リウマチ・膠原病内科の主な疾患と
治療方法
関節リウマチ
主な症状
関節の痛み・腫れ、手足のこわばり、咳、息苦しさ
解説
関節リウマチは、免疫の働きが異常をきたし、自分の関節を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。関節の内側にある「滑膜(かつまく)」に炎症が起こり、その炎症が長く続くことで、軟骨や骨が傷つき、関節の変形につながります。
発症の原因は完全にはわかっていませんが、遺伝的な要因、ホルモン、喫煙、歯周病など複数の要因が関係していると考えられています。女性に多く、30〜50代で発症する方が比較的多いですが、どの年代でも起こりえます。
近年は治療法が大きく進歩しており、早期に適切な治療を始めることで、関節の破壊を抑え、日常生活をほとんど支障なく過ごせる方が増えています。
治療方法
1. 薬物療法
・抗リウマチ薬(DMARDs):メトトレキサートなどが代表的で、病気の進行を抑える基本の薬です。
・生物学的製剤・JAK阻害薬:免疫の働きを細かく調整して炎症を抑えるタイプの薬で、効果が高いとされています。従来の抗リウマチ薬で十分な効果が出ない場合に使用されます。
2. リハビリテーション
関節の動きを保つための運動療法や、関節に負担をかけない動作指導などを行います。
3. 手術治療
薬物療法で十分に改善が得られない場合や、関節に強い破壊がある場合に、人工関節置換術などの手術を検討することがあります。
リウマチ性多発筋痛症
主な症状
肩・首・腰回りの強い痛み、筋肉痛、体重減少、だるさ、疲れやすさ
解説
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、主に50歳以上の方に発症する炎症性の疾患で、高齢者に多く見られます。筋肉そのものに異常があるのではなく、筋肉の周囲の組織や関節に炎症が生じることで、強い痛みやこわばりが出ると考えられています。
一部の患者さんでは「巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)」という血管の炎症を伴う病気を合併することがあり、視力障害などの危険もあるため注意が必要です。
PMRは生活の質を大きく下げる病気ですが、適切な治療を行えば多くの方が良い経過をたどり、日常生活を取り戻すことができます。
治療方法
ステロイド(副腎皮質ホルモン)療法が基本です。少量のステロイド(プレドニゾロン)が治療の中心で、多くの患者さんで数日以内に症状が大きく改善します。症状が落ち着いたら、医師の指示のもと、ゆっくり時間をかけて減量していきます。
脊椎関節炎
主な症状
腰痛、関節の痛み・腫れ、アキレス腱・踵・足の裏の痛み、目の充血や痛み、まぶしさ、視力低下、腹痛、血便、下痢
解説
脊椎関節炎は、背骨(脊椎)や骨盤の関節、腱や靭帯が骨に付着する部分に炎症が起こる病気の総称です。脊椎関節炎には、「強直性脊椎炎」、乾癬という皮疹に関連する「関節症性乾癬」、「クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に関連する関節炎」、「ぶどう膜炎に関連する関節炎」、消化管や尿路の感染症に関連する「反応性関節炎」などが含まれます。
この病気の特徴として、
・腰やお尻の痛みが慢性的に続く
・安静にしていると痛いが、運動により改善する
・若い世代(10〜40代)に発症することがある
といった点があります。
原因は完全には分かっていませんが、免疫の異常や遺伝(特にHLA-B27という遺伝子)が関係していると考えられています。炎症が長く続くと、背骨が硬くなり、前かがみ姿勢が強くなることがあります。しかし、早期に診断して治療を開始すれば、進行を抑え、生活の質を大きく向上させることが可能です。
治療方法
1. 薬物療法
・消炎鎮痛薬(NSAIDs):痛みと炎症を抑えるための基本治療で、多くの患者さんで症状の改善がみられます。
・生物学的製剤:炎症を引き起こす物質(TNF、IL-17など)を標的とする薬で、症状や病気の進行をしっかり抑える効果があります。NSAIDsで十分な改善が得られない場合に使用されます。
