分類

骨髄異形性症候群(MDSと言われます)は骨髄の細胞が異形性、つまり異常な形をもつようになった病気の集まりを示し、病気の進行に伴って急性骨髄性白血病に移行する(芽球が増殖する)ものがあるため血液がんの一種です。

pseudo-pelger核異常 異常多核赤芽球 micromegakaryocyte

世界保健機構(WHO)ではMDSを以下の8種類の病型に分類しています。

  1. 一系統の不応性血球減少(RA, RN, RT)
  2. 鉄芽球性貧血(RARS; 15%≦環状鉄芽球)
  3. 多系統の異形性を伴う不応性血球減少(RCMD)
  4. 多系統の異形性を伴う鉄芽球性貧血(RCMD-RS)
  5. 芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-1; 5≦骨髄中芽球< 10%)
  6. 芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-2; 10≦骨髄中芽球< 20%)
  7. 分類不能型MDS(異形性は10%未満だがMDSに特徴的な染色体異常がある)
  8. 5q-染色体異常をもつMDS

MDSの生命予後判定のためにIPSSと呼ばれる国際スコアがあります。血球減少の程度、骨髄中の芽球の数、染色体異常を点数化して判断し、治療方針を立てます。

症状

無症状で健診や他の病気を理由に行われた採血で血球減少を指摘され、この病気が発見されることがよくあります。症状としては、貧血、感染、出血傾向が最も高頻度で起こります。貧血になるとちょっとしたことで息切れやめまいが起こりやすくなります。正常の白血球の数が減るため、感染を契機に発熱で病院を受診して診断されることもあります。また、打撲した覚えがないのに紫色のあざができたり、鼻血や歯茎からの出血で異常に気がつくこともあります。

治療

年齢やMDSのタイプにより選択する治療法が異なります。

  1. 治療をせずに観察していく:血球減少が著明でなく、芽球増加も著しくない場合選択されます
  2. 輸血、造血刺激因子などの支持療法:貧血症状や易出血症状、感染予防のために行います。しかし輸血が頻回になりますと血の成分である鉄が臓器に沈着し、臓器障害を引き起こします。臓器障害予防のために除鉄療法を行う場合もあります。
  3. 抗がん剤療法:芽球が増えるタイプのMDSの治療に用いられます。複数回の治療を必要とします。
  4. 免疫抑制剤:非高齢者で予後不良染色体異常がない、ある種のMDSに用いられ、血球増加を目標とします。
  5. ビタミン療法(ビタミンKやビタミンD):稀に効果を示す方が報告されています。
  6. 造血幹細胞移植:非高齢者の方だけが対象となります。後述いたします。

合併症

抗がん剤療法を選択した場合、感染症と出血が最も頻度の高い合併症で、適宜抗菌剤を投与したり、血小板数が一定以上になるように血小板輸血を実施します。抗がん剤の多くは粘膜障害をきたすので、消化管粘膜のびらんが起こりやすくなります。消化管の中は体から見れば体外にあたり、微生物がたくさん住み着いています。薄いバリアーの消化管粘膜に綻びができれば、消化管の中に住み着いた微生物が体内に入り込んできます。多くの場合すでに抗菌剤が使用されているため、消化管の中には抗菌剤に抵抗性の微生物が増えています。このような微生物が感染の起因菌となるとその後の感染症治療が困難となることもあります。出血の管理には血小板輸血が効果的で、最近は出血による死亡は随分減少していますが、それでも感染合併時などには致命的となる脳出血や肺出血が起こりえます。また、頻回の輸血により抗HLA抗体が産生され、血小板輸血不応性が問題となることも少なくありません。

造血幹細胞移植

MDSに対し治癒が望める唯一の治療法ですが、体に対する負担が大きいため非高齢者のみが適応となります。同種造血幹細胞移植は異形性のもととなる自己の異常な造血幹細胞を他人(ドナー)の造血幹細胞に置き換えるという治療法です。兄弟や家族に白血球のタイプが適合するドナーがいらっしゃれば、移植の適応が考えられるケースが多いのですが、小家族化してドナーがいらっしゃらない患者さんには日本骨髄バンクがドナーを探すお手伝いをしてくれています。どのような場合に移植が望ましいのか、バンクに登録するにはどうすればよいのかなどについては主治医に確認してください。

次世代の治療の展望

治療が難しいMDSに対して新しい治療法が少しずつ開発されてきています。欧米に遅れてわが国でも2011年3月アザシチヂンという薬が認可され臨床使用が可能 となりました。また5q-の核型異常を持つMDSにはレナリドマイドという薬が奏功することが知られており、日本でも2010年から使用できるようになっています。


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