手の外科領域

舟状骨骨折、偽関節

転倒して手をついた時などに生じる手首の小さな骨の骨折です。骨折とは気付かずに放置され、後に骨折だったと判明することもあります。当科では、骨折や偽関節の状態に応じて、保存的治療、特殊な螺子を用いた固定術、骨移植を併用した偽関節手術などを行っています。経皮的偽関節手術は当科オリジナルの方法で、対象は限定されますが機能的、整容的にもよい結果が得られています。偽関節の状態によっては、近傍から血管の付いた骨を移植する方法を選択することがあります。

経皮的偽関節手術の術前、術後

母指CM関節症

母指の根元の手関節に近い部分の関節が痛みます。保存的治療を行っても日常生活に支障がある場合には、手術を行っています。当科では、大菱形骨を一部切除後、第1中手骨と第2中手骨間を溶けない糸で締結する方法を行っています。男性で力仕事を行うことが多い方には、関節固定術を薦めています。

関節形成術の術前、術後

骨折変形治癒

橈骨遠位端骨折後の変形治癒では、手関節の疼痛や動きの制限が生じることがあります。また、指骨骨折後の変形治癒では、隣の指と重なって指がうまく曲げられなくなることがあります。骨折の重症度や、骨折をしてからの期間にも左右されますが、骨変形を治すことにより動きや疼痛が改善することがあります。当科では。CT画像などから詳細な3次元シミュレーションを行い、手術を行っています。

手根管症候群

手関節の手のひら側で、正中神経が圧迫されて生じます。母指~環指の半分にしびれが生じ、夜間痛が生じる場合もあります。重症化すると、母指球筋というつまみ動作に必要な母指の根元の筋肉が麻痺します。麻痺が進行してしまうと、回復が非常に難しいため、それまでに手術を行うべきと考えています。母指と小指の指腹部(指紋のあるところ)の間で写真の様にくっつけることが出来なければ麻痺が進行している可能性があります。当科では、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術を行っています。

小指の第2関節をまっすぐ伸ばした状態で、母指と小指の指腹部をくっつけることが出来れば良いのですが、

指先しか届かない、あるいは全く届かないようであれば麻痺が既に生じている可能性があります。

肘部管症候群

肘の内側で尺骨神経が圧迫されて発症し、環指の小指側半分と小指にしびれが出現します。病状が進行すると、指先でつまむことや、指の間を開くこと(パーの形)が難しくなり、日常生活でかなり支障が生じます。麻痺が進行してからでは手術を行っても回復は非常に難しく、早めの手術が望ましいと考えます。

胸郭出口症候群

上肢へと走行する血管や神経が、鎖骨と第1肋骨の間で、骨や筋腱などにより圧迫されて生じます。重度になると、血流障害による脱力感や、神経障害による小指などのしびれ感、握力低下などが見られます。確定診断は、様々な検査の結果を組み合わせて慎重に行います。当科では、確定診断がついた重症例に対し、顕微鏡を用いて第1肋骨切除を行っています。

神経麻痺に対する再建

神経障害は、早期にその原因を除去することで、麻痺した筋肉の回復が期待できます。しかし、何らかの理由により治療が遅れた場合、あるいは外傷などにより神経が断裂した場合には、回復が思わしくないことがあります。そのような状態に対し、残存する筋肉や、腱を用いて、麻痺した機能を再建する方法を行える場合があります。

ヘバーデン結節、ブシャール結節

ヘバーデン結節はいわゆる指の第1関節、ブシャール結節は第2関節に生じた変形性関節症です。現時点では、確実に効果が見られる薬物療法はありません。日常生活で支障のある方に対し、当科では、ヘバーデン結節には状態に応じて骨棘切除術や関節固定術を、ブシャール結節には滑膜切除術や人工関節置換術(シリコン製)を行っています。

キーンベック病

未だ原因は明らかとはなっていませんが、手関節の中央に位置する月状骨が、血流障害に続いて、潰れてくる病気です。病気の段階により治療法が異なります。圧潰の見られない時期には、保存療法か血管柄付き骨移植術を、圧潰が進行した時期には摘出術や手根骨間固定術などを組み合わせた手術を行っています。


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