・免疫調整薬(DMARDs):末梢の関節(膝や手足)が腫れるタイプに使用することがあります。背骨の炎症にはあまり効果がありません。
2. リハビリテーション
ストレッチや姿勢訓練などにより、背骨が硬くなるのを防ぐための適切な運動が重要です。
3. 生活の工夫
長時間同じ姿勢を避け、散歩、ストレッチ、スイミングなどの適度な運動を習慣化します。喫煙は症状を悪化させることがあるため、禁煙が推奨されます。
全身性エリテマトーデス
主な症状
顔の皮疹、脱毛、口内炎、関節の痛み・腫れ、むくみ、たんぱく尿、胸の痛み、息苦しさ、疲れやすさ、貧血、易出血性、感染
解説
全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫の働きが過剰になり、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつです。「全身性」という名前のとおり、皮膚・関節・腎臓・肺・心臓・血液など、さまざまな臓器に炎症が起こる可能性があります。
発症の原因は完全には解明されていません。紫外線やウイルス感染症などがきっかけで病気が悪化することがあります。SLEは若い女性に多くみられますが、男女問わず発症する病気です。
現在では治療法が進歩し、適切に治療・管理することで、多くの方が日常生活を問題なく続けられるようになっています。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を素早く抑えるために使用されます。症状が落ち着いてくれば、少しずつ量を減らしていきます。
・免疫抑制薬(例:ミコフェノール酸モフェチル、シクロフォスファミド、リツキシマブなど):免疫の過剰な働きを抑える薬で、腎臓や肺など臓器に炎症がある場合に使用します。
・抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン):皮膚症状や関節痛、再発予防に効果があり、SLE治療の重要な薬です。
・生物学的製剤(ベリムマブ、アニフロルマブ):通常の治療で十分な効果が得られない場合に使われる新しい治療薬です。
2. 生活の工夫
・紫外線対策(日焼け止め、帽子、長袖など)。光に当たると症状が悪化することがあります。
・感染予防:薬剤の影響で免疫が下がることがあるため、手洗いやワクチン接種が重要です(ワクチン接種は必ず医師に相談してください。生ワクチンは接種できません)。
シェーグレン病
主な症状
目や口の乾燥、唾液腺の腫れ、関節痛、レイノー症状(手や足の指の色が白・紫・赤色などになる)、咳、息苦しさ、手足のしびれ
解説
シェーグレン症候群は、免疫の働きが自分の涙腺・唾液腺を攻撃してしまうことで、乾燥症状が生じる自己免疫疾患です。単独で発症する場合と、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)など、ほかの膠原病に合併して起こる場合があります。
発症の原因は完全にはわかっていません。紫外線やウイルス感染症などがきっかけで病気が悪化することがあります。女性に多く、40〜60代でよく見られますが、どの年代でも起こりえます。
乾燥症状が中心の病気ですが、まれに肺、腎臓、神経、血液など全身に症状が及ぶこともあるため、定期的な診察と検査が大切です。
治療方法
1. 乾燥症状の治療(中心となる治療)
〈目の乾燥〉
・人工涙液
・ヒアルロン酸などの点眼
・涙の通り道をふさぐ「涙点プラグ」
〈口の乾燥〉
・唾液を増やす薬(ピロカルピン、セビメリンなど)
・こまめな水分補給、虫歯・歯周病予防のための口腔ケアの徹底
2. 全身症状への治療
関節痛や倦怠感には抗炎症薬(NSAIDs)を使用することがあります。炎症が強い場合や臓器に障害が出ている場合には、ステロイドや免疫抑制薬を使うことがあります。まれに重症例では生物学的製剤を用いることがあります。
皮膚筋炎
主な症状
筋肉痛、筋力の低下、まぶた・首から肩・手足の皮疹、咳、息苦しさ、関節の痛み
解説
皮膚筋炎は、筋肉と皮膚に炎症が起こる自己免疫疾患です。免疫の働きが過剰になり、自分の筋肉や皮膚を攻撃してしまうことで症状が現れます。
筋肉の炎症により、腕や太ももの力が入りにくくなり、日常生活の動作が困難になることがあります。原因は完全にはわかっていません。
