脳神経外科

関西電力病院脳神経外科の診療について

脳神経外科のコンセプト

当診療科は平成21年2月より入院・手術体制の整備が完了し、本格稼動を開始いたしました。日本脳神経外科学会専門医5名(うち、脳血管内治療学会専門医1名)を含む6名の常勤医が外来・救急・紹介入院・手術治療を担当いたします。'世界水準の治療を目指す'、'院内他診療科との迅速かつ綿密な高度多角的医療連携'、'脳外科医師・病棟看護師・リハビリスタッフ・MSW(医療ソーシャルワーカー)など多職種と連携したチーム医療の実践'そして、'患者様ご自身・ご家族に病状をわかりやすくご説明し治療方針決定にご参画を頂く'を基軸としたコンセプトで日々、努力邁進しております。以下に具体的な診療内容を画像もまじえて、ご案内させていただきます。

外来診療について

  • 主として、他の医療機関からのご紹介の患者様に対し、精密検査(脳血管カテーテル検査、3DCTを使った脳血管撮影、脳血流RI検査、頚動脈超音波検査など)の必要性を判断いたし、この後に手術が必要と判断される場合は、当院にご入院いただくか、特殊な疾患の場合、最適な専門医療機関に責任を持ってご紹介させていただきます。
  • 外来診察日以外のご紹介による外来診療も随時お受けいたしますが、この際は当院地域連携室にご連絡の上、日時の調整をさせて頂きます。
  • セカンドオピニオンや患者様ご自身が直接診察をご希望される場合は、当診療科にご連絡いただければご診察予約日を調整いたします。

脳神経外科救急診療について

5人のスタッフが救急集中治療センターとの連携で時間内・外とも緊急対応いたします。特に脳神経内科との連携により脳卒中当直体制が整いました。脳卒中とは急性期の脳の血管の病気(血管障害)を意味する一般的用語で、この中にはクモ膜下出血、脳(内)出血、脳梗塞の3つが含まれていますが、この中で最も多い(約7割)のが脳梗塞です。脳梗塞とは脳の血管が詰まり脳へ血液が行かなくなり。脳の神経細胞が壊れてしまう病気です。一般的に脳の神経細胞は3時間以内に血液の流れが再開しないと死んでしまい、後になってから再生させる(甦らせる)ことはできません。したがって、かなり早期に治療を開始しないと後遺症を残すことになり、超急性期(3時間以内)では脳の神経細胞の壊死を防ぐために、まずはtPAという血管内に詰まっている血栓(血のかたまり)を溶かす薬を用いて治療を行いますが、これらの超急性期治療については脳卒中専門医の診断の下で厳しい適応基準を守らなければ、出血をきたしかえって重症になることもあります。一方、現状ではすでに発症後3時間以上経って来院される場合が多く、この場合には血行が途絶え壊れた脳の神経細胞を再生させるのではなく、発症後数日以内は血液の流れがさらに悪くなり増悪することがあるのでこれを防いだり、脳梗塞には陥っていない神経細胞への血流を増やすことによって症状を軽くしたりするために治療を行います。これには、抗血栓薬(血栓ができにくくなる薬ですが、超急性期に使う血栓溶解薬とは違うものです)を点滴で投与することとなり、急性期は内科的(点滴)治療が中心となります。一方、クモ膜下出血は原則的には外科的治療(手術)が必要です。また、脳出血や頭部外傷の中にも急性期(緊急)手術を必要とするものがありますが、当診療科では最新の手術設備を有し、緊急手術対応も随時可能であります。(詳しくは手術治療の項をご参照下さい)。

入院治療について

  • 脳神経外科にご入院いただいた場合の主担当病棟は16階病棟です。
  • 毎週金曜日夕方には、脳神経外科スタッフ医師、看護師、リハビリスタッフ、MSWが集合して意見を出し合い、個々の入院患者様につき、最善の治療方針の決定と情報の共有を行う脳神経外科総合カンファレンスを実施しております。
  • また、当診療科においては、'一人の患者様に一人の主治医が担当する'のではなく'5人の常勤脳神経外科医すべてが、すべての入院患者様の主治医となる'としたコンセプトで運用されているところが、特徴です。つまり、'一人の入院患者に5人の主治医が担当'させていただくこととなります。入院患者様の病状や治療方針等については毎朝、手術治療例に対する術前および術後検討は毎週金曜日に、カンファレンスをおこなっております。
脳神経外科医
脳神経外科医
脳血管内治療
脳血管内治療

手術治療について

【脳神経外科手術に関する基本コンセプト】
脳神経外科手術
脳神経外科手術

当診療科におきましては、他医療機関の先生方からのご紹介が多いのも特徴ですが、手術に対する基本姿勢は、「'手術は最後の手段'と考え、その手術適応に関して、科内の複数の専門医のみならず、関連各科専門医との綿密な検討により決定」する事であります。すなわち、患者様一人一人にとり「他院他医のセカンド・オピニオンなど不要」とご納得いただけるようスタッフ一丸となり最善の努力をいたします。(勿論、ご望をお申し出いただければ喜んでセカンド・オピニオンの受診紹介もいたします。)

