麻酔科新専門医制度について
各学会でバラバラだった専門医資格の認定基準を第三者機関である日本専門医機構が統一し国民から見てわかりやすい専門医基準にするため新制度が開始されました。そう書くとどの診療科でも同じようなシステムかなと思ってしまいますが実際には各診療科で研修内容、研修期間が異なります。
① 麻酔科は19の基本領域にあたり、いわゆる『平屋構造』
初期研修終了後、麻酔科専攻医(昔で言うところの後期研修医)として4年間の麻酔科専門研修プログラムを終了し、卒後7年目の秋に専門医試験を受験、無事合格すれば卒後8年目から麻酔科専門医を名乗ることができます。メジャー診療科、たとえば消化器外科専門医や循環器内科専門医の場合はまず外科専門医、内科専門医を取得してからサブスペシャリティの領域である消化器外科、循環器内科の専門医を取得するため『2階建て構造』と呼ばれています。
② まずは日本専門医機構のサイトからプログラムを選択
初期研修2年目で麻酔科医になろうと決心すればまず日本専門医機構のホームページでIDとパスワードを登録し、自分が決めた施設の麻酔科専門研修プログラムを選択します(例年10~11月にサイトがオープンします)。ここで気をつけなければいけないことは各都道府県で定員(シーリングといいます)が決まっているということです。大学病院を筆頭にたくさんのプログラムが存在しますがそれぞれに定員が設けられており、2023年度の大阪府の場合、すべてのプログラムの合計定員が30名でした。これらの数字は過去の実績に基づいていますが、仮に大阪で2023年に麻酔科医を希望する3年目医師がこの数字を超えた場合どのような調整が行われていたのかは公表されていないため、我々のような独自のプログラムを持たない施設ではよくわかりません。日本専門医機構の募集開始が秋ですから麻酔科と決めた段階で自分が選択しようと思っている施設のプログラム担当医師に早めに連絡しておくことが重要です。
③ 麻酔科研修の特徴=ないもんはどうしょうもない!
4年間の研修で600症例の手術麻酔を経験しないといけません。この数字はどの施設に所属してもそれほど困難なものではありません。問題は小児(6歳未満)25例、帝王切開10例、心臓外科25例、胸部外科25例、脳神経外科25例を経験しないといけないということです。麻酔科専門医と名乗る以上、これくらいの症例をこなさないといけないのは当然ですが、麻酔科学会認定施設でありながら産科がない、心臓外科がない、脳外科がないという病院が数多く存在します。これら診療科をすべてそなえているのは大学病院をはじめとする大病院がほとんどです。
④ 大学プログラム選択=入局?
大学病院のプログラムを選択することが大学医局に所属することになるかどうかはそれぞれの大学事情によると思います。ただ昨今の若者事情を考えればどの大学も昔ほど締め付けが厳しくないような気がします。
⑤ 関西電力病院麻酔科の場合
関西電力病院は大阪公立大学麻酔科専門研修プログラムの基幹研修施設になります。関西電力病院では麻酔科専攻医として必要な600症例はもちろんのこと心臓外科、胸部外科、脳外科、小児科の特殊症例もクリアできる症例数です。残念なことに産科がないので帝王切開は経験できないため関西電力病院麻酔科単独として研修プログラムを申請することはできませんでしたが、大阪公立大学の麻酔科プログラムを選択した当院の研修医は過去6年間で3名でした(クロスを含む)。