皮膚筋炎の患者さんでは、合併症として間質性肺炎(肺の炎症)が生じることがあり、適切な検査と治療が重要です。まれに、皮膚筋炎と悪性腫瘍(がん)が関連する場合があるため、初期にはがんの有無を調べる検査を行うことがあります。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症をしっかり抑える基本の薬です。初期には多めに使用し、症状が落ち着けば少しずつ量を減らします。
・免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、シクロホスファミドなど):ステロイドだけでは十分に改善しない場合に併用します。
・免疫グロブリン大量静注療法:治療抵抗性の場合に併用することがあります。
2. 間質性肺炎への治療
肺に炎症がある場合は、ステロイドや免疫抑制薬を組み合わせて治療します。進行が早いタイプもあるため、早期の診断と治療が非常に大切です。
3. リハビリテーション
炎症が落ち着いたあと、必要に応じて筋力を取り戻すためのリハビリを行います。
4. 生活の工夫
紫外線で皮膚症状が悪化することがあるため、日焼け対策が重要です。また、疲れすぎない程度に軽い運動を取り入れ、免疫を抑える薬を使用するため感染症予防にも注意します。
多発性筋炎
主な症状
筋肉痛、筋力の低下、咳、息苦しさ、関節の痛み
解説
多発性筋炎は、免疫の働きが筋肉を攻撃してしまうことで炎症が生じる自己免疫疾患です。男女ともに発症しますが、成人では40〜60代に比較的多い病気です。
筋肉に炎症が起こると、力が入りにくくなる(筋力低下)ことが主な症状で、特に腕・肩・太ももなど、体の中心に近い部分(近位筋)が影響を受けます。原因は完全には解明されていません。
多発性筋炎の患者さんの一部では、間質性肺炎が合併することがあり、息切れや乾いた咳などの症状が見られます。発症初期には、血液検査・筋電図・MRI・筋肉の検査(筋生検)などを組み合わせて診断します。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症をしっかり抑える基本の薬です。初期には多めに使用し、症状が落ち着けば少しずつ量を減らします。
・免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、シクロホスファミドなど):ステロイドだけでは十分に改善しない場合に併用します。
・免疫グロブリン大量静注療法:治療抵抗性の場合に併用することがあります。
2. 間質性肺炎への治療
肺に炎症がある場合は、ステロイドや免疫抑制薬を組み合わせて治療します。進行が早いタイプもあるため、早期の診断と治療が非常に大切です。
3. リハビリテーション
炎症が落ち着いたあと、必要に応じて筋力を取り戻すためのリハビリを行います。
4. 生活の工夫
紫外線で皮膚症状が悪化することがあるため日焼け対策が重要です。疲れすぎない程度に軽い運動を取り入れ、免疫を抑える薬を使用するため感染症予防にも気を配ります。
全身性硬化症(全身性強皮症)
主な症状
皮膚が硬くなる、レイノー症状(手や足の指の色が白・紫・赤色などになる)、咳、息苦しさ、逆流性食道炎、便秘
解説
強皮症は、皮膚や内臓の組織が硬くなってしまう自己免疫疾患です。(1)免疫の異常、(2)線維化、(3)血管の障害が病気に関連していることがわかっています。
強皮症には主に次の2つのタイプがあります。
・限局皮膚硬化型(皮膚の硬化が手足などに限られるタイプ):内臓の障害は比較的少ない傾向があります。
・びまん皮膚硬化型(皮膚の硬化が広い範囲に出るタイプ):内臓(肺・心臓・腎臓・消化管)の合併症が起こりやすく、早期診断と治療が非常に重要です。
女性に多く、30〜50代で発症することが比較的多い病気です。
治療方法
1. 皮膚の硬化・関節症状の治療
・免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサートなど):皮膚の硬化や関節の炎症を抑える目的で使用します。
・ステロイド:発症早期や急激に皮膚硬化が進行する場合に使用することがありますが、強皮症腎クリーゼのリスクがあるため慎重に行います。
