホスホジエステラーゼ-5型阻害薬と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、の3種類に大きく分類されます。これらの薬剤を併用することで病態の進行が抑えられるようになりました。これらの薬剤と併せて酸素療法や利尿剤を使用します。病状が進行する場合には肺移植を行います。
大動脈瘤・大動脈解離
主な症状
大動脈瘤:大半が無症状である。 胸部大動脈瘤の場合は、嚥下痛、嚥下困難、嗄声など 腹部大動脈瘤の場合は、腹部拍動感や腹痛など 大動脈解離:突然の胸背部痛、失神など
解説
大動脈の壁が限局的に拡大または突出している状態を大動脈瘤といい、大動脈内側の壁が裂けている状態を大動脈解離と言います。前者は大きさや形によっては破裂するリスクがあるため、侵襲的治療を考慮する必要があります。後者は、急速に発症したなかで発症部位によっては突然死を来たす可能性があることから緊急手術が必要となる場合もあります。
治療方法
生命の危険性がある場合や今後状態増悪の可能性が高い場合等は、侵襲的な治療が必要となります。治療内容としては開胸手術や開腹手術を含む外科的手術を行う場合とカテーテル的手術(ステントグラフト挿入術)を行う場合があります。術後は降圧治療を中心とした内科的治療を行います。手術が必要ない場合は、内科的治療を中心に保存的加療を継続します。


