2026年4月1日 「糖尿病・内分泌代謝センター」から「内分泌代謝・ダイアベティスセンター」へ

2026年04月07日

当院では、「糖尿病・内分泌代謝センター」の科名を、世界共通語である“Diabetes(ダイアベティス)”に合わせて「内分泌代謝・ダイアベティスセンター」へ変更しました。

この名称変更には、病気の正しい理解を広めるとともに、スティグマ(偏見)を少しでも減らしたいという願いが込められています。

1.なぜ「糖尿病」を変えるの?

この病気は、古くは中国や日本で「消渇(しょうかち)」と呼ばれてきました。強い口の渇きが続き、水をいくら飲んでも渇きがおさまらず、その一方で体がみるみる痩せていく—そうした特徴的な症状から、「体が消えていくように渇く病」として名付けられたとされています。

明治時代に西洋医学が導入されると、英語の“Diabetes Mellitus(蜜のように甘い尿が出る病気)”に対応する病名として「糖尿病」という言葉が用いられるようになり、日本をはじめ中国などアジアの国々でも「糖尿病」という呼び方が定着してきました。

しかし現在、この「糖尿病」という名称は、医学的な実態と必ずしも一致していません。昔は血糖が測定できず、尿に糖が出ることしか分からなかった時代もありますが、医療が進歩した現代では血糖値は簡単に測定できますし、血糖値が正常な状態であっても薬による治療などの影響により、尿糖が出ることもあります。「尿に糖が出る病気」という説明は、もはや正しくなくなっているのです。

さらにこの病気の本質は、高い血糖値の状態が長く続くことで、全身の血管が少しずつ傷つき、その結果として、目や腎臓、神経、そして心臓、脳、下肢の血管など、全身のさまざまな臓器に合併症が起こりやすくなる—そこにこそ、この病気の怖さがあります。「糖尿病」という病名は、「尿」が名前についているばっかりに、病気の本質や全身に及ぶ影響を十分に伝えられていないという問題があります。

2.「スティグマ」って?

病名変更を考えるうえで、さらに重要な問題が、病名がもたらす「スティグマ」です。

スティグマとは、「ある特徴を理由に、その人に不当なレッテルが貼られ、偏見や差別の対象になってしまうこと」を表します。病気、障がい、外見、出身地などをきっかけに、「だらしない人」「自己管理ができない人」などと決めつけられ、本来受けられるはずの機会や権利が奪われてしまう状態です。

「糖尿病」の場合、「食べすぎ・甘いものの食べすぎのせい」「自業自得」といった誤解がスティグマとなり、病気を隠そうとしたり、治療や相談をためらう原因になります。「糖尿病」という漢字表記は、「糖」「尿」といった漢字のイメージから、「甘いものばかり食べているからかかる病気」「だらしない生活の結果」「どこか不潔な印象」といった、医学的根拠のない誤解を生みやすいと言われています。

こうした誤ったイメージは、病気をもつ人に「恥ずかしい」「自分が悪い」といった不必要な罪悪感を抱かせ、家族や職場、友人に病名を打ち明けにくくしてしまいます。その結果、受診や通院を先延ばしにして治療の開始が遅れたり、職場や社会で不利益を受けることを恐れて、必要な配慮や支援を求められなかったりするケースが後を絶ちません。病名そのものが、患者さんの生活の質や健康に悪影響を与えているという現実があります。

3.「ダイアベティス」とは

こうした背景から、日本糖尿病学会やJADEC(公益社団法人 日本糖尿病協会)などの専門団体が、世界共通語である“Diabetes”をそのままカタカナで表した「ダイアベティス」という呼び方への移行を提案しました。「尿」という字を病名から外し、病気の一部の特徴だけを強調しない名称にすることで、不要な恥の意識や偏見を和らげることが期待されています。

「ダイアベティス」という呼称には、「正しく理解し、適切に治療と自己管理を行えば、多くの方が健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることができる病気である」という、現代の医療に即したメッセージを込めています。当院が「糖尿病」の代わりに「ダイアベティス」という名前に変更するのは、病気を隠さず安心して相談できる環境を整え、病気があっても一人ひとりが自分らしい人生を送れるよう支えていきたい—その思いを、名称にも反映させるためです。

糖尿病はダイアベティスへ

当院は、「糖尿病」から「ダイアベティス」への名称の変化を通じて、病気に対する社会のイメージを少しずつ変え、スティグマのない、誰もが安心して医療にアクセスできる社会づくりに貢献していきたいと考えています。


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