2. レイノー現象・指先の潰瘍の治療
血管を広げる薬(カルシウム拮抗薬)を使用します。寒冷刺激で誘発されるため、冬場の防寒やストレス対策も重要です。禁煙も大切です。
3. 肺の病気(間質性肺疾患・肺高血圧症)
・免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、シクロホスファミドなど)
・抗線維化薬(ニンテダニブ)
・選択的肺血管拡張薬
4. 消化器の症状
逆流性食道炎には胃酸を抑える薬、腸の症状には整腸薬や運動改善薬などが使用されます。食事の工夫(少量を数回に分ける、就寝前の食事を避けるなど)も有効です。
5. リハビリテーション
手指・関節のストレッチや軽い筋力トレーニングにより、皮膚硬化による関節可動域の低下を防ぎます。
ベーチェット病
主な症状
繰り返す口内炎、皮疹、目の充血や痛み、かすみ、視力低下、視野異常、陰部潰瘍、腹痛、下痢
解説
ベーチェット病は、免疫の働きが過剰になり、体のさまざまな組織に炎症を起こす自己炎症性疾患のひとつです。口・皮膚・眼・陰部などに繰り返し症状が現れることが特徴です。
発症の原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常、遺伝的な体質(HLA-B51、IL-23受容体、IL-12受容体β2鎖、IL-10、ERAP1など)や環境因子が関与していると考えられています。
症状の出方はさまざまで、皮膚や口の症状が中心で軽症の方や、眼、腸、神経、血管などに強い炎症が出る方など個人差があります。治療が進歩した現在では、適切な治療によって症状のコントロールが可能で、日常生活を続けながら治療していくことができます。
治療方法
1. 皮膚・口内炎・軽症の関節痛
・外用薬(塗り薬):ステロイド軟膏など
・コルヒチン:皮膚症状や関節痛の改善に効果があります。
2. 眼の炎症(ぶどう膜炎)
・眼科的治療(ステロイドの点眼・注射)
・全身の免疫を抑える薬(免疫抑制薬)
・生物学的製剤(抗TNF-α抗体など)
3. 腸管型ベーチェット(腸の炎症)
・免疫抑制薬
・生物学的製剤
4. 血管型・神経型(重症タイプ)
・ステロイド
・免疫抑制薬
・生物学的製剤
顕微鏡的多発血管炎
主な症状
発熱、体重減少、倦怠感、むくみ、手足のしびれ・動かしにくさ、咳、息苦しさ、血痰、皮疹
解説
顕微鏡的多発血管炎(MPA)は、免疫の異常で血管に炎症が起きる病気です。特に小さな血管(腎臓や肺、神経、皮膚などにある血管)が影響を受けます。
炎症により血流が障害され、臓器の働きが低下することがあります。特に腎臓や肺が障害される場合は重症化することがあるため、早期の診断と治療が非常に重要です。
MPAは40〜60歳の成人に多く発症しますが、男女問わず発症する病気です。原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常が関与していると考えられています。診断には、血液検査、尿検査、画像検査(胸部CTなど)、場合によっては腎生検や皮膚生検などを組み合わせて行います。
治療方法
1. 薬物療法(中心となる治療)
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):急性期の炎症を強く抑えるために使用します。症状が落ち着けば徐々に減量します。
・免疫抑制薬(シクロフォスファミドやミコフェノール酸など):血管の炎症を抑え、再発を防ぎます。
・生物学的製剤:難治例や再発リスクが高い場合に使用されることがあります。
2. 合併症の管理
腎機能や肺の状態を定期的にチェックし、感染症予防(免疫を抑える薬の影響で感染リスクが上がるため)にも注意します。
3. 生活の工夫
規則正しい生活、適度な休養とストレス管理を心がけ、発熱、血尿、咳など症状の変化に早めに対応することが重要です。
多発血管炎性肉芽腫症
主な症状
発熱、体重減少、倦怠感、中耳炎、耳の聞こえにくさ、鼻づまり、鼻の変形、目の充血、むくみ
解説
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は、免疫の異常により血管が炎症を起こし、全身の臓器に影響を与える自己免疫疾患です。
特徴は、鼻や副鼻腔、肺、腎臓を中心に症状が出やすいこと、血管の炎症に加え、肉芽腫(組織がしこり状に変化する炎症)ができることです。原因は完全にはわかっていませんが、免疫の異常が関与していると考えられています。
GPAは進行すると腎臓や肺に深刻な障害を引き起こすことがあるため、早期診断と治療が非常に重要です。診断には、血液検査、尿検査、画像検査(胸部CTなど)、場合によっては生検(組織の採取)を組み合わせて行います。
治療方法
1. 薬物療法(中心的な治療)
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):急性期の炎症を抑えるために使用します。
・免疫抑制薬(シクロフォスファミドやリツキシマブ、ミコフェノール酸など):血管の炎症や肉芽腫を抑え、再発を防ぎます。
・生物学的製剤:難治例や再発のリスクが高い場合に使用されます。
2. 合併症の管理
腎臓や肺の機能を定期的にチェックし、免疫を抑える薬の使用による感染症リスクに注意します。
3. 生活の工夫
規則正しい生活で体調の波を減らし、発熱、血尿、咳、鼻出血などの症状の変化があれば早めに医師に相談します。適度な休養とストレス管理も重要です。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
主な症状
ぜんそく発作、皮疹、手足のしびれ・動かしにくさ、胸の痛み、息苦しさ、発熱、体重減少、倦怠感
解説
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、免疫の異常により血管や臓器が炎症を起こす病気です。
特徴として、
・喘息やアレルギー症状が先に現れることが多い
・血液中の好酸球(アレルギーに関与する白血球)が増える
・小さな血管や神経、皮膚、心臓、肺、腎臓などに炎症が起こる
ことがあります。
EGPAは3つの段階で進行することが多いとされます。
・アレルギー期:喘息やアレルギー性鼻炎が出現
・血管炎期:血管の炎症が全身に広がり、皮膚・神経・臓器に症状が出現
・重症期:心臓や腎臓などの臓器障害が進行
原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常が関与していると考えられています。診断には、血液検査(好酸球の増加、ANCA抗体など)、画像検査、神経検査や生検(組織の採取)などを組み合わせて行います。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を抑える基本の薬です。症状が落ち着けば徐々に減量します。
・免疫抑制薬(ミコフェノール酸、アザチオプリン、シクロフォスファミドなど):血管炎や臓器障害を抑える目的で使用されます。
・生物学的製剤:難治例やステロイドの副作用を減らしたい場合に使用されます(抗IL-5抗体など)。
2. 合併症の管理
心臓、腎臓、肺の機能を定期的にチェックし、免疫を抑える薬の影響による感染リスクに注意します。
3. 生活の工夫
喘息やアレルギー症状の管理、規則正しい生活と適度な休養を心がけ、発熱、しびれ、息切れ、皮膚症状などの変化に早めに対応することが重要です。
高安動脈炎
主な症状
手足の冷え、手足のしびれ、脈が触れにくい、左右で血圧の差がある、発熱、倦怠感
解説
高安動脈炎は、免疫の異常で大きな血管に炎症が起こる自己免疫疾患です。血管壁が厚くなったり狭くなったりすることで血流が妨げられ、全身にさまざまな症状が現れます。
主に大動脈とその主要な枝(腕や首に向かう血管)が影響を受けます。若い女性に多く、特に20〜40歳代で発症することが多いです。原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常が関与していると考えられています。
診断には、血液検査(炎症の指標)、血管の画像検査(CTやMRI、血管造影)を組み合わせて行います。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を抑える基本の薬です。初期に使用し、症状が落ち着けば徐々に減量します。
・免疫抑制薬(シクロフォスファミド、アザチオプリン、メトトレキサートなど):再発を防ぐために使用されることがあります。