【疾患別脳神経外科手術のご説明】

以下に当科にて施行される治療頻度の高い疾患につき、ご説明させていただきます。

  1. 脳血管障害の手術

    当院においては従来より行われてきた直達手術だけでなく、近年急速に発展してきた(患部を切らない)血管内手術も血管内治療専門医により施行可能であります。つまり、患者様の病状、病態をリアルタイムにチーム内で検討し、開頭手術 VS 血管内手術の適否が、確実性・安全性を重視し決定できるのが特徴です。くも膜下出血の原因である破裂脳動脈瘤または脳ドックで偶然に発見された未破裂脳動脈瘤に対しては、直達手術(開頭脳動脈瘤クリッピング術)もしくは血管内手術(脳動脈瘤コイル塞栓術)を、脳梗塞発症の原因となる頚部内頚動脈狭窄症においても、高度狭窄例や中等度以上の狭窄で一過性脳虚血発作や軽症脳梗塞をおこした症候性病変の場合は、直達手術(頚動脈血栓内膜剥離術)もしくは血管内手術(頸動脈ステント留置術)を行っております。また、モヤモヤ病、頭蓋内主幹動脈慢性閉塞症などによる脳梗塞予防のための頭蓋内外血管バイパス術や脳出血に対する開頭血腫除去術も診療ガイドラインに則りチーム内で検討をした上、慎重な適応判断のもと、施行しております。

    また、若年者の脳出血の原因となることがある病気に生まれながらの血管の奇形(多くは脳動静奇形)があります。これは、てんかんの原因の精査や脳ドックでのMRI検査で偶然に発見されることもあります。「血管奇形の出来ている場所」、「奇形血管の大きさや流れの方向」、「破裂して脳出血をおこしているか、偶然に見つかった無症状のものか」などを総合的に判断して、開頭手術による摘出術、血管内手術による塞栓術や脳腫瘍の項目でお話しするガンマナイフなどの放射線治療など、あらゆる治療方法を考慮し、最良の治療を選択します。

  2. 脳腫瘍の手術

    近年、脳ドックで偶然発見されて当科外来に紹介またはセカンドオピニオン目的にてご来院いただく患者様が増えてきております。髄膜腫・聴神経腫瘍・脳下垂体腫瘍などが主ですが、厳密にいうとこれらの腫瘍は脳の神経細胞から発生するものではなく、脳を取り囲んでいる頭蓋骨の内側に出来ているものなので、'頭蓋内腫瘍'と言った方がわかり易いと思います。脳を圧迫してない小さなものなら、必ずしも予防的に手術で摘出する必要はありません。腫瘍が大きくなり脳に対する圧迫症状(頭痛・吐き気・手足の痺れや動きの悪さ・視野障害・性格変化・記憶障害・てんかん発作など)がでる可能性が迫っている場合や既に軽い圧迫症状が出ている時には開頭腫瘍摘出術をおすすめいたします。これらの腫瘍は通常、手術で取り除けば、その後の補助療法(放射線治療・化学療法・免疫療法など)は通常不要です。

    一方、'本当の脳腫瘍'とは、脳の中にある種々のタイプの神経細胞から出来る腫瘍で、神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマ)と呼ばれます。この場合は、「その細胞の性格」、「脳内のどこに出来ているか(仮に摘出しても後遺症を残さないか)」、「大きさと広がり」などを総合的に判断して治療方針を決定いたします。この際は、当科スタッフの複数の脳神経外科専門医と放射線治療専門医、脳神経内科医、化学療法に詳しい医師との協議・検討し、これら関連連携医師とともに、開頭腫瘍摘出術のみならず、化学療法、放射線療法を組み合わせた'世界標準の集学的治療'を目指して実践しております。

    また、癌の患者様が増加する中、他臓器の癌が脳に転移する転移性脳腫瘍の治療にも注力しております。「癌の告知を受けられているか否か」、「転移性脳腫瘍が1個か複数か」、「その大きさは」「出来ている場所は」「ご本人の治療に対するご意思は」「元々の癌に再発があるのか否か」など、患者様それぞれのご事情を考慮した上で、科学的根拠(EBM:エビデンス)に基づくことを大原則としながら、'その患者様に合わせた最善の治療計画'をお示し致しながら治療を進めて参ります。具体的には、開頭腫瘍摘出術、放射線療法、化学療法などの治療法がありますが、すべての治療法を用いるかどうかは、ご本人、ご家族も含め、治療計画の立案にご参加いただいております。放射線療法の中には、ガンマナイフといわれる定位的放射線照射法も含まれます。この際は近隣のガンマナイフ治療設備のある複数の病院へのご紹介・受診/入院予約も当院からさせていただきますのでご安心下さい。(ガンマナイフ治療は、通常1泊2日か2泊3日の入院です。その後、経過を観るため再び短期間当院へ再入院頂くこともあります。)