・生物学的製剤:難治例やステロイドを減らしたい場合に使用されます。
2. 血流改善の管理
高血圧や動脈狭窄による合併症の管理を行い、必要に応じて血管拡張や手術・血管形成術(バイパスやステント)を検討する場合もあります。
3. 生活上の工夫
規則正しい生活を心がけ、無理な運動を避けて症状に応じて活動量を調整します。定期的な血圧測定や血管検査で経過を確認し、腕や足のしびれ、めまい、胸痛など症状の変化に早めに対応します。
巨細胞性動脈炎
主な症状
発熱、体重減少、だるさ、頭痛、視力の低下、顎の痛み、口が開けにくい、失神、手足に力が入らない
解説
巨細胞性動脈炎(GCA)は、免疫の異常により血管の壁に炎症が起きる病気です。主に頭や首の太い血管(特に側頭動脈)に炎症が起きますが、大動脈や分枝する動脈にも炎症が起こることがあります。
特徴として、高齢者(50歳以上、特に60〜70歳代)に多く発症し、女性にやや多い病気です。側頭動脈の炎症による視力障害を来した場合は早期治療が非常に重要です。
診断には、血液検査(炎症の指標であるCRPや赤血球沈降速度)、血管の画像検査(超音波、CT、MRI)、場合によっては側頭動脈の生検を行います。約40%にリウマチ性多発筋痛症を合併します。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):急性期に炎症を抑える基本の治療です。症状が落ち着けば徐々に減量します。
・生物学的製剤(トシリズマブ):ステロイドを減らす目的や、再発を防ぐために使用されることがあります。
2. 合併症の管理
ステロイド使用による血圧や血糖の変化に注意し、視力や心臓・血管の状態を定期的にチェックします。
3. 生活の工夫
規則正しい生活と適度な休養・体調管理を心がけ、頭痛や視力の変化、体調の急変があれば早めに受診します。
成人スチル病
主な症状
発熱、倦怠感、皮疹、関節の痛み、喉の痛み、リンパ節の腫れ
解説
成人スチル病は、免疫のバランスが崩れることで全身に炎症が起こる病気です。発熱、皮疹、関節痛の3つの症状が代表的で、ほかに喉の痛み、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫大がみられることもあります。
血液検査では、白血球増多、炎症反応高値、フェリチン高値などがみられます。胸膜炎、心膜炎、間質性肺炎を合併することもあります。診断は血液検査や症状の経過をもとに行われ、他の病気を除外して決定します。
治療方法
1. 薬物療法
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):急性期の発熱や関節炎、全身症状を抑える基本の治療です。
・免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリンなど):ステロイドの量を減らすためや、再発を防ぐために使用されます。
・生物学的製剤(IL-1阻害薬やIL-6阻害薬など):難治例やステロイドで十分にコントロールできない場合に使用されます。
IgG4関連疾患
主な症状
瞼や顎の腫れ、咳、息切れ、腹痛
解説
IgG4関連疾患は、IgG4陽性形質細胞やリンパ球が全身のさまざまな臓器に浸潤することで、臓器が腫れたり硬くなる病気です。罹患臓器は涙腺、唾液腺、膵臓、腎臓、肺、胆管、後腹膜、リンパ節、下垂体、硬膜、前立腺など多岐にわたります。
中高年の男性に多く見られ、原因は完全には解明されていませんが、免疫の異常が関与していると考えられています。診断には、血液検査(IgG4値の上昇)、画像検査(CT、MRI、超音波など)、必要に応じて臓器の生検(組織の採取)が行われます。
治療方法
薬物療法が中心です。
・ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を抑える基本の治療です。症状や臓器障害の程度に応じて、初期は高用量で開始し、徐々に減量します。
・免疫抑制薬(アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチルなど):ステロイドで十分にコントロールできない場合や再発予防に使用されます。