    癌性疼痛は肉体的・精神的に患者様や介護されるご家族にも想像を絶する苦痛と考えております。この場合、当院の緩和医療科 との連携で、より良い治療・療養環境を作るべく努力させていただく所存です。

  3. 慢性硬膜下血腫の手術

    この病気は高齢者に多いのですが、本当は病気というより'ケガ'なのです。1~3ヶ月前に頭部を打撲していて、そのときはCT検査では'異常なし'と診断されますが、徐々に頭蓋骨と脳の表面の空間に血が貯まり脳を圧迫してくるのです。人により、「頭を打った覚えもない!」というほどの軽微な頭部打撲でも起こることがあります。「首の凝り」「ふらつき」「頭を動かしたときの重く鈍い痛み」時には「半身の痺れや麻痺」といった脳卒中に似た症状を起こすこともあります。また、圧迫される脳の部位によっては「言葉が出にくい」「もの忘れ」などの認知症の症状に似た症状も出ます。手術は一般に局所麻酔で行い、頭の骨に小さな穴を開けてここからチューブを入れて貯まった血液を抜く穿頭血腫除去術を行います。翌日から、摂食、歩行も可能で通常は7日間前後の入院で後遺症なく治癒します。

  4. 正常圧水頭症の手術

    正常圧水頭症とは'歩行障害・認知機能障害・尿失禁'を3大兆候とし、脳の中にある脳室という部屋に脳脊髄液が停滞貯留しておこる病気です。脳室(腰椎)-腹腔短絡術(V−P又はL−Pシャント)という脳神経外科手術で改善する可能性があり、数少ない'手術で治る又は改善する認知症'として近年、注目されています。MRI検査でさらにこの病気が疑わしいと専門医が考える場合は、まず、「タップテスト」という腰から脳脊髄液30ml程度抜いて症状の改善をみる検査をいたします。検査入院期間は3~4日くらいで、このテストで効果が期待できれば、全身麻酔でシャント手術を行います。(入院期間は7~10日間)

  5. 顔面けいれんや三叉神経痛に対する微小血管減圧術

    顔面けいれんの典型例は、一側の眼の周囲からけいれんが始まり、徐々に顔面全体に及んできます。疲労、ストレス、心配・不安、自意識などで増強されることが多いのも特徴です。一方、三叉神経痛は顔面に突発的に激痛または電撃痛が数秒間生じます。このような痛みの発作は全く突発的に生じる以外には、食事や歯磨きなどで誘発帯(トリガーゾーン)が刺激されることによっても生じます。これらの疾患では、顔面けいれんは顔面神経に、三叉神経痛は三叉神経にその近くを走行する血管が接して神経を圧迫することによりおこります。それゆえ、治療法としては、全身麻酔下にて(症状のある側の)耳介後部を開頭し症状の原因となっている神経と血管を剥離し、その間にスポンジなどをクッション代わりに挿入したり、圧迫血管を頭蓋骨側に接着固定したり、血管の神経への圧迫を回避する微小血管減圧術を行っています。入院期間は7~10日くらいです。
    なお、手術以外の治療法として、顔面痙攣ではボツリヌス療法、三叉神経痛ではガンマナイフがあります。どちらも当院では行っておりませんが、御希望の場合は近隣の連携病院へ当院から御紹介させていただいております。

  6. その他の手術

    当診療科では上述の手術の他に、頭部外傷に対する開頭術なども、緊急対応可能です。

診療実績

手術実績
名称 2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
脳血管障害 脳動脈瘤クリッピング術 3 3 6 2
脳動静脈奇形摘出術 0 1 0 0
脳内血腫除去術 1 2 2 2
頭蓋内血管バイパス術 3 6 3 4
頚動脈血栓内膜剥離術 8 5 7 5
減圧開頭術 0 0 0 2
血管内手術 頚動脈ステント留置術 4 5 6 6
血栓回収術 1 1 3 12
脳動脈瘤塞栓術 2 2 8 9
脳腫瘍 悪性脳腫瘍 1 2 2 0
良性脳腫瘍 4 7 2 7
転移性脳腫瘍 1 0 2 0
腫瘍動脈塞栓術
/動注化学療法(血管内手術)
6 2 0 3
頭部外傷 開頭血腫除去術 0 0 3 3
穿頭血腫除去術
(慢性硬膜下血腫)
32 20 16 12
水頭症 髄液シャント術 3 8 6 5
脳室ドレナージ術 1 0 1 2
その他 0 0 0 02
その他
頭蓋形成術 1 0 1 2
その他 3 5 4 3
その他(血管内手術) 1 0 1 6
合計 75 69 73 85

施設認定・施設基準

  • 日本脳神経外科学会専門医研修プログラム連携施設
  • 日本脳卒中学会研修教育施設
  • 日本脳卒中学会認定一次脳卒中センターコア施設

診療科紹介